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無垢の祈り

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(2015年/日本 85分)
監督・脚本/亀井亨 原作/平山夢明 撮影/中尾正人 美術/松塚隆史 録音/甲斐田哲也 音響効果/丹愛 音楽/野中“まさ”雄一
出演/福田美姫、BBゴロー、下村愛、サコイ、三木くるみ、YOSHIHIRO、平山夢明、綾乃テン

概要とあらすじ
「『超』怖い話」などで知られるホラー作家・平山夢明の短編集「独白するユニバーサル横メルカトル」に収録されている一編「無垢の祈り」を、「アルビノ」「私の奴隷になりなさい」の亀井亨監督が映画化。暴力的描写や10歳の少女への虐待描写など、過酷な内容が含まれるため、亀井監督が自主映画として製作した。10歳の少女フミは学校で陰湿ないじめを受け、家に帰っても義父の虐待が日常化していた。母親は夫の暴力から逃げるため新興宗教にのめり込み、誰も助けてはくれない。絶望的な日々の中で、自分の住む町の界隈で連続殺人事件が起こっていることを知ったフミは、殺害現場を巡り、ある人に向けてメッセージを残す。(映画.comより



徹底的に陰鬱な世界

今年2016年は、
日本映画の当たり年といっても過言ではないほど
面白い作品が次々と公開されますが、
『ディストラクション・ベイビーズ』『葛城事件』などなど
暴力的かつ陰鬱な内容のものが多いような気がします。
もちろん、すべてを観ているわけじゃないけれど、
すくなからず映画は世相を反映しているはずで、
現在の日本が、未来に希望を抱けない閉塞感を抱えているのは
当たらずとも遠からずではないでしょうか。
で、なかでも極め付けて絶望的なのが
『無垢の祈り』です。
原作は読んでいないし、
亀井亨監督作品は『私の奴隷になりなさい』
どうにもいまいちだったので、
わずかな心配はありましたが、さて。

ランドセルに「オバケフミ」と書かれた紙を貼られた
フミ(福田美姫)が廃れきった町の裏路地を歩いていると
小児性愛者(ペドフィリア)のオヤジに捕まります。
フミを物陰に追い詰めたその男が
ネチネチと屁理屈をこねながら、
フミの体を触ってくるどうしようもない気色悪さ。
フミが危険な裏通りばかりを選んで下校していたのは
人目を避けていたのかもしれないし、
男に詰め寄られても、大声を出して助けを呼ぼうとしないのは
彼女がすでに人生に絶望していたからかもしれません。
フミを演じる福田美姫(当時9歳)は
わずかな演技経験があるものの映画初出演ということですが、
演技経験の有無にかかわらず、
このシチュエーションを体験させることが
9歳の少女に与える精神的な影響を心配してしまいます。
それくらい、観ていて気分の悪いシーンなのですが、
福田美姫は終始強い存在感を放ちながら
フミを演じきっています。

ところが、下校途中にたまさか遭遇する変態など序の口で
フミはバラックのような家に帰ると
義父のクスオ(BBゴロー)
約束の帰宅時間に5分遅れたという理由で
母親カオル(下村愛)を折檻しています。
それでも、フミは意に介さず、
台所の床で横になると
倒れてやはり横になったテレビから流れてくるのは
被害者の体を解体し、骨だけを持ち帰る
「骨無しチキン」と呼ばれる連続殺人犯
のニュース。

いくら暴力を振るわれても、DV夫から逃げ出せない女性には
逆らうともっと酷いことをされるかもしれないという恐怖心と
DV夫が時折見せる愛情(のようなもの)にすがるしかない依存心とが
複雑に絡み合っているんじゃないかと想像してみますが
この家族のすさみきった関係は、とにかく絶望的で、
クスオが与える肉体的かつ精神的暴力
妻のカオルに留まらず、フミにも向けられます。
しかも、クスオは少女暴行の前科まであり、
フミに対して性的な暴行まで働くようになると、
今度は嫉妬したカオルがフミに暴力を振るうように……。

いくら、学校の先生や同級生が
無視を決め込んだりいじめの対象にしたりしているとはいっても
さすがに、9歳の少女が毎日のように顔に青たんをつくっていたら
児童相談所的なものが介入してきそうな気がしますが、
まあとにかく、この世の全てに絶望しているフミは
まったく関係性がわからない
車いすの友人からもらった新聞記事を頼りに
「骨無しチキン」の犯行現場とおぼしき廃工場を
自転車で巡るようになり、
何度となく訪れる廃工場の地面に
「アイタイアイタイアイタイアイタイアイタイアイタイ」
チョークで書き綴ります。
フミは「骨無しチキン」に会いたがっているのです。

フミがクスオに性的虐待を受けるシーンで
舞踏家・綾乃テンが黒子となって操る
フミそっくりの人形
が唐突に登場し、
さすがに直接的表現を避けたかと思われますが
フミが肉体と魂を乖離させることで
現実をやり過ごす術を身につけた
とすれば、
人形にしたことで、より一層痛ましさが伝わります。

廃工場に逃げたフミを追ってきたクスオは
あいかわらずネチネチと恫喝をつづけ、
「おまえのマンジュウ、きついんだよな〜」と言いながら、
カッターナイフをフミの股間に入れようとします。
すでにクスオは、
精神的なんちゃらを要因とするようなDV男ではなく、
常人には理解不能なサイコパスになっています。
かろうじて反撃し、
仕返しとしてクスオに眼球を押し込まれて、
「ギャー!! イタイ!イタイ!」と叫ぶフミは
本作の中で初めてはっきりとした声を上げました。
そこに、「骨無しチキン」がゆらゆらと現れ……。

この世のすべてに失望し、
息を潜めてやり過ごすしかなかったフミが
唯一希望を見いだし、頼りにしていたのが
連続殺人犯「骨無しチキン」でした。
「骨無しチキン」に抱きついて
「殺してください! 殺してください!」
嘆願するフミ。
フミは「骨無しチキン」に
クスオやカオルを殺してほしかったのではなく、
自分を殺してほしかったのでした。

露悪的とも取れる徹底的に陰鬱な世界観ですが
現代のある一面を捉えているのは間違いないでしょう。
クスオを演じるBBゴローの怪演が評判だったのですが、
ほとんどが台詞によるもので、
あまり表情を見せてくれなかったのは残念でした。





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