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ゴッド・ブレス・アメリカ

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(原題:God Bless America 2011年/アメリカ 104分)
監督・脚本/ボブキャット・ゴールドスウェイト
出演/ジョエル・マーレイ、タラ・ライン・バー、マッケンジー・ブルーク・スミス、メリンダ・ペイジ・ハミルトン、リッチ・マクドナルド

概要とあらすじ
現代社会に不満を抱える中年男と女子高生が、社会にはびこる許せない人々を抹殺していく姿を、ブラックユーモアとハードなバイオレンスを交え痛快に描くカルトムービー。離婚、リストラ、不治の病と理不尽な不幸が続き自暴自棄になっていたた中年男フランクは、TVのリアリティ番組に出ていたわがままセレブのクロエに怒り爆発。クロエを拉致して処刑してしまう。その様子を偶然目撃した女子高生ロキシーは、フランクの行為を絶賛。2人はコンビを組み、マナーの悪い若者グループや過激な発言ばかり繰り返すTV司会者、狂信的な宗教指導者など、世の中の許せない奴らを次々と抹殺していく。主演はビル・マーレイの弟ジョエル・マーレイ。(映画.comより)



銃を持って映画館へ行こう!

現代社会というやつは、ますます便利になる一方で
ますます不快になっていると感じるのは、
僕だけではないはずだという希望的観測のもとに話を始めると
誰も彼もが並々ならぬストレスを抱えながら
日々の生活を送っているわけですが
自分を中心に世界が回っているかのように
自分だけが不当にストレスを感じていると考えるのは
あまりにも独善的。
ならば、信号待ちでたまたま隣り合わせた見知らぬ人も
同じように生活にストレスを感じていると考えるべきで
その他多くの人々も同様にストレスを感じているとしたら
一体、ストレスを与えているのは誰なんだ! という疑問が
おのずから湧き上がってくるのですが
これは、渋滞の中で渋滞を呪う一台の車と同じく
渋滞に「巻き込まれた」と考えている一人ひとりが集まって
渋滞を「巻き起こしている」と言えるわけで、
かくして、呪詛を投げつける相手を見失った僕たちは
「世の中」という反撃してこない仮想敵を創り出し
嬉々として「いいね」ボタンを押し合うのです。

なーんつって言いながら、
怒りと共に目覚め、諦めと共に寝落ちする僕にとって
(大丈夫かな、オレ…。)
ストレスどころか人権すら慮る必要を感じないバカが
多数実在するのが現実で
「話せばわかる」なんていうファンタジーの入る余地もなく
とにかくすぐに殺したいと思うこと日常茶飯です。
そんなときに、腕力もいらず
返り血を浴びる距離に近づく必要もない銃はもってこいなのです。

そんな「殺せたらいいのに」という密かな願望を満たしてくれるのが
『ゴッド・ブレス・アメリカ』です。
タイトルになっている
「God Bless America(アメリカに神のご加護を)」という歌は
「アメリカ合衆国第2の国歌」などともいわれるほど有名な曲です。

いろいろと冴えないフランク(ジョエル・マーレイ)
日頃からうるさい隣の部屋に押し入り、
赤ん坊を楯に命乞いをする母親を前にして
至近距離から赤ん坊を撃ち殺し、
手から赤ん坊が消えて無くなった母親が
頭から血まみれになっているという容赦ないシーンは
フランクの妄想とはいえ、なかなかに過激なものでした。

離婚にリストラ、愛する娘はプレゼントをねだるだけ。
おまけに不治の病とくれば、
フランクがキレる条件(=脚本上の口実)は整ったようなもの。
自殺を試みるも、テレビのリアリティー・ショーで
セレブのクソガキを見て、自分が死ぬのは
こいつを殺してからにしようと決意するのです。
セレブのクソガキを車に閉じ込め、ガソリンに火をつけて
車ごと炎上させようとしたときには、おぉ!と思いましたが
まぬけに失敗。結局、慌てて射殺することになるのですが
残酷で滑稽という、とてもいいシーンでした。

