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団地

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(2016年/日本 103分)
監督・脚本/阪本順治 プロデューサー/武部由実子、菅野和佳奈 撮影/大塚亮 照明/杉本崇 録音/尾崎聡 美術/原田満生 編集/普嶋信一 音楽/安川午朗
出演/藤山直美、岸部一徳、大楠道代、石橋蓮司、斎藤工、冨浦智嗣、竹内都子、濱田マリ、原田麻由、滝裕可里、小笠原弘晃

概要とあらすじ
阪本順治監督が日本アカデミー賞最優秀監督賞など数々の映画賞を受賞した「顔」の藤山直美と15年ぶりにタッグを組み、団地に越して来た夫婦にまつわる噂が引き起こす一大騒動を描く。三代続いた漢方薬の店を売り払い、団地へ越してきた清治とヒナ子夫妻。昼間から散歩ばかりの清治に団地の住人たちはあれこれと噂をしているようだが、ヒナ子はそんなことも気にせずパートに出かける毎日を送っていた。清治が散歩に出なくなり、ヒナ子の家にスーツ姿の若い男が出入りするようになると、離婚、清治の蒸発、さらには殺人か、などと好き勝手なことを噂される始末。ヒナ子夫妻にまつわる噂はさらに拡大し、警察やマスコミまでをも巻き込む事態へと発展するのだが……。ヒナ子、清治夫妻に藤山直美、岸辺一徳。団地の自治会長夫妻に石橋蓮司、大楠道代。謎の男には初の阪本組参加となる斎藤工。(映画.comより



摩訶不思議な団地宇宙

傑作『顔』から16年の時を経て復活した
阪本順治監督と藤山直美コンビによる『団地』。
あれから16年かぁ……と思い出すこっちのほうが
感慨深いものがあります。
3年先まで埋まっているという藤山のスケジュールが
ぽっこり空いた隙を狙ってオファーした阪本監督は
なんとそれから一週間で脚本を書き上げたんだとか。
自らを舞台役者と定義している藤山直美は
滅多に映画に出演することはありませんが
阪本監督ならということで本作の出演を引き受けたそうで、
相思相愛ぶりが窺えます。

予想していたことですが、
ほぼ満員の映画館を占める観客の年齢層は高く
ま、それ自体は別にかまわないのですが
シルバーだか、ブロンズだかの方々は笑いの敷居が非常に低く、
ちょっとしたことでも大笑い、
なんなら、つまづいただけでも爆笑するので
ここぞという笑いどころがぼんやりしてしまったり、
面白かった台詞を「○○って!」と口に出して言ってしまうので
注意力を削がれることこの上なし。
楽しんでるのはいいけどさ……

とある事情で老舗の漢方薬屋を閉めて団地暮らしを始めた
山下清治(岸部一徳)山下ヒナ子(藤山直美)の夫婦。
ヒナ子が、ラジオの『ありがとう浜村淳です』を聞きながら
掃除機をかけようとするのは
これぞ関西の日常というべきか。
そこに登場する、傘を差した謎の男・真城(斎藤工)
最初からボケまくります。
真城はかつての漢方薬屋の常連だったようですが、
ヒナ子が声をかけると、
「どうも、ごぶがりです」と吉本新喜劇ばりの挨拶。
3階のベランダから顔を出すヒナ子に向かって
「802号室ですね」とたたみかけます。
そんな真城に「日本語が下手なもので」と言わせ、
外国人なのかなと思わせるミスリードが効いています。

会話のテンポ、またはそのひねり具合は
これぞ関西、関西弁ならではの面白さですが
お笑い芸人的なボケとツッコミのあざとさとはちょっと違う、
日常感をギリギリ保っていると思いました。
いかにも観客を笑わそうとおどけているのではなく、
あくまで登場人物たちは真剣、というか普通に振る舞っているのが
絶妙なバランスでした。
とはいえ、竹内都子濱田マリが演じる
噂好きの主婦4人組の役名が東西南北だったりするのは
ふざけきってます。

団地の自治会長選挙に落選した清治が
人望のなさにふてくされて、
台所の床下収納にひきこもった
ことから
ヒナ子が清治を殺して死体を切り刻んでいるという噂
団地内で巻き起こり、一大騒動に。
主に、ニュース記者(?)を旦那に持つ主婦が
積極的に妄想を膨らませて周囲を混乱させるのですが、
突撃取材を受けたヒナ子が
あまりのばかばかしさに記者を笑い飛ばすと
その笑うさまがむしろヒナ子がサイコパスであると
確信させてしまう恐ろしさ。


