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ラ・ラ・ランド

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(原題:La La Land 2016年/アメリカ 128分)
監督・脚本/デイミアン・チャゼル 製作/フレッド・バーガー、ジョーダン・ホロウィッツ、ゲイリー・ギルバート、マーク・プラット 撮影/リヌス・サンドグレン 美術/デビッド・ワスコ 衣装/メアリー・ゾフレス 編集/トム・クロス 音楽/ジャスティン・ハーウィッツ 音楽監修/スティーブン・ギシュツキ 振付/マンディ・ムーア
出演/ライアン・ゴズリング、エマ・ストーン、キャリー・ヘルナンデス、ジェシカ・ローゼンバーグ、ソノヤ・ミズノ、ローズマリー・デウィット、J・K・シモンズ、フィン・ウィットロック、ジョシュ・ペンス、ジョン・レジェンド

概要とあらすじ
「セッション」で一躍注目を集めたデイミアン・チャゼル監督が、ライアン・ゴズリング&エマ・ストーン主演で描いたミュージカル映画。売れない女優とジャズピアニストの恋を、往年の名作ミュージカル映画を彷彿させるゴージャスでロマンチックな歌とダンスで描く。オーディションに落ちて意気消沈していた女優志望のミアは、ピアノの音色に誘われて入ったジャズバーで、ピアニストのセバスチャンと最悪な出会いをする。そして後日、ミアは、あるパーティ会場のプールサイドで不機嫌そうに80年代ポップスを演奏するセバスチャンと再会。初めての会話でぶつかりあう2人だったが、互いの才能と夢に惹かれ合ううちに恋に落ちていく。「セッション」でアカデミー助演男優賞を受賞したJ・K・シモンズも出演。第73回ベネチア国際映画祭でエマ・ストーンが最優秀女優賞、第74回ゴールデングローブ賞では作品賞(ミュージカル/コメディ部門)ほか同賞の映画部門で史上最多の7部門を制した。第89回アカデミー賞では史上最多タイとなる14ノミネートを受け、チェゼル監督が史上最年少で監督賞を受賞したほか、エマ・ストーンの主演女優賞など計6部門でオスカー像を獲得した。(映画.comより



一貫したひとりよがり

絶賛と酷評が入り乱れる『ラ・ラ・ランド』
まあ、多くの賞を受賞しているのですから
それなりに完成度が高いのは間違いありません。
たぶん。

ジャズ・ミュージシャンを志していた過去を持つ
デイミアン・チャゼル監督
出世作の『セッション』
脚本を担当した『グランドピアノ 狙われた黒鍵』
音楽に対する近親憎悪のような感情を
あからさまにしてきました。
『セッション』では、音楽をまるで軍隊の訓練のように描き、
『グランドピアノ〜』の主人公は、
一音でも間違えると殺されてしまうピアニストです。
彼が持つ音楽に対する挫折感は並々ならぬものがあると思われ、
彼にとっての音楽は楽しむものではなく、
常に恐怖と共にあるかのようでした。
そんなデイミアン・チャゼル監督が撮ったミュージカル映画とは
いかなるものなのか。

人間、気分がいいときは鼻歌のひとつも歌うもので
それを誇張し具現化したミュージカルという表現形態に
まったく違和感を感じることはありません。
それはさておき、
「シネマスコープ」という文字とともに
スクリーンがぐーんとワイドに広がって始まるオープニングは
明らかに本作=監督の宣言であって、
高速道路を占拠したカラフルな長回しシーンは
圧倒的な多幸感にあふれているはず、と思っておりましたが、
そうでもない……。おかしいな。
渋滞で立ち往生した車のカーラジオから流れてくる多種多様な音楽が
すべての音楽に対する敬愛を示しているのかと思ったのに、
そうでもない……。おかしいぞ。

ともかく、冴えないジャズ・ピアニストの
セバスチャン(ライアン・ゴズリング)
女優志望のミア(エマ・ストーン)
ボーイ・ミーツ・ガールするのです。
この二人のラブストーリーに、とりたてて新鮮さはありません。
幾多の過去の名作にオマージュを捧げている本作は
逆に言うと、あらゆるクリシェにまみれています。
まあ、定石を反芻する快感を否定するつもりはありませんが、
本作の物語に意外性を求めるのは野暮というもの。
しかし、セバスチャンとミアがデートで訪れる
ハリウッドのご当地スポットを羅列されると
(行ったことないけどさ)
吉祥寺なら、いせやで焼き鳥を買って井の頭公園に行き、
スワン・ボートをこぎこぎするみたいなことなので、
はいはいわかったわかったという白けた気分になります。
ま、幸せそうにいちゃつく恋人たちに対する嫉妬が
白けた気分の9割を占めていることは自覚しています。

