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アシュラ

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(原題:Asura: The City of Madness 2016年/韓国 133分)
監督・脚本/キム・ソンス 製作/ハン・ジェドク 撮影/イ・モゲ 美術/チャン・グニョン 武術監督/ホ・ミョンヘン
出演/ファン・ジョン、チョン・ウソン、チュ・ジフン、クァク・ドウォン、チョン・マンシク、キム・ヘゴン、キム・ジョンス、ユン・ジヘ、ユン・ジェムン、キム・ウォネ

概要とあらすじ
「MUSA 武士」のキム・ソンス監督が、「私の頭の中の消しゴム」のチョン・ウソン主演で、架空の都市「アンナム市」を舞台に描くクライムサスペンス。刑事のハン・ドギョンは、私欲のためにあらゆる犯罪に手を染める市長のパク・ソンベによる悪事の後始末を金で請け負っていた。末期がんの妻の治療費を言い訳に、金になるならどんな悪事にも手を染めるドギョンの弱みを握る検事と検察捜査官は、ドギョンを脅迫。市長の犯罪容疑追及のためにドギョンを利用する。ドギョンを中心に、検察と市長、それぞれの思惑が交差し、生き残りをかけた戦いへと展開する。ウソンが主人公の悪徳刑事ドギョンを、市長のソンベ役を「ベテラン」のファン・ジョンミンが演じる。(映画.comより



正義も倫理もない世界、なう

正直に告白すると、
次から次へと登場する韓国ノワール映画の
区別がつかなくなってきておりますが、
(キャストがかぶってることも多いしさ)
またしても出ました、『アシュラ』
とはいえ、本作の独自なところは
悪人だらけなのにマフィアやギャングが登場しないところ。
(ごろつきは登場するが)
政治家、刑事、検察と
皆、表向きは正しいことをする(はずの)人たちばかりなのです。

冷凍庫の中で全裸で囲碁を打つハンサムこと、
チョン・ウソンが演じるドギョン刑事
「アンナム市」を牛耳るソンべ市長(ファン・ジョンミン)
金で雇われている忠犬。
今日も今日とて、ソンべ市長にとって不利になる証人を脅し、
出廷を取り下げさせています。
いつものように首尾よく務めを果たしたかに思われると、
ドギョンを妬む先輩刑事が俺にも一枚噛ませろ、と。
ちょっと待って下さいよぉ、センパ〜イっつてると、
後輩刑事のソンモ(チュ・ジフン)
兄貴ぃ、どうしたんすかぁ、なんつってやってきます。
悪事をばらしたくないドギョンは
苛立ちつつ、オロオロする……という冒頭のシーンが
本作のすべてを物語っている
といってもいいでしょう。

さらに、検事のキム係長(クァク・ドウォン)にも
弱みを握られて利用されるようになり、
ドギョンの翻弄されっぷりはどんどんドツボにはまっていきます。
もともと脇が甘いのか、
浮気はバレるわ、先輩刑事殺しはバレるわ、
弱みを握られっぱなしなのです。
(証拠がいつもスマホ映像というのが現代的か。監視社会じゃの!)
パシリに使っていた棒切れ(キム・ウォネ)にも裏切られ、
自分の身代わりにソンべ市長のもとへ送り込んだ後輩ソンモにも
ナメられ始めるドギョン。
上からは抑えつけられ、下からは突き上げられる
中間管理職の悲哀がたっぷりなのです。

そして、とにかくドギョンはよく殴られます。
本作の暴力描写には痛さを強調したようなゴアはありませんが、
逆に、封筒で顔をペチペチ叩くいやらしさや
マジ喧嘩かと思わせるような格闘のリアリティがあります。
注目のカーチェイスシーンは迫力満点だし、
疾走する車の外部から車内へと侵入するトリッキーなカメラワークも
あざとさは感じません。
検察によって頭にタオルを被せられて殴られる拷問シーン
恐怖感はたっぷりでしたが、
いまさら、ドギョンは殴られて音を上げる男ではないし、
あの殴り方は完全に顔の骨折れてるよね、
つーか、死んじゃうよねって感じだったのですが、
ま、いいでしょう。

ごろつきに対しては、
激しいカーチェイスを演じてでも追い詰めるのに、
ソンべ市長を前にすると、
コップをかみ砕いて挑発するのが精一杯なドギョン。
このままでは弄ばれた挙げ句に殺されるだけだと開き直ったドギョンは
起死回生を狙って、
ソンべ市長とキム係長を対峙させるのでした。
とはいえ、ドギョンは正義に目覚めたわけではなく、
追い詰められて嫌気がさしただけです。
本作の登場人物たちは、最後の最後まで
正義や倫理や道徳に基づいて行動しません。

かろうじて後輩ソンモとの間に情が入り込みますが、
それも二人の間にだけ成立する師弟愛です。
男だらけのノワール映画には
必ずやブロマンスの要素が存在します。

覚醒剤を資金源にしようとしたり、
閉じ込めた検察を皆殺しにしようと考えるソンべ市長は
大雑把に裏の顔をさらけ出してきます。
そして、クライマックスの修羅場ののち、
ドギョンはソンべ市長の額を打ち抜いて殺してしまいます。
状況と心情を考えれば、このクソ野郎は殺すほかないのですが、
これではソンべ市長の悪事はすべて闇の中に葬られてしまうので、
ドギョンが正義を示したことにはならないし、
ソンべ市長を殺しても
「アンナム市」を巡る覇権は別の誰かに取って代わられるだけでしょう。
普遍的な正義や倫理に一切言及しない本作は
むしろ潔いといえるのかもしれません。

いつも可愛いファン・ジョンミンが
市長を演じるには若すぎないかと思いましたが、
人当たりのいい悪党には、さすがの適役でした。
つい最近、だらしないボンクラ巡査を演じていたクァク・ドウォンの
蛇のような冷徹さと終盤の頼りなさが見事でした。





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