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ある戦慄

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(原題:The Incident 1967年/アメリカ 103分)
監督/ラリー・ピアース 脚本/ニコラス・E・ベア 撮影/ジェラルド・ハーシュフェルド
出演/トニー・ムサンテ、マーティン・シーン、ボー・ブリッジス、セルマ・リッター、ブロック・ピータース

概要とあらすじ
ニコラス・E・ベアの脚本を「わかれ道(1963)」のラリー・ピアースが監督した異色サスペンス。ニューヨーク・ロケを行い、撮影はジェラルド・ハーシュフェルド、音楽はテリー・ナイトが担当した。出演は舞台・TVで活躍している新人トニー・ムサンテ、舞台出身でTV『ルート66』のマーティン・シーン、同じく舞台出身でTV『コンバット』のボー・ブリッジス、同じくTVのロバート・バナード、エド・マクマホン、舞台出身でTV『ルート66』のダイアナ・ヴァン・ダー・プリス、新人ドナ・ミルズとTVのビクター・アーノルド、「ローマで起った奇妙な出来事」のジャック・ギルフォードと、「足ながおじさん」のセルマ・リッター、TV『コンバット』『ローハイド』のマイク・ケリンと「金魚鉢の中の恋」のジャン・スターリング、「結婚泥棒」のゲイリー・メリルと新人ロバート・フィールド、「野良犬の罠」のブロック・ピーターズ、舞台・TVで活躍しているルビー・ディーほか。製作は新人モンロー・サクソンとエドワード・メドー。(映画.comより)



あなたなら、どうする?

今では、ニューヨークの地下鉄
随分と安心して乗れるようになったそうですが
かつては乗ったら最後、生きて帰れないくらいの
悪いイメージがありましたよね。
(ま、行ったことないけど。えへへ)
最近、東京の地下鉄を24時間運行しようなんて話も出ていますが
深夜の東京の地下鉄がホームレスとチンピラの
巣窟にならないとも限りません。
「眠らない街」なんて古くさいカッコのつけかたは止めて
男はとっとと家に帰って嫁を抱け!と言いたいのです。
少子化が問題なんだし、そんなに働いてどうすんの?

ま、そんなことより、
『ある戦慄』はそんなニューヨークの地下鉄が
危険な場所だった時代の物語です。
見るからに気が狂ったチンピラ二人組、
ジョー(トニー・ムサンテ)アーティ(マーティン・シーン)
酒に酔っているというよりは、クスリでトリップしているかのように
終始大笑いしながら、手当たり次第にいちゃもんをつけることを
楽しんでいます。
このふたりに動機などありません。
ただふざけて人をからかい、怯える相手を見て楽しんでいるのです。
特にアーティは、ずっと大爆笑で
「なにがそんなにオモロイの?」と聞きたくなるのですが
つい誘われてこっちまで笑いそうになるほど笑いっぱなしです。
多用される顔のクローズアップが狂気を煽ります。

夜は長いぜ! とばかりに、
ふたりは地下鉄で遊び場を移動しようと考えるのですが
やがて惨状となる地下鉄の車両には
ふたりと無関係な人々がそれぞれの事情を抱えて乗り込んできます。

眠る娘を抱き、タクシー代をケチって地下鉄で帰ることにした夫婦。
お調子者の女ったらしとバージンの彼女。
息子の親不孝に怒る老夫婦。
弁護士を目指す軍人と片腕にギプスをしている軍人の友人ふたり。
パーティー帰りの高校教師とその妻。
元アル中の男と彼を追う同性愛者。
白人を過剰に憎む黒人とその妻。

計14人が、ドアの故障によって隣の車両に移動できない「密室」である
ひとつの車両に集まってくるのです。
彼らはそれぞれに不満を抱えながら家路につくのですが
そこへ、あのチンピラふたりが乗り込んでくるのです。

ここからチンピラふたりは
目に付いた人間から順番にからんでいくのですが
誰かが餌食になっている間もほかの乗客たちは
とばっちりを受けないように誰も助けようとはしないのです。
確かに「ナイフを持っている」という恐怖はあるものの
ナイフを振り回しているわけではないので
乗客の人数からいっても、なんとかなりそうに思えるのですが
あまりにも無抵抗。
そんな乗客の態度を見越してか、
ジョーはナイフではなく、言葉巧みに相手の弱点をいたぶるのです。
(アーティはあいかわらず笑ってるけど。はは)
とくに乗客の中でも、車両に乗り込むまでに描かれるエピソードで
勇ましい口ぶりだった者ほど
チンピラたちの暴力になすすべなく押し黙り、
かえってふたりに取り入ろうとするのです。

この様子から気づかされるのは
この作品のテーマが「とんでもないチンピラの暴力」ではなく
「他人の窮状を見て見ぬふりをする乗客」
のほうにあるということです。
チンピラの行為は明らかに暴力ですが
それを放置する乗客たちの行為も「なにもしないという暴力」なのです。

不良気取りの女ったらしは彼女がからまれても怯えるだけ。
将来は弁護士になって稼ぐという軍人はうつむいたまま。
白人嫌いの黒人はむしろいじめられる白人を見て楽しんでる様子。
そんな武闘派気取りの黒人も妻を捕らえられて、何も出来ずに
泣き崩れるだけなのです。

やっと意を決してチンピラに立ち向かうのが
左手にギプスをした軍人です。
正義感の強い彼が田舎育ちという設定なのは
都市生活者の無関心ぶりを浮き彫りにしているのかも知れませんが
ケガをして片手の自由が利かない男だと言うことが
ほかの乗客たちのふがいなさを際だたせているように思います。
彼はナイフで腹をさされて返り討ちに合うものの
ギプスをした腕でジョーを殴り倒し、
アーティもあっさりと倒してしまいます。
彼がふたりと揉み合う間も助けようとするものは誰もおらず
弁護士志望の友人にいたっては、ナイフで刺されたあとになって
ようやく駆け寄ってくる始末。

列車が駅につき、飛び込んできた警官が
まっさきに黒人を捕まえようとするのは時代でしょうか。

保身のための傲慢さと臆病さを描いたこの作品は
乗客たちの態度に憤りを憶えるのですが
果たして彼らを糾弾する資格があるのかどうか
僕には自信がありません。
正直に言って、関わらないで済むものならそうしたいと思いますよ。
こういう場面で暴力に敢然と立ち向かっていく人に対して
「ヒーロー気取り」などと揶揄する態度は
もっとも醜く卑しいものだと思いますが
実際にこういう場面に遭遇したときに
自分がどういう行動を取れるのかは
その時になってみないとわかりません。
ただの傍観者にだけはなりたくないと願いますが……

ところで、この惨状となった車両には
もうひとり乗客がいました。
最初っから座席に横たわって眠りこけている浮浪者です。
最初にチンピラの餌食になりかけるのはこの浮浪者ですが
その後繰り広げられる暴力の最中もこの浮浪者だけは眠ったまんま。
すべてが終わった後、座席から転げ落ちた浮浪者が
通路の真ん中でまだ眠っているという皮肉に満ちたシーンで
この映画は終わります。

……そうか! わかった!
こういう状況に遭遇したときに対応する最も有効な手段、
それは、寝たふり!
これで、何があっても知らなかったで済むよ! ってバカ!





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