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シン・ゴジラ

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(2016年/日本 119分)
総監督・脚本/庵野秀明 監督・特技監督/樋口真嗣 准監督・特技統括/尾上克郎 製作/市川南 撮影/山田康介 照明/川邉隆之 美術/林田裕至、佐久嶋依里 美術デザイン/稲付正人 装飾/坂本朗、高橋俊秋 録音/中村淳 編集/佐藤敦紀 音楽/鷺巣詩郎、伊福部昭
出演/長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ、高良健吾、大杉漣、柄本明、余貴美子、市川実日子、國村隼、平泉成、松尾諭、渡辺哲、中村育二、矢島健一、津田寛治、塚本晋也、高橋一生、光石研、古田新太、松尾スズキ、鶴見辰吾、ピエール瀧、片桐はいり、野村萬斎

概要とあらすじ
「ゴジラ FINAL WARS」(2004)以来12年ぶりに東宝が製作したオリジナルの「ゴジラ」映画。「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の庵野秀明が総監督・脚本を務め、「のぼうの城」「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」の樋口真嗣が監督、同じく「のぼうの城」「進撃の巨人」などで特撮監督を務めた尾上克郎を准監督に迎え、ハリウッド版「GODZILLA」に登場したゴジラを上回る、体長118.5メートルという史上最大のゴジラをフルCGでスクリーンに描き出す。内閣官房副長官・矢口蘭堂を演じる長谷川博己、内閣総理大臣補佐官・赤坂秀樹役の竹野内豊、米国大統領特使カヨコ・アン・パタースン役の石原さとみをメインキャストに、キャストには総勢328人が出演。加えて、狂言師の野村萬斎がゴジラのモーションキャプチャーアクターとして参加している。(映画.comより



日本が「好きにやる」ということは

ギャレス・エドワーズ監督の
『GODZILLA ゴジラ(2014年)』の感想の最後に
「やっぱ、これ、いまの日本映画が
 やらなきゃいけないことなんじゃないかな。」なんて
軽口をたたきましたが、
『シン・ゴジラ』は、ハリウッド版ゴジラに対抗するのではなく、
1954年のオリジナル版への原点回帰を念頭に置いた
日本映画ならではの現代版アップデートでした。
公式パンフレットでさえ、「怪獣」という言葉を使わず、
あくまで「巨大不明生物」と表記
しているのは、
すでに手垢のついた「怪獣」という記号を拒絶しようとする
リブートに対する強い気概を感じます。
ていうか、脇役からちょい役にいたるまで
役者陣がものすごい顔ぶれ。
まさに日本映画界の総力を挙げている感じが半端ないのです。

オリジナル版が、
敗戦(=原爆)と水爆実験の恐怖をモチーフにしていたかわりに
本作で表現されているのは
いまだ記憶に新しい東日本大震災と
それに伴う福島第一原発の事故
なのは
誰の目にも明らかでしょう。
事前情報を極力遮断していたので、
東京に上陸した第2形態のゴジラを見たときには
あれ? これはゴジラじゃないの? なんて素直に驚きましたが
陸に押し上げられる無数の小型船や
政治家達が視察に訪れる「ガレキ」に覆われた街などのシーンは
当時のニュース映像やネット上の動画をトレースしています。

そして、ゴジラよりも本当の主人公(?)というべきなのが
日本政府の閣僚たち。
これもやはりモチーフになっているのは
福島第一原発の事故の対応に追われる当時の政治家たちです。
「想定外」など、おなじみのキーワードも登場します。
もっとも無力でだらしない存在として描かれるのは
総理大臣(大杉漣)ですが、
なんかわけのわからない巨大不明生物が東京を暴れ回っているのに
事なかれ主義を主張したり、法的手続きに戸惑ったりするさまが
ものすごい細かい編集とものすごい早口で語られます。
しかも、専門用語がばんばん飛び出すので
すべての台詞を聞きながらにして理解するのは
ほとんど不可能でしょう。

さらには、登場人物とその役職や場所を示すテロップ
本来なら説明的に感じるものですが
どう考えても読み取れない情報量の多さと
「スーパーコンピュータ」などの見ればわかるものまで
執拗にテロップをつけるのは、
早口の台詞と同様に、観客に事態を説明するためというよりは、
緊迫感を増すための演出なのではないでしょうか。
とにかく、息をつかせる暇も与えない編集は
見事としかいいようがなく、
本作で初めてほっとしたのは
片桐はいりがおにぎりとお茶を振る舞っていたシーンでした。

あえてヒーロー的な存在といえば
矢口(長谷川博己)になるんでしょうが
基本的に本作には救世主となるヒーローは存在せず、
日本政府は東京に核爆弾を落とすという
国連とアメリカの判断に従うしかありません。
外交力に乏しく、アメリカの傀儡国家でしかないという
日本人が認めたくない現実を
これでもかとばかりに突きつけます。


そしてその後、ヒーロー不在の日本がやることは
「みんなで力を合わせること」
確かに、弱者が強者に立ち向かうには
ほかに手段はないのかもしれませんし、
終盤のカタルシスを否定するわけではありません。
しかし、「みんなで力を合わせる」本作の終盤を
日本人の美徳として胸をなで下ろすのには違和感を感じるし、
本作はこの終盤に、若干の皮肉を込めているような気がします。

いかにも頼りにならない暫定総理の平泉成
フランスの大使館員にひたすら頭を下げていたことが
一見、零細企業の社長の悲哀を感じさせ、
ああ、実はみんなが頑張ってるんだなあと感じさせるのですが、
それはすなわち、世界に対して頭が上がらない日本なわけで
これを美徳とするのは
いかにも情けないというほかありません。

最終的にゴジラの血流を凍結させるという判断に至りますが、
これはまさに福島第一原発でのメルトダウンに対する対処であり、
首の長い放水クレーンを導入するのも同様です。
矢口が指揮するその作戦はひとまず成功に終わりますが、
ゴジラは死滅したわけではなく、
固まったまんま、壊滅状態の東京都心にたたずんでいます。
これは具体的には核廃棄物を象徴し、
またいつ目覚めるかわからない恐怖のメタファーでしょう。
「好きにやる」ということは
自分の問題は自分で解決するということで、
東京のど真ん中に突っ立ったゴジラを
自分で処理することが果たして日本人にできるのかという
課題は残されたままなのです。

『エヴァ』は劇場版1作目をテレビで見て、
あんまり好きじゃない、というか嫌いだったので
それ以降全く観ておらず、
庵野秀明監督がいかなる作家なのかということも
ほとんどわかっていないのですが、
これほど膨大な情報量を巧みに詰め込み、
小刻みな編集と大胆な構成力は見事というほかありませんでした。
とりわけ、庵野監督自身が「好きにやって」いることが感じられ、
そのうえでエンターテイメント性にも優れ、
しっかりヒットしているんですから、
素晴らしいとしか言いようがありません。

ゴジラのデザインも素晴らしいし、
CGのクオリティーも非常に高く、
傑作ということでいいんじゃないでしょうか。





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