たかが世界の終わり

takagasekai.jpg


(原題:Juste la fin du monde 2016年/カナダ・フランス合作 99分)
監督・脚本/グザヴィエ・ドラン 製作/ナンシー・グラン、グザヴィエ・ドラン、シルバン・コルベイユ、ナタナエル・カルミッツ、エリーシャ・カルミッツ、ミヒェル・メルクト 原作/ジャン=リュック・ラガルス 撮影/アンドレ・ターピン 美術/コロンブ・ラビ 音楽/ガブリエル・ヤーレ
出演/ギャスパー・ウリエル、レア・セドゥー、マリオン・コティヤール、バンサン・カッセル、ナタリー・バイ

概要とあらすじ
「Mommy マミー」「わたしはロランス」などで高い評価を受けるカナダの若手監督グザビエ・ドランが、「エディット・ピアフ 愛の讃歌」のマリオン・コティヤール、「アデル、ブルーは熱い色」のレア・セドゥー、「ハンニバル・ライジング」のギャスパー・ウリエルらフランス映画界を代表する実力派キャスト共演で撮りあげた人間ドラマ。劇作家ジャン=リュック・ラガルスの舞台劇「まさに世界の終わり」を原作に、自分の死期が近いことを伝えるため12年ぶりに帰郷した若手作家の苦悩と家族の葛藤や愛を描き、第69回カンヌ国際映画祭でグランプリに輝いた。若手作家のルイは自分がもうすぐ死ぬことを知らせるため、長らく疎遠にしていた母や兄夫婦、妹が暮らす故郷へ帰ってくる。しかし家族と他愛のない会話を交わすうちに、告白するタイミングを失ってしまい……。(映画.comより



取り戻せない家族の時間

しかしまあ、次から次へと
新作を撮るねえ、グザヴィエくんは。
天才かよ。
そんでまた、カンヌ国際映画祭グランプリかよ。
天才かよ。

舞台劇を原作にしている『たかが世界の終わり』
がんに冒され死期が近い劇作家の
ルイ(ギャスパー・ウリエル)
12年ぶりに実家に帰るお話。
もちろんルイの目的は、家族に最後の別れを告げることです。
語弊を恐れずに言えば、
自力で動ける状態で自らの死期を知り、
家族や友人などに最後の挨拶が出来るというのは
幸せな死に方だともいえるのではないでしょうか。

ルイとの再会を心待ちにする家族たちは
みな一様に浮き足立っている様子で
とくに母親のマルティーヌ(ナタリー・バイ)
妹のシュザンヌ(レア・セドゥー)
言い争いながら、そわそわしっぱなし。
とにかくこの家族、終始言い争ってばかり。
なかでも酷いのが兄のアントワーヌ(バンサン・カッセル)
誰が何を話してもことごとくケチをつけ、
よくもこんなに次々と嫌みを思いつくもんだと感心するほど
饒舌に相手を罵り、愚弄するのです。
ルイは死期が近いことを打ち明ける機会をうかがっていますが、
話がスムーズに流れ始めたと思ったら、
アントワーヌがぶち壊す。この繰り返し。

双極性障害かとも思うアントワーヌには
劇作家として著名になり、
自由に生きているルイに対する嫉妬心
少なからずあるように思います。
クライマックスの大喧嘩では、
目に涙を浮かべながら
「悪いのは俺か!? いつも悪いのは俺なのか!?」
と、いじけた子供のように叫びます。
この状況だけを見れば、どう考えてもお前が悪いとしか
言いようがありませんが、
アントワーヌは、父親不在のこの家で
家父長としての役割を不本意ながら引き受け、
そのおかげで自分は自由になれなかった
という
積み重なった思いがあるのではないでしょうか。
ただ、終始いらついてブチ切れているアントワーヌを
物語を撹拌する便利なスイッチのように感じてしまい、
あまりにもまともな会話が成立しないため、
ほかの家族の心中を
深く窺い知ることが出来なかったのは残念。

ルイは、久々に再会する家族から
それなりに暖かく迎えられ、
穏やかに思い出話で和んだあとで自分の病気を打ち明け、
慰めてもらうことを少なからず期待していたはずで、
それはルイの無自覚な身勝手さといわざるを得ません。

常に言い争っている
アントワーヌとシュザンヌとマルティーヌは
それでも直後には談笑していたりします。
この家族にとっては、言い争うことも
コミュニケーションの手段のひとつ
なのでしょう。
それが家族というやつかもしれません。
ギャーギャーとやりあうこの3人に対して、
アントワーヌの妻カトリーヌ(マリオン・コティヤール)とルイは
言葉少なく、表情の変化だけで会話しているようにみえます。
あとから家族に加わったカトリーヌと
長年家を空けていたルイは、
この家族にとって部外者なのです。
カトリーヌとルイは疎外感を共有していたのではないでしょうか。

結局、ルイは自分の死を打ち明けることが出来ずに
二度と戻ることのない実家を去ることに。
鳩時計(カッコウ時計というべきか?)から飛び出してきた鳥が
まるでルイを追い払うかのように向かってきます。

この家族で刻まれてきた時間がルイを拒否しているかのようです。
12年という月日は決して短くなかったのでした。

母、家族、トランスジェンダーという
グザヴィエ・ドランに一貫したテーマの作品ですが
どんどん奇をてらわなくなる演出に風格さえ漂います。





にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑お気に召したらクリックしていただけますと、もんどりうって喜びます。
関連記事
スポンサーサイト

2017.02.12 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 映画

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

のほうず
映画が好きで観るのはいいが、
かたっぱしから忘れていくので
オツムのリハビリ的ブログ。
******************
当ブログの文章・画像およびイラストの無断転載を禁じます。引用される場合は、出典の表記と当ブログへのリンクを設定してください。

FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

お気に召したら
クリックお願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

スポンサードリンク

↓過去の記事はこちらから!↓

検索フォーム

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

カウンタ