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赤い天使

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(1966年/日本 95分)
監督/増村保造 脚色/笠原良三 原作/有馬頼義 企画/久保寺生郎 撮影/小林節雄 美術/下河原友雄 音楽/池野成 録音/飛田喜美雄 照明/泉正蔵 編集/中静達治
出演/若尾文子、芦田伸介、川津祐介、赤木蘭子、池上綾子、千波丈太郎、喜多大八、谷謙一、河島尚真、小山内淳、仲村隆

概要とあらすじ
有馬頼義の原作を、「ほんだら捕物帖」の笠原良三が脚色し、「陸軍中野学校」の増村保造が監督したもので、戦争を素材とした限界状況ドラマ。撮影はコンビの小林節雄。昭和十四年、西さくらは従軍看護婦として天津の陸軍病院に赴任した。その数日後、消灯の後の巡回中、彼女は数人の患者に犯されてしまった。そして、二カ月後、深県分院に転属となった彼女は、軍医岡部の指揮の下で忙しい毎日を送っていた……。(映画.comより抜粋



イチャイチャしてるほうが楽しいもん

またしても若尾文子が情念に溢れる強い女性を演じる
増村保造監督の『赤い天使』
若尾文子は『清作の妻』で、戦地に行かせないようにするために
愛する夫の目を釘でつぶしましたが、
本作では戦場で兵士の看護をする従軍看護婦です。

日中戦争が激化するなか、
陸軍病院に派遣された西さくら(若尾文子)
病院は負傷兵でいっぱいですが、
なかには、再び前線に送られるのを恐れて
仮病を使っているものも少なくありません。

赴任してまもなく、夜回り中の西さくらは
負傷兵たちに輪姦されます。
このこと自体、たいへんおぞましいのですが、
その事実を西さくらから打ち明けられた婦長が
やれやれといった調子で
「あなたで3人目よ」と返すのをきくと、
看護婦に対する兵士のセクハラは、
ある程度大目に見られていたと推察できます。
戦争がもたらす狂気のほかに、
そもそも女性に対する軽視があたりまえだった
時代背景も透けて見える気がするのは、
西さくら自身も嫌悪感を示しこそすれ、
絶望的なダメージを受けているわけではなさそうなところ。

前線に近い病院に転属になった西さくらは
岡部軍医(芦田伸介)と出会います。
その病院では、つぎつぎと重傷の兵士たちが担ぎ込まれ、
三日三晩不眠不休で治療にあたるのですが、
岡部軍医が執刀する手術シーンは
なかなかにグロく、凄惨。

輸血用の血液も薬品も麻酔薬も不足している状況で
岡部軍医は、命に見込みのない兵士は早々にあきらめ、
命あるものも、感染症を防ぐために
どんどん手足を切断していきます。
切り取られた手足であふれかえる壺。

そんななか、かつて西さくらをレイプした主犯格の男が
負傷兵として病院に運ばれてきます。
あいかわらず身勝手な男は、西さくらを見つけると命乞い。
ちょっと理解しがたいけれど、
自分のせいでこの男を死なすわけにはいかないと考えた西さくらは
貴重な輸血を行なってくれるよう、岡部軍医に進言します。
すると、岡部軍医は
「いいだろう。そのかわり、今夜私の部屋に来なさい」
と言うのでした。
まったく、戦争に行くと男はみんなゲスになるんでしょうか。
とはいえ、岡部軍医はモルヒネ中毒のインポだったのですが。

再びかつての陸軍病院にもどってきた西さくら。
今度は両腕のない兵士・折原一等兵(川津祐介)
性処理を懇願されます。
すでに岡部軍医に気持ちを寄せていた西さくらは
自分は負傷兵を殺すか、カタワにするかしかないという
岡部軍医の苦悩を慮って
「岡部軍医どのの苦しみを少しでも救いたい」と考え、
折原一等兵の要求に応えます。
それどころか、自ら非番の日に折原一等兵を繁華街へ連れ出し、
連れ合いホテルで身体を重ねるのでした。

なんでしょうか、この魔性。

岡部軍医と再会した西さくらは、
開き直ったような率直さで愛を打ち明け、
孤立した前線基地に転属を命じられた岡部軍医に同行します。
「わたしは、さくらだからぱっと散るのがいいの」という西さくらは
死をも恐れず、とにかく岡部軍医と一緒にいられるのが
幸せといったようす。
「さくら」という名前から推測するに、
彼女のキャラクターは軍国主義的思想を体現しているのかもしれません。
もしそうだとすると、インポの岡部軍医というのは……
かの人でしょうか。

装備も兵士も不足している前線基地ではコレラまで蔓延。
夜を徹して敵の襲来を警戒する兵士たちをよそ目に
岡部軍医の部屋にやってきた西さくらは
岡部軍医を説得してモルヒネの禁断症状を克服させ、
さらにはインポまで直してしまいます。

すげえや、西さくら。
あいかわらず兵士たちは警戒を怠らず、危機感を高めているなか、
「今日だけはお前が上官だ」なんつって言われた西さくらは
ダブダブの岡部軍医の軍服を着て
「おい、靴を履かせろ」などとおどけています。

もう、いまのふたりにとって戦況などどうでもいいのです。
そりゃそうです。
人殺しより、イチャイチャしてるほうが楽しいもん。

西さくらは、レイプの主犯格と折原一等兵、
そして、自分が推して前線に連れてきた新米看護婦たちの死を
自分の責任だと後悔していますが、
そのわりには立ち直りが早く、物語上重要とは言えません。
とにかく、西さくらは
自分が愛した男のためなら、ほかの男に抱かれるのも平気だし、
戦争だってへっちゃらだという、
愛まっしぐらな女性なのではないでしょうか。
増村保造は一貫して個人主義のひとでしたが、
「さくら」の一途な愛情には
全体主義的な狂気をも重ねて表現しているような気がします。

戦争の凄惨さはもとより、
情念を貫く女性のたくましさや
増村特有の構図の美しさも楽しめる一本です。





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