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The NET 網に囚われた男

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(原題:The Net 2016年/韓国 112分)
監督・製作・脚本・撮影/キム・ギドク 衣装/イ・ジンスク 音楽/パク・ヨンミン
出演/リュ・スンボム、イ・ウォングン、キム・ヨンミン、チェ・グィファ、イ・ウヌ、ソン・ミンソク

概要とあらすじ
「嘆きのピエタ」の鬼才キム・ギドクが、事故で北朝鮮と韓国の国境を越えたために理不尽な運命にさらされる漁師の姿を通し、弱者が犠牲となる現代社会の闇をあぶり出した社会派ヒューマンドラマ。北朝鮮で妻子と平穏な毎日を送っていた漁師ナム・チョルは、ある日の漁の最中に網がエンジンに絡まり、韓国側へ流されてしまう。韓国警察に身柄を拘束された彼はスパイ容疑で激しい拷問を受け、韓国への亡命を強要されながらも、妻子のもとへ帰りたい一心で耐え続けるが……。「ベルリンファイル」などの実力派俳優リュ・スンボムが主人公を熱演。残忍な取調官役を「殺されたミンジュ」のキム・ヨンミン、主人公の帰りを待つ妻役を「メビウス」のイ・ウヌがそれぞれ演じた。(映画.comより



一歩も前進していない

前作(日本公開)『殺されたミンジュ』に続き、
政治性を前面に出したキム・ギドク監督
『The NET 網に囚われた男』です。
『殺されたミンジュ』(ミンジュ=民主)は
「国家が個人に、国民に与える痛み」がテーマでしたが、
本作も引き続き同じテーマを題材に、
朝鮮半島の南北分断が語られます。

いつものように漁に出た
北朝鮮の漁師ナム・チョル(リュ・スンボム)
網が絡まってエンジンが止まってしまい、
波に流されて韓国の領域内に侵入してしまいます。
「波に流されて」というところが
時勢に翻弄される一市民を象徴していると思いますが、
「もしエンジンが止まって南側に行ったらどうする?」と
国境を警備する軍人があらかじめナム・チョルに質問するのは
あまりにも余計な振り。

韓国警察に拘束されたナム・チョルはスパイ容疑をかけられ、
取り調べ官(キム・ヨンミン)によって
激しい取り調べを受けることになります。
朝鮮戦争で親族を亡くした過去を持つ取り調べ官は
「潜在的スパイ」という言葉を連呼し、
北朝鮮に対する私怨をたぎらせて、
慇懃かつ執拗にナム・チョルをスパイに仕立て上げようとしています。
すでにこの時点で、
南北どちらの政治的思想を持とうとも、
正義はつねに独りよがりであって
どちらにせよ個人の人権を蹂躙する結果しか生まず、
やってることは同じじゃないか
という
本作の主張が見て取れます。
そして残念ながら本作で語られることはこの一点に限られ
すでに提示されている主題を
延々と引き延ばしているような印象を受けました。

ナム・チョルにつきそう
ジヌ(イ・ウォングン)という若い捜査官が
あまりにも早い段階からナム・チョルに同情的で、
辞職を賭けてまでナム・チョルがスパイではないとかばうのは
不可解で、都合が良すぎる気がするし、
いくらなんでも上司に反抗しすぎで
韓国警察の統率力が心配になるほどです。
明らかに違法な取り調べを行なう取り調べ官を
上官がたしなめることはあっても
決して担当から外そうとはしないのも首をかしげてしまいます。
基本的に本作の登場人物たちには裏表がなく、
最初に受け取った印象が最後まで一貫しているので
心理的な葛藤や動揺はほとんど描かれることなく、
キム・ギドクが自前のドールハウスで
人形遊びをしているよう
に見えてしまいました。

なんだかんだあったあと、
北朝鮮に送還されることになったナム・チョルでしたが、
やっぱり取り調べを受けることに。
そのねちっこい方法も韓国警察と同じで……
ていうところで、溜息。
北も南も個人に対してやっていることは同じで
韓国警察の取り調べも北朝鮮の拉致と大差ないじゃないかということは
もう、本作の導入部ですでにわかっていることなので
改めて北朝鮮の取り調べを見せて念を押されてもなあ……
という、うんざりした気分になりました。
要するに、本作で語られる主張は
ナム・チョルが韓国に拘束されてから一歩も前進していないのです。

そして、ラスト。
南に行こうが北に戻ろうが、
翻弄され弄ばれる自分の身に嫌気がさしたナム・チョルは
射殺覚悟でひとり船を出し、殺されてしまいます。
あれほど家族を大切にしていた彼がとる行動としては、
唐突な感が否めません。

まあ、キム・ギドクということで
ある程度の説教臭さは覚悟の上でしたが、
それにしてもワン・アイデア過ぎるんじゃないの?
と、思いました。
それはともかく、
『殺されたミンジュ』と本作の間につくられた
『Stop』という福島第一原発事故を描いた作品が
日本未公開のままなので、
クソみたいな規制(自粛?)は取っ払って
早く公開してほしいものです。

余談ですが、記憶力の悪い僕は
ナム・チョルの妻を演じるイ・ウヌをみて、
絶対にどこかで観たことがある顔なんだけどなあ、
思い出せないなあと考えあぐねていたのですが、
彼女のおっぱいを見た瞬間に、
あ! 『メビウス』『さよなら歌舞伎町』のヒトだ!
と、思い出したのでした。
スマン。





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