じつは、清治とヒナ子の夫婦は
過剰労働によるトラック運転手の不注意によって
一人息子を亡くし、深い悲しみを抱えていたのですが、
当の運転手が在籍していた運送会社の不誠実さと、
事件を報道したマスコミの
騒ぐだけ騒いだあとはあっさり忘れ去る身勝手さに
辟易&疲弊していたのでした。
そして、団地に越してきてもやっぱりこの騒動。
コミカルながら阪本監督の社会批判をちょっぴり感じるし、
団地を称して「噂のコインロッカーや」とつぶやくヒナ子の心中は
少なからず厭世観に満たされていたのではないでしょうか。

表面的には楽しい本作に
もうひとつ陰を落としているのは、
母親の再婚相手のDVに苦しめられている
喜太郎(小笠原弘晃)
です。
『ガッチャマン』の主題歌を口ずさみ、
いつか助けに来てくれるヒーローを待ちわびている喜太郎が
いつものように継父のDVを受け、
金属バットを足に挟んでベランダで正座させられたあと、
やはり『ガッチャマン』を歌いながら、
金属バットを手にして立ち上がり、
室内に入ろうとするシーン
は、心底ぞっとします。
おそらく、ガッチャマンが降臨した喜太郎は
金属バットで継父を撲殺するつもりだったのでしょう。
そこに必死で「ええ歌やったよ!」と声をかけたヒナ子によって
彼は思いとどまったのではないでしょうか。

再び清治とヒナ子夫婦の部屋を訪れた真城は
「同郷人」5000人分の漢方薬を作ってほしいと言いだします。
ま、このあたりになってくると、
真城が宇宙人(もしくは未来人)であることがわかります。
もともと実家が仏具屋を営んでいたという阪本監督は
幼少期から、死んだ人の意識がなくなってしまうということを
奇妙に感じていたそうですが、
「電源もないのになぜ心臓は動いているんですか?」
「肉体があるほうが奇跡じゃありませんか?」

という真城の言葉は、死者の魂に対する敬意と、
生への感謝の両方の意味が含まれていると思います。

大金を積まれても「金じゃないんだ」と拒む清治に対して
それならばと真城が持ち出したのは
清治&ヒナ子夫婦が死んだ息子と会えるようにすることでした。
それはすなわち、この夫婦が(肉体的な)死を選ぶということですが、
ふたりは積極的にその提案を受け入れるのでした。
その後の漢方薬作りの工程が、うんちく楽しい。

真城の「同郷人」たちは
免疫が必要なくなったせいか、少なくとも地球上では虚弱体質
(おそらくそのせいで真城はいつでも傘を差している)
肉体はかつての名残を残す程度のものでしかなく、
肌は鱗状で、男性には乳首がないとか。
これを説明するヒナ子の
「進化しすぎて退化したんやて」という言い回しが
阪本監督のデビュー作『どついたるねん』
赤井英和が「積極的にお断りします!」と言った
僕が大好きな台詞を思い出させ、監督の言葉のセンスににんまり。
画には移りませんが、
「同郷人」が抱いている赤ちゃんの顔をのぞき込んだヒナ子が
驚いて卒倒すると、
「すみません。我々の赤ちゃんは鼻の大きさだけ大人と同じなんです」
と真城が説明するくだりで爆笑。

面白おかしい団地のほっこりした日常を期待していた観客は
度肝を抜かれる終盤。
なんと、マザーシップ的巨大宇宙船が現れ、
SFかつ超シュールな展開に。

それでもあいかわらず、台詞の掛け合いは楽しいのですが、
やはりこれは死後の世界ではないでしょうか。
真城たち宇宙人(未来人?)は神様のような存在なのです。
そして、思いもよらず現れる喜太郎。
本当のお父さんのところへ行くと言っていた喜太郎は
実父のもとへ向かったのかと思っていましたが、
このマザーシップにいるということは
喜太郎は死を選んだということで、
喜太郎の実父が亡くなったあと、
母親が再婚したということなのかもしれません。
いずれにしろ、多幸感あふれるシーンにもかかわらず、
よくよく考えてみると、素直に彼らを祝福できず、
なんともいえない複雑な気持ちになります。

ラストシーンで、団地で暮らす清治とヒナ子夫婦の部屋に
ただいまー! と元気よく帰宅する死んだはずの息子。

これは死後の世界で家族が仲むつまじく暮らしているのか。
はたまた、あの団地での生活のほうが虚構なのか。
いやはや、団地そのものがなんらかの宇宙か、
別次元の世界なのではなかろか。なんつって。

団地暮らしにまつわるほのぼのとした人情コメディに収まらない、
なんとも摩訶不思議で味わい深い快作です。





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