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出張

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(1989年/日本 91分)
監督・脚本/沖島勲 製作/神原寛 撮影/大津幸四郎 美術/大石章二 音楽/山崎宏 録音/菊地進平、井上秀司 照明/岩崎豊 編集/福田千賀子
出演/石橋蓮司、松尾嘉代、原田芳雄、志賀圭二郎、鈴木幸嗣、吉澤健、松川信、平窪雅、外波山文明、かしば武司、野呂瀬初美、常田富士男、竜のり子、杉浦正幸、江藤漢、亜湖、松井千佳、佐藤慶

概要とあらすじ
突然、ゲリラに誘拐された一人のサラリーマンの非哀をブラックユーモアで描く。脚本・監督は「ニュー・ジャック&ベティ」の沖島勲で、撮影は「泪橋」の大津幸四郎がそれぞれ担当。中年の営業マン・熊井功は、研修会に出席するため、東北地方に出張するところだったが、途中落石事故によって足止めをくらってしまい、仕方なくその晩は、山中の温泉旅館で一泊することになった。翌朝、山道を歩いていた熊井は、山奥から聞こえてくる妙な爆裂音に気付く。そして、その音に近寄っていった時、突然、完全武装した若者に拉致されてしまう……。(映画.comより抜粋



なにものにもなれなかった人たち

観たいなあと思っているうちに
どえらい年月が経ってしまった『出張』
その気にならないと、
10年20年てあっという間なんだよ…まじで。
「まんが日本昔ばなし」のシナリオライターとしても有名な
沖島勲監督は2015年に他界されました。

どこかの田舎の在来線に乗って出張先へと向かう
熊井(石橋蓮司)
小さい水筒型のお茶や普通にたばこを吸える車内が
時代を感じさせます。
ところが、線路内への落石により列車はストップ。
バスも使えないということで立ち往生した熊井は
こうなったら仕方がない、ゆっくりするかということで
「日和見温泉」というなんともシニカルな名前の湯治場で
一夜を過ごすことにするのでした。

旅館に到着した熊井と旅館の主人との
どうということはない会話がどうしようもなく好きです。
熊井の服をハンガーに掛けようとする主人に
そんなの、自分でやるのにという熊井。
世間話をしながらチップを渡し、
この辺で飲むとこあります? なんて聞くやりとりが
お互い機嫌良くつきあおうとしているのが伝わってきて
たまらなく好きなのです。

下駄を履いてふらふらと飲みに出かけた熊井は
一軒の居酒屋に入り、
いとこ同士だという2人の妙齢の女性を相手に酒を飲むうちに、
あたし達の家へいらっしゃい、と。

年が若そうなほうとねんごろになると、
今度は年上のほうが服を脱いで「次はあたしの番よ」と。
完全に裏があるとしか思えないようなシチュエーションですが
彼女たちはただ単に男に飢えていただけなのでした。
DVDに収録されていた沖島監督のインタビューによれば、
1人だけだとあとでまた連絡するかもしれない、とのことで
一夜にふたりの女性といいことをしてしまうのが
非現実感を強めている
のだと思います。

翌朝、熊井は上機嫌で駅へと向かう道すがら、
原田芳雄率いるゲリラに遭遇、誘拐されます。
誘拐といっても、突然襲いかかられたわけでもなく、
こっちこっちなんて言われて山の中について行ったら
「あんた人質だから。身代金要求するから。」
言われたのでした。

ゲリラたちは機動隊らしき相手と銃撃戦を行っていますが、
彼らの目的ははっきりとはわかりません。
逃げたら殺すと脅されているので、観念してそこに留まる熊井。
呑気な隊長・原田芳雄と石橋蓮司の
盟友ふたりによる軽妙な掛け合いが楽しい。

ゲリラが熊井の妻(松尾嘉代)と勤務先に身代金を要求し、
熊井は助けてもらえると思ったところが、
妻も会社もただ迷惑がるばかりで、
むしろ、おまえは何をやってるんだと怒られる熊井。

心配すらしてもらえないうえに、
どうやら妻は部長とデキているようす。

失望した熊井は、
ゲリラの一員に酒を勧められて飲むうちに意気投合。
「20代の頃まではまだ夢を持っていたんですよ。
 でも、30過ぎると生きていくのに精一杯で
 50が目の前の今となってはやり直しもききません。
 結局、金なんですよ。」

という意味のことを愚痴り始めます。
この言葉には胸がきゅんとなりました。
確かに、サラリーマンの悲哀を感じさせる台詞ですが
サラリーマンに限らず、
多くの人が同じように感じているのではないでしょうか。
多くの「なにものにもなれなかった人たち」が。

結局、社員を見殺しにする会社という悪評を恐れた熊井の勤務先が
身代金を払い、熊井は帰宅することに。
妻はあいかわらず口うるさく金の心配をするだけ、
会社では各所に頭を下げて回る、
熊井の鬱屈した日常が再び繰り返されます。

二日後にはまたしても出張を命じられた熊井。
数日前と同じように列車に揺られていると
山肌から銃声と爆弾の音が。ゲリラたちです。
熊井は思わず列車の窓から身を乗り出し、
「おーい! がんばれよー!!」
満面の笑みで叫ぶのでした。

とはいえ、熊井は世を捨て、妻を捨てて
ゲリラの一員に加わろうとはしませんでした。
なんとなーくワクワクするような日々を送っているゲリラたちは
やっぱり非現実的な夢の世界の住人たちです。
クソみたいな現実をクソみたいに生きるほかない
「なにものにもなれなかった人」が密かな希望を抱くとしたら
こんな白日夢なのかもしれません。

↓予告編が見つからなかったので『アウトレイジ』の石橋さんをご覧ください。




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