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マーターズ

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(原題:Martyrs 2007年/フランス・カナダ合作 100分)
監督/パスカル・ロジェ 撮影/ステファヌ・マルタン、ナタリー・モリアブコ=ビゾツキー 編集/セバスチャン・プランジェール 美術/ジャン=アンドレ・カリエール
出演/モルジャーナ・アラウィ、ミレーヌ・ジャンパノイ、カトリーヌ・べジャン、イザベル・ジャス、エミリー・ミスクジャン、マイク・チャット

概要とあらすじ
1970年初頭のフランス、行方不明となっていた少女リュシーが路上を彷徨っているところを発見される。何者かに廃墟に監禁され、長期に渡って拷問と虐待を受けていたリュシーは事件の詳細を語らないため、捜査は難航を極めていた。養護施設に収容されたリュシーは、少女アンナの献身的な介護で平穏な生活を取り戻してゆくが……。監督はフランス・ホラー界の新鋭パスカル・ロジェ。(映画.comより)



殉教っていわれてもな。

『トールマン』パスカル・ロジェ監督による
ホラー・サスペンスでございます。
バンっとドアを開けて傷だらけの少女が逃げ出すところから
いきなり始まりますが、
こういう編集が非常に好きなんです。僕は。
映画はこういう編集の仕方ひとつで
観客を突然時間的にも空間的にも違う場所へと
連れて行ってくれるのですが
この作品ではそういった編集が多く見られます。
モンタージュのクレショフ効果を持ち出すまでもなく
カットの関係性から被写体の意味まで変えてしまう編集は
もしかしたら演出より重要なものかも知れません。

冒頭のシーンで
監禁から逃げ出したリュシー(ミレーヌ・ジャンパノイ)
15年後にある一家のもとへ復讐に現れるシーンも同様に唐突で
それまでたわいのない言い争いをしながら
日曜日の朝食を摂っていた家族に対して
特別な感情を抱くこともなく視線を注いでいた観客は
リュシーの登場によって一気に混乱させられるのです。
リュシーの襲撃の目的が15年前の復讐であることは
すぐに理解できるものの、なにしろこの時点では
この家族(というか両親)が監禁事件の犯人であるという
確証がないのです。
観客は、殺された家族に対して
「かわいそうに」なのか「ざまあみろ」なのか判断を保留しながら
物語が進むのを待つしかありません。
こういうの……いいね! わはは!

リュシーは、『リング』の貞子と『呪怨』のあいつ
足して2で割って、めっちゃ動きを早くしたような幻につきまとわれ
自傷行為をくり返してしまいますが
これも最初は実際に誰かいるのか、それとも幻なのか
はっきりとしないように演出されています。

リュシーが唯一心を通わすことの出来る幼少の頃からの友人、
アンナ(モルジャーナ・アラウィ)
リュシーの復讐の手助けをするようになっていて
リュシーに対してレズビアン的な感情も持っているようです。
リュシーはライフルであっという間に復讐を果たしたのですから
とっとと現場を立ち去ればいいと思うのですが
幻につきまとわれているせいなのかなんなのか
全く逃げる様子もありません。
アンナも雨の中、家族の死体を穴に埋めようとするのですが
家の中は血だらけなのに、死体だけ隠してどうなるものかと
思ってしまいます。早く帰ろうよ!
ま、ふたりがさっさと帰っちゃうと
この後の話が展開できなくなるので
このくらいのご都合主義は大目に見よう。

結局、幻を振り切ることの出来なかったリュシーは
自分の喉を切り裂いて死んでしまいます。
(幻の正体はリュシーが監禁から逃げ出したときに
 見捨ててしまった少女でした)
物語の途中で、主人公であると思われていた人物が死んでしまい
一旦クライマックスを迎える構成はヒッチコック的ですね。
当然、後半は別の主人公の別の物語が始まるのです。

結果的にリュシーの確信は証明され
皆殺しにされた家族は「ざまあみろ」側だったわけですが
さらに巨悪が登場。
こんどはアンナが監禁の餌食になるのです。
ここからは延々とアンナが拷問される様子を描いていきます。

『トールマン』もそうでしたが
パスカル・ロジェ監督は「実は裏には巨大な組織が!」ていうのが
好きなんでしょうな。
反体制的な思考の持ち主なのかわかりませんが
どうしてもなんかしらの根拠を欲しがる人なのかも知れません。
ひとりの人間の欲望や愚かさのようなものに帰結するのではなく
さらにメタな存在に根拠を見出すとなると
行き着く先は「かみさま」しかないので
個人的には、若干危なっかしい感じがします。
なんでもありになっちゃいますからね。

「マーターズ(Martyrs)」とは
ギリシャ語で「殉教」であり「証人」という意味だそうです。
裏の組織は、監禁した少女(少女のほうが都合がいいらしい)を
死ぬ寸前まで拷問して、それでなにやら悟りめいたものに到達すると
「死後の世界」をみることができるらしく
それを聞き出すことが目的のようです。
「死後の世界」がどんなものか聞いたところで
だからなんなんだと言いたくなりますが
アンナの口から「死後の世界」の光景を聞いた
マドモアゼルと呼ばれる裏の組織のボスは自殺します。
このマドモアゼルの自殺は、観客へのサービスというか
組織の連中がなにも制裁を受けないのは
観客が許さないだろうと考えての中途半端な配慮のように思えます。
あらゆる宗教に通じるようなお題目を持ち出しておいて
結局よくわかりませんでしたで終わってしまうのは
監禁ホラーのメタ根拠として大風呂敷を広げすぎた感じは否めません。

理屈っぽくしたいのであれば
最後まで理屈っぽくあってほしいものです。





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