そんなことはどうでもいいのです。
僕がどうにも居心地の悪さを感じたのは、
おそらく監督本人を投影していると思われる
セバスチャンのジャズ・オタクっぷり。
セバスチャンが明らかな懐古趣味によって
かつては革新的だったはずの数十年前のジャズを
スタンダードとして神格化するのは
まあ、彼の勝手だから仕方ありません。
世界中どこでも、オタクは面倒くさいのです。

しかし、自らの正当性を主張するために
ポップスや現代的R&Bなど他ジャンルの音楽を引き合いに出して
コケにするのはいただけません。

ついつい自分も同じことをやってしまうので自戒の念を込めて言いますが、
自分がいいと思うものは、それをいいと言い続ければいいのであって、
それに引き替え○○ときたら、みたいな物言いは
独善的だというほかありません。

宮藤官九郎氏が自作の中で、
自らのパンク魂を正当化するためか、
わざわざJ-POPを引き合いに出して貶めることがありますが、
(確かに「さくら〜さくら」と歌う馬鹿には辟易するけれども)
居酒屋で愚痴るぶんには構わないものの、
作品の中でやられると度量の狭さが際立ってしまいます。
このあたりの、音楽に対する呪詛の吐き方に
『セッション』や『グランドピアノ〜』と通ずる
デイミアン・チャゼル監督の卑屈なルサンチマン
感じずにはいられません。
また、音楽に留まらず、
過去の映画に対する愛情を注いでいるにもかかわらず、
映画を上映中のスクリーンの前にミアが立ちはだかっても
観客の誰一人として文句を言わない
のは、どうしたことか。
あのシーンはそのまんまマナーCMに使うべきでしょう。

ハリウッドを一望できる「マウント・ハリウッド・ドライブ」で、
ふたりが踊る前に、ミアがタップシューズに履き替えるというのは
ちょっとメタで面白かったのですが、
総じてダンスシーンが思ったほどグッとこない……。
ライトハウス・カフェでセバスチャンの演奏に合わせて踊る
ミアが超可愛かったのに、カメラをがんがん切り返すもんだから
いまいち堪能できなかったのも難点です。

それでも僕がグッときたのは、
叔母の思い出と共に「夢追い人」についてミアが歌う
最後のオーディション。
他人に狂っていると言われようとも夢を追い続ける人々、
たとえ夢半ばで挫折しようとも
夢を追いかけたことそのものがあなたの美しい人生なのだ、
とでもいうような表現者賛歌に胸熱くなりました。

それぞれがそれぞれの道で成功を収めた
セバスチャンとミアのふたりが再会し、
もしかしたらあったかもしれない別の人生をなぞります。
まあ、寂しい夜に一人酒をしているときなんかに
よくやるアレです。
でも、うまくいかないこともあっての今なので、
ふたりが思い描いていた未来が
最善のものである保証はどこにもありません。
このラストシーンが、
アカデミー賞における作品賞受賞のぬか喜びまで含めての
もしもこうだったらよかったね妄想だとすると
すごく予言的ですげえなぁおい!とは思いますが、
なんにしろ、ミアの旦那さんには失礼極まりないので、
デイミアン・チャゼル監督のひとりよがりは
最後まで一貫しているのでした。
(でもそれが称賛されてるのよね)





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コメント

驚くほど同じ感想

昨日鑑賞して全く同じ感想を持ちました。そして唯一ぐっと来た場面が同じく叔母について歌うシーンでした。ストーリー的には全く目新しさは感じませんでしたから。
一緒に行った友人の感動っぷりをみて、感性が年とともにすさんで鈍ってしまったのか?と若干自分を責めましたが、のぼうずさんの感想読んで、「あっ、間違ってなかったんだ」と思えて少し安心したのでありました。

2017/03/04 (土) 22:59:55 | URL | himiko #y/3UUpEo [ 編集 ]

Re: 驚くほど同じ感想

> himikoさん
コメントありがとうございます。共感していただけてうれしいです。

2017/03/05 (日) 08:56:12 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

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