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きっと、うまくいく

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(原題:3 Idiots 2009年/インド 170分)
監督・脚本/ラージクマール・ヒラーニ
出演/アーミル・カーン、カリーナ・カプール、マドハヴァン、シャルマン・ジョーシー

概要とあらすじ
インドで興行収入歴代ナンバーワンを記録する大ヒットとなったコメディドラマ。インド屈指のエリート理系大学ICEを舞台に、型破りな自由人のランチョー、機械よりも動物が大好きなファラン、なんでも神頼みの苦学生ラジューの3人が引き起こす騒動を描きながら、行方不明になったランチョーを探すミステリー仕立ての10年後の物語が同時進行で描かれる。(映画.comより)



やっぱ、うまくいった!!

「ザッツ・エンターテ “インド” メント!」という
まったく心に響いてこないキャッチコピーは
聞かなかったことにするとして、
最新インド映画4本を紹介する
「ボリウッド 4」と銘打たれた企画のうちの一本が
『きっと、うまくいく』です。

インド映画について、詳しいわけではありませんが
国内のスターを起用して国内向けの作品を大量に作っていた
従来のボリウッド(ムンバイを本拠地に北インドで作られる映画)が
『きっと、うまくいく』の大成功をきっかけに
海外も視野に入れた様々なジャンルの作品を
作るようになったそうです。

サスペンス風に始まる冒頭のシーンから
ファルハーン(マドハヴァン)
ラージュー(シャルマン・ジョーシー)のふたりが
呼び出された場所にたどり着くまでの間、
細かいギャグが詰め込まれているのですが
ハッキリ言って、意外性があるわけではない
ベタなギャグの連続にもかかわらず
凝ったカメラワークと小気味いい編集で見せきってしまい
この作品は、面白いに違いない! と思わせるに十分なのです。
その後も、なんとなく撮ったようなショットは一度もなく
アイデアに富んだカメラワークや演出は
ラストシーンまで続き、170分という長尺を
一気に駆け抜けて、観客がダレることなどありません。
さすがは「ザッツ・エンターテ “インド” メント」。

冒頭のシーンで10年ぶりに集まったファルハーンとラージュー、
そして嫌味な男「消音銃(サイレンサー)」ことチャトゥルの3人は
工科大学卒業を機にゆくえがわからなくなっていた親友、
ランチョー(アーミル・カーン)
チャトゥルの情報を頼りに探しに出かけます。
それと並行して、10年前の学生時代の物語が回想されるのです。
これは、まさに『サニー 永遠の仲間たち』と同じ構造です。
「インド式野郎版サニー」なのです。

最初にランチョーが登場したときは
ちょっとナイーブそうな雰囲気でしたが
すぐにお調子者の顔を見せます。
ランチョーは、機械が好きで工科大学に入ったけれど
競争を強いる学校の方針に逆らってみたり
自分の好きなことをやれと、友だちを諭してみたり
ちょっと達観しすぎじゃないかと思えるのですが
後半で明かされる彼の秘密を知ると、それなりに納得のいくものです。
「3 Idiots=3バカトリオ」
それぞれの家庭の月収が比較されるシーンでは、
ランチョーの家庭がダントツで裕福なのがわかり、
なぁんだよ、結局、家が金持ちだから
あんな余裕こいたことを言えるんじゃねぇかよ、と
思いかけたのですが、それもちゃんと後で裏切ってくれます。
疑ってごめんよ、ランチョー。
でも、主席で卒業するほどテストの成績までいいなんて
ちょっとかっこよすぎない?

そんなランチョーに扮するアーミル・カーンは
「ミスター・パーフェクト」と呼ばれるほどの大スターだそうで
確かに男前ではありますが、
ちょろっと舌を出す癖と、ふざけたときに白目をむくの
下品で無性にいらつくのです。わはは。
といいながら、僕はあのいらつく白目がツボに入ってしまい
演出と関係ないところで笑ってました。
そしてそして、なんとアーミル・カーンは1965年生まれ!
44歳で大学生を演じるとは……負けるな妻夫木!
(3バカの残りのふたりも若くはないよねぇ)

ボリウッドお決まりのミュージカル・シーン
もちろんご用意してございますっといった感じで3回登場。
変なヘリコプターを作っているうちに
学長から留年を言い渡された学生のひとり、ロボ(←人名)が
傷心のうちにギターの弾き語りを見せるシーンは
曲とコードの押さえ方がまったくシンクロしておらず、
シンクロさせる気など、さらさらないであろうズレっぷりに
むしろ清々しさを感じて笑ってしまいましたが
学校中を巻き込んだ、浮かれきった大ミュージカル・シーンのなか
カメラを搭載したロボのヘリコプターが上昇して
ロボの部屋の窓まで到達すると
首を吊っているロボが映されるという一連の流れは
見事としかいうほかなく、監督の思惑通りにショックを受けました。