それを目撃したロキシー(タラ・ライン・バー)
ひと目でフランクに心酔。
中年男と女子高生の殺戮のロードムービーの始まりです。
ロキシーに扮するタラ・ライン・バーは
長編映画初出演というのが信じられないほど素晴らしいですね。
「第2のクロエ・モレッツ」なんて言い方もされているようですが
クロエたんほどロリ成分は強くありません。

見どころは、映画館のシーンです。
映画館に入ったフランクとロキシーが席に着くと
携帯でしゃべり、前の座席に足をかけて騒ぐバカガキども。
そのバカガキどもを牽制しつつ自分も平気で電話に出るおっさん。
こんなもんは当然、フランクとロキシーに
殺してもらわねばなりません。そして、殺してくれます。
残念ながら、僕はこの作品をDVDで観たのですが
映画館ではこのシーンのとき、どんな雰囲気だったのでしょうか。
さすがに携帯でしゃべっているやつに出くわしたことはありませんが
携帯をいじって周囲を光で照らしたりする迷惑なやつはいるのです。
上映前には必ずやマナーに関する注意事項がスクリーンに映されますが
それでもなお、上映中に携帯をいじるようなバカは
完全に脳みそが腐ってらっしゃるので
言葉で注意したとて通じるはずがありません。
そりゃあもう、撃ち殺すほかないのです。
できればサイレンサー付きで。
(ほかのお客様に迷惑がかかりますのでね)
全ての映画の上映前のマナー映像はこのシーンでいいと思います。

その映画館で上映されていたのは
『ソンミ村の墓』という映画で(僕は未見ですが)
ベトナム戦争中の虐殺事件を扱ったシリアスな作品だそうです。
打ち解け合ったフランクとロキシーのふたりが
その作品をチョイスした動機はよくわかりませんが
それはさておき、二人の映画館での殺戮が報道されるなかで
「暴力的な映画の内容が原因か」と結論づけられていたのは
メディア報道の安直さを現している、よくみる光景です。

そして映画は、知的障害者を笑いものにしていた
オーディション番組の公開収録会場のクライマックスへ。
フランクとロキシーの旅は「ボニー&クライド」よろしく
激しい銃撃戦で幕を閉じるのですが
どうせなら、フランクが体に巻いていたダイナマイトに
銃弾で撃たれたことで火が付いて、会場ごと爆破してほしかったです。

残念なのは、フランクとロキシーのふたりが向ける不満の矛先が
基本的にテレビや映画などメディアに対するものであったことです。
監督のボブキャット・ゴールドスウェイト
自身もコメディアンで俳優でもあるわけで
監督自身の不満が多くの部分に投影されているのでしょうが
テレビをザッピングしながらテレビにいらだつフランクと
流行や人気に流される周囲を嫌うロキシーは
結局二人ともメディアに踊らされているように見えます。
そして、基本的には銃の脅威がない日本のような国であれば
実現できない不満解消をやってみせてくれた痛快さに
この作品をブラック・コメディーとして楽しむことは可能ですが
アメリカでは、実際にこのような銃乱射事件が
たびたび起きているという事実から考えると
単にコメディーとして終わっていいのか、と疑問に思います。
あくまでドライに、ブラックジョークとして作られているのは
重々理解できるし、存分に楽しめるのですが
アメリカの観客に対しては「おまえら、笑えるか?」と思うのです。

それまでは「いいぞいいぞ、バカどもは殺しちまえ!」と
楽しんでいた観客に突然向き直って
銃を突きつけるような(←あくまで表現の意味合いとして)
ラストシーンが観てみたかったところ。
そうでないと『ゴッド・ブレス・アメリカ』というタイトルの皮肉も
完全には生きてこないのではないでしょうか。





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