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フッテージ

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(原題:Sinister 2012年/アメリカ 110分)
監督/スコット・デリクソン 脚本/スコット・デリクソン、C・ロバート・カーギル 撮影/クリス・ノアー 美術/デビッド・ブリスビン 編集/フレデリック・トラバル
出演/イーサン・ホーク、ジュリエット・ライナンス、フレッド・ダルトン・トンプソン、ジェームズ・ランソン、クレア・フォーリー、マイケル・ホール・ダダリオ、ビンセント・ドノフリオ

概要とあらすじ
イーサン・ホーク主演で、恐ろしい映像を発見したことから逃れられない死の運命に襲われる男の恐怖を描いたホラー。監督は「エミリー・ローズ」のスコット・デリクソン。「パラノーマル・アクティビティ」「インシディアス」などを手がけたプロデューサーのジェイソン・ブラムが製作を担当。ノンフィクション作家のエリソンは、未解決のままになっている一家惨殺事件を本にまとめるため、現場となった家に引越してくる。そして、家の屋根裏部屋で事件の様子を映した恐ろしい映像を発見するが、その日から不吉な現象が立て続けに発生し……。(映画.comより)



シャイニング×リング×??

いつもなら、映画の内容を無視したような邦題に
ぶーぶー言うところですが
この『フッテージ』に関しては、ナイス邦題!と言いたいのです。
原題の『sinister』は「縁起の悪い」「不吉な」などの
意味を持つ形容詞ですが
これはどう考えても『フッテージ』のほうが
ヒキがいいでしょう。ねえ?
(ま、英語での受け取られ方は、また違うんでしょうが)
「フッテージ」とは、
まだ編集されていない「素材」としての映像のこと。
この作品の鍵を握る8mmフィルムのリールのことですな。

10年前に書いた「流血のケンタッキー」という
ノンフィクションがベストセラーになったものの、
その後出版した作品は鳴かず飛ばずの作家、
エリソン(イーサン・ホーク)
家のローンの支払いにも苦しむほど困窮した状況から抜け出すために
家族とともに一軒の家に引っ越してきます。
そこで、なんとかもう一度ベストセラーを書いて
売れっ子作家へと返り咲こうとしているのですが
その手段としてエリソンが意図的に(家族には内緒で)選んだのは
一家惨殺事件の現場となった家だったのです。
引越荷物を片付けるエリソンは
屋根裏部屋で8mmのフィルムと映写機を発見し……

というのが、物語のプロローグですが
8mmフィルム? ……どっかで聞いたようなと思い当たるのが
「呪いのビデオ」ですな。
それもそのはず、この作品は
共同脚本家のC・ロバート・カーギル
『リング』を見た日の晩に見た夢をヒントにしているのです。
ビデオを8mmにすることで、不気味さも増し
この作品の軸となる秘密の
時代考証的にも齟齬がなくなります。
『リング』や『呪怨』などのJホラーはアメリカでも人気が高いそうで
たとえば、人物が構図の左右どちらかに不自然に寄っていて
奥の暗がりになんかいるんじゃないかと思わせるような
Jホラーの影響を窺える撮影の仕方が見られます。

そして、作家が作品を描くために
家族を連れて一時的に引越をするホラー……といえば……
スタンリー・キューブリックの傑作『シャイニング』でしょ!
でしょ! なーんて言いながら
僕がこのことを知ったのは公式サイトを見たからです。へへ。
気づきたかった……自力で気づきたかった……
でも、この事実を知ったときにはちょっと鳥肌が立ちました。
スコット・デリクソン監督は、
『シャイニング』を視野に入れてこの作品を作ったと明言し、
イーサン・ホークに出演のオファーをするときにも
『シャイニング』を編集した映像を渡したそうです。

この作品は、ラストシーンを除いて
すべて引越した家の中だけで物語が進む密室劇です。
そういったところも『シャイニング』に似ていますが
『シャイニング』の、あのホテルのだだっ広い空間がもたらす
異様な恐怖感はありませんでした。
それでも、70年代のホラーに見られる
じわじわと迫る恐怖感は意識されて作られているようで
昨今のホラー映画に見られる過激なゴア表現は登場しません。
それゆえ、綿密に練られた脚本の素晴らしさが際だっています。

エリソンはノンフィクション作品のために
実際に起きた事件(劇中でね)を追っているのですが
途中から少しずつオカルト的な描写が挟み込まれるようになり
連続殺人の犯人を追うミステリーなのか
霊の仕業によるオカルトなのかの判断が
最後の最後まで引き伸ばされるのは見事です。
残酷表現や凝った殺し方ばかりで驚かせて
物語の辻褄がまるで合っていないホラーも多く見られますが
この作品は、そのような見た目の過激さに引きずられることなく
じっくりと恐怖を煽っていきます。

てんかん(?)のような発作を持つ息子の存在も
結末へ向けて進む物語の中で効果的ですし、
エリソンの過去の栄光にしがみついた虚栄心や
妻のトレイシー(ジュリエット・ライナンス)との不和が
単なる「お化け屋敷」のように怖がらせるためだけの
ホラー映画とは一線を画しています。
現在のホラー映画の傾向から考えると、
むしろ時代を逆行するようなつくりになっていますが
本来の「怖さ」に立ち返って再確認しているようにも思えます。

ネタバレを気にするつもりは毛頭ないのですが
この作品に関しては、ひとつひとつの描写を
具体的に挙げていく気になれません。
この作品の見どころは、恐怖が漂う空気感ですから。
(余談ですが、「ネタバレ」を気にする人というのは
 基本的にその映画をまだ見ていないはずであって
 そのうえで映画レビューのブログを漁るというのは
 自分は損をすることなく確実に面白がれる映画だけ観ようという
 浅ましい性根の持ち主です。
 映画を紹介することを目的としたサイトは
 山ほどあるのですから
 映画を観る前にどんな内容か知りたければ
 そういうサイトを見ればいいのです。
 さらに言えば、「ネタバレ」が気になるようなら
 誰もが知っている「古典」を題材にした作品
 (落語でもなんでも)は見られないはずです。
 そのような浅ましい人をこのブログは相手にしていません。)

余談が長いな……ま、あえていえば
子どもたちが口元に人差し指を添えて
「し〜っ」とやるポーズは
もうちょっと、なんかないかな、と思いました。

そんなこんなで、間違いなくオススメ映画なのですが
映画を観ていてもまったく気づかなかった事実がありました。
エリソンが事件を捜査するなか、オカルトの専門家として
パソコンのチャット画面にだけ登場する大学教授は、なんと!
『フルメタル ジャケット』の微笑みデブ!(ヴィンセント・ドノフリオ)
わぁ〜、わかんなかったな〜! ヒゲがわさわさだしな〜
なんか、すっかり忘れていた幼なじみに再会したような気分でした。

「おまえ、もしかして微笑みデブ!?」みたいな。
「いや〜、老けたな〜。ははは、オレもか。
 え、なに? グレタ・スカッキと結婚した!? マジで?」みたいな。
「すぐ別れたって? なにやってんだよ〜、おまえ……
 で、連絡先知ってんの?」みたいな。
(続けようと思えばいつまでも続く)





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