現在(10年後)では、ついにランチョーの実家を発見。
父親の葬儀が行なわれている屋敷に
ファルハーンとラージューのふたりが訪れると
そこにいたランチョーを名乗る男はまったくの別人。
いやあ、素直に驚きました。
学生時代のバカ騒ぎシーンに浮かれていた僕は、
現在(10年後)のランチョー探しの旅にも
しっかりミステリーが組み込まれていることに感激いたしました。

やがて、ランチョーが教師をしているという小学校へ。
サイレンサー(すかしっ屁の意味)がず〜っと嫌味なやつだったのは
すべてがこのラストシーンへのネタふりなのです。
ついに、登場する現在(10年後)のランチョー。
まったく老けてませんね!(あたりまえだけど)
マヌケと結婚寸前だった最愛のピア(カリーナ・カプール)
再会するランチョーが、いい年こいてこのやろう、
キスをすると鼻がぶつかると未だに信じているとは思えませんが
まあいい! そんなことはどうでもいい!
なんだ、この景色は! 美しすぐる!!!

この場所に到るまでも、車が走り抜けるカットの景観は素晴らしく
なんちう場所を走っているんだと思っていましたが
(岩! あの岩、あぶね! とかね)
ラストシーンのSF的美しさには圧倒されました。
当然、無知な僕がその場所を知る由もなく
まさかCGなんじゃなかろうなと思いながら調べてみると
あれは「パンゴン湖」という
アジア最大級の汽水湖(海水と淡水が入り交じっている湖)で
標高4250メートルの位置にあるんだそうな。
しかも、インドと中国の国境をまたいでいるそうでゲスな。
魚は生息していないご様子。
まさに、探し求めたランチョーがいるべき場所でしょう。

全編を通してエンターテイメントに貫かれ
本当に映画を観る楽しさを伝えてくれる作品ですが
劇中に登場する競争社会、若年層の自殺率は
インドの社会問題
となっていて深刻なものだそうです。
ただ、笑って泣いて、楽しかったでも構いませんが
インド(同じく急成長している中国や韓国でも)が抱える
社会問題が通底していることがこの作品に深みを与えています。
ファルハーンとラージューの実家の描写にしても
ギャグとして扱われてはいるものの
その生活水準には明らかな格差が存在していることを表しています。
貧しい現状から抜け出すためには
とにかくエンジニアになることが最優先されるのがインドの現実で
大学で留年することが彼らの(家族の)人生にとって
文字通り命取りになるのです。
かつての日本も同じような時期があったのですから
経済を中心に回る社会が抱える通過儀礼のようなものかもしれません。
その通過儀礼を何十年か前に済ませたであろう日本は
少しは暮らしやすい国になっているでしょうかねぇ。

細かく敷かれた伏線が律儀に回収される脚本は見事ですし、
ミリ坊主のようなサブキャラクターたちも
活き活きと個性を発揮していて
ちょっと文句のつけどころが見あたりません。僕としては。
過激な表現に頼ることなく、
こんなにハッピーで楽しめる映画はそうそうないと思います。
ぜひ。

(余談ですが、僕が行った映画館は
 平日の真っ昼間でもそれなりに混み合っていて
 お客の多くはシニア(シルバー?)の方々でした。
 シニアの方々は笑いのハードルが低く、
 わりと簡単にはっはっは!とお笑いになっていて
 それはいっこうに構わないのですが
 ラージューが学長に退学を突きつけられた後、
 自殺を図って学長室の窓から飛び降り、
 地面に叩きつけられるシーンでも
 はっはっは!という笑い声が起きていたのでした。
 ……スクリーン見てますか?
 それともなにかが起こると反射的に笑ってんのかね?
 ……しっかりしろよ!)





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コメント

なるほど!

この映画のキャッチコピーをぐぐってたどりつきました。
なるほど、いけてない加減を含め、その通りだなぁ。笑
笑いあり、涙あり、歌&踊りあり。それでも十数年前に初めて見た「ムトゥ 踊るマハラジャ」に比べると、ずっとおとなしく、垢抜けたと思います。笑

とっても大好きな映画です♪

2016/01/05 (火) 23:54:14 | URL | IHURU #- [ 編集 ]

Re: なるほど!

> IHURUさん
コメントありがとうございます。
僕も大好きな映画です。

2016/01/06 (水) 00:05:54 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

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