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美術館を手玉にとった男

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(原題:Art and Craft 2014年/アメリカ 89分)
監督/サム・カルマン、ジェニファー・グラウスマン 共同監督/マーク・ベッカー 撮影/サム・カルマン 編集/マーク・ベッカー 音楽/ステファン・ウルリッヒ
出演/マーク・ランディス、マシュー・レイニンガー、アーロン・コーワン、ジョン・ギャッパー

概要とあらすじ
全米46カ所の美術館を30年にわたって騙し続けた贋作作家マーク・ランディスを描いたドキュメンタリー。2011年、アメリカ各地の美術館に展示されていた数々の名作が、ある男が造ったニセモノだったことが判明した。このセンセーショナルな事件に全米のメディアは騒然となりFBIも捜査に乗り出すが、その男マーク・ランディスがすべての作品を無償で寄贈していたため、罪に問われることはなかった。美術界に造詣の深いジェニファー・グラウスマン監督とサム・カルマン監督が謎の男ランディスの素顔に迫り、ランディス本人や事件に関わった人々の姿を通して社会の歪みを浮かび上がらせていく。(映画.comより



芸術と図画工作

権威を欺くのはいつだって痛快です。
もしくは、既存の価値観を揺るがしてみせるのが
芸術的行為そのものだともいえるでしょう。
では、30年にわたり、手製の贋作を美術館に寄贈し続けた
奇妙な男を追ったドキュメンタリー、
『美術館を手玉にとった男』マーク・ランディスの行動は
芸術なのでしょうか。

ランディスが名前や身分を偽り、
ときには牧師の扮装までして美術館関係者に近づくのは
あきらかに詐欺といえるだろうし、
贋作を「○○の作品だ」として手渡すのも
相手を偽る行為に違いありません。
しかし、彼の「慈善事業」は作品を無償で寄贈するだけで
いかなる報酬も受け取っていない
から
話がややこしくなるのです。

ランディスに言われるがままに
贋作を本物だと信じ込んで展示してしまった美術館には
具体的な損失がなく、
贋作を見抜けない脆弱な審美眼を
白日の下にさらされてしまったことによる
権威の失墜こそが彼らを憤らせるのです。

作品そのものの魅力ではなく、
希少性や独創性、革新性などによって計る「芸術の価値」を
揺るがさんとする行為は
神出鬼没なバンクシーに共通するところがあるようにも思え、
美術館を騙すランディスの「パフォーマンス」こそ
芸術的行為なのではないか……
とさえ思えてくるのですが、
ランディス本人にはそんな気がまったくないからして、
なんともつかみ所がないのです。

統合失調症のランディスは、
非常に穏やか……を通り越して
いつもどこか朦朧としているような印象です。
すでに他界した父母への愛情を隠さない彼は
幼いときから模写が好きだったようす。
ピカソからスヌーピーまで幅広く模写する彼は
当然ながらものすごく絵が上手く、
作品を古く見せかける贋作テクニックは
コーヒーで汚すなど、意外にもかなり雑です。

やがてランディスの正体が判明すると
彼の不思議な魅力に取り憑かれた男たちの働きで
ランディスの贋作を集めた個展を開くことに。
この個展にひとが集まるのも面白いのですが
緊張気味で会場に姿を現したランディスをみた来場者たちが
どことなく遠巻きに接しているのが面白い。
ランディスの描画テクニックを評価している客たちは
オリジナル作品を作るように薦めるものの、
「ぼくのは芸術じゃなくて、図画工作だよ」
答えるランディス。

ランディスに芸術家を夢見る気持ちが
まったくないわけではなさそうですが、
美術館が真贋を見まがうほど素晴らしい作品なんだったら
それが芸術だろうが図画工作だろうが、
オリジナルだろうが模写だろうが
どうでもいいじゃないかと思うのは僕だけでしょうか。

芸術そのものの価値よりも
人々が芸術に求める価値とはなんなのかを問いかける作品です。
まあ、ランディス本人に
そんなつもりはないだろうけど。





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