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ギャラクシー街道

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(2015年/日本 110分)
監督・脚本/三谷幸喜 製作/石原隆、市川南 撮影/山本英夫 照明/小野晃 録音/瀬川徹夫 コンセプトデザイン/種田陽平 美術/北川深幸 衣裳デザイン/宇都宮いく子 特殊メイク/江川悦子 装飾/田中宏 編集/上野聡一 音楽/荻野清子
出演/香取慎吾、綾瀬はるか、小栗旬、優香、西川貴教、遠藤憲一、段田安則、石丸幹二、秋元才加、阿南健治、梶原善、田村梨果、浅野和之、山本耕史、大竹しのぶ、西田敏行、佐藤浩市

概要とあらすじ
三谷幸喜の長編映画監督7作目で、三谷映画としては初めて宇宙が舞台に設定され、全員が宇宙人の登場人物たちによって織りなされるスペースロマンティックコメディ。香取慎吾が主演し、綾瀬はるかがヒロインを務めるほか、優香、遠藤憲一、小栗旬、大竹しのぶ、西田敏行ら豪華キャストが集う。西暦2265年、木星と土星の間に浮かぶスペースコロニーの「うず潮」と地球を結ぶ、スペース幹線道路「ギャラクシー街道」は、老朽化が進んで廃止の噂もささやかれていた。そんな街道の中央にひっそりとたたずむハンバーガーショップ「サンドサンドバーガー・コスモ店」には、スペース警備隊やスペースヒーロー、スペース客引き、スペース娼婦など、今日も様々な宇宙人たちが集う。(映画.comより



聞きしに勝るZ級の愚作

酷評しか聞こえてこない『ギャラクシー街道』
一体どれくらい酷いのか、確かめたくて観てみたのですが、
本来、こんな映画の見方はよろしくありません。
これでは、ただの野次馬です。
酷いと言われている作品をわざわざ観る場合、
得てして揚げ足取りに終始してしまうものです。
いくら世の中で酷評されていようとも
自分にとって傑作であればそれでいいじゃないか。
というわけで、一切の先入観を振り払い、
『ギャラクシー街道』? あの三谷幸喜の新作なんだね!
へぇ〜面白そうじゃん! 観よ観よっ! と
心の中で3回呟いてからリモコンのスタートボタンを押しました。
ちなみに、三谷幸喜作品では
初期の『みんなのいえ』あたりは、結構好きです。

……酷かった。聞きしに勝る酷さだった。
面白くないだけならまだいいが
本作全体に横たわる差別意識に腹が立って仕方がありません。

かつては賑やかだった「ギャラクシー街道」は
老朽化の影響もあって、いまや人通りが少ない、と。
その街道沿いにあるハンバーガーショップ
「サンドサンドバーガー・コスモ店」も閑古鳥が鳴いている、と。
まあ、新しいバイパスが開通したら
従来の国道に人が寄りつかなくなった、みたいな設定。
でも、最後まで観ても、登場人物たちが
過去の遺物となりつつあるギャラクシー街道を復興させたいのか、
それともこのハンバーガー・ショップの経営を立て直したいのか、
はたまたその両方なのかよくわからず、
それ以前に登場人物たちは、この現状を憂えているのかすら、
よくわかりません。

舞台となるのは、ハンバーガー・ショップの店内だけで
三谷幸喜が大好きなグランドホテル形式。
そこには登場人物たちが次々に入店してくるのですが
それぞれのエピソードがことごとくぶつ切り
まったく絡み合うことはありません。

三谷作品で、通常より耳がでかいなどの
特殊メイクをするようになったのは
たぶん『THE 有頂天ホテル』からだと思いますが、
おそらく、それを三谷監督はいたく気に入ったんでしょう。
本作は耳がでかい、鼻が長いなどの
見た目に特徴のあるキャラクターばかりを登場させ、
そのことを面白がろうとしているようです。
んが、ちっとも面白くありません。
なぜなら、本作は未来の宇宙を舞台にした設定なので
ちょっとくらい耳や鼻がでかいやつがいることなど
むしろ当たり前
だからです。
『スターウォーズ』なんか、もっと変なやつが登場するし、
それは当たり前のことととして受け入れられています。
本作は、このような多種多様な生物が共存する未来の宇宙生活では
どのような価値観が常識となっているのかを考察することなく、

むしろ現代よりも古い価値観に基づいて
宇宙人たちの奇異なディティールだけで笑わそうと目論んだ挙げ句、
それがことごとくスベっているのですから、
そりゃあ、酷評をくらっても仕方ありません。

では、ひとつひとつのディティールは効果的なのかというと
そうでもなく、
段田安則が演じる捜査官はキーボードを叩いているし、
店のメニューはハンバーガーだのナゲットだのコーヒーだの、
ごくごく普通のものばかり。
未来の生活を描くには、あまりにもアイデアが貧困です。
(未来の生活を描くつもりがないのかもしれないけれど
 それなら舞台が宇宙である必要もないはず)
バーガー・セットの値段に執拗なこだわりをみせていたかと思えば
娼婦にねだられたとはいえ、
同じ人物が80箱のナゲットを注文したりするのも、
キャラクター設計に一貫性が感じられません。
チーズ・サンサン・バーガーと
ダブルチーズ・サンサン・バーガー
のくだりは
言いたいだけじゃん! というツッコミ待ちでありきたりだし、
ポン引き山本耕史にみせられた娼婦のカタログを眺めるシーンで
ブルドックのような顔をした娼婦の写真に対して
「そのコ、雨上がりの犬みたいな匂いがするんだよ」
って。
……犬を犬で喩えるって。まじかよ。
大竹しのぶが「パートタイマーを始めてから80年」ていうのも、
80年て、微妙……。現実でもギリありえるじゃん。
なんで200年とかにしないのよ。

ほかにも、自分は「キャプテン・ソックス」だと
警備隊の隊長に打ち明けた小栗旬

それを証明するためにトイレの個室に入り、
巨大化するから服が破れちゃ困るので全裸になると、
下ネタまじりにいうんだけれど、
そこで巨大化したらトイレごと壊れるよね。
ていうか、小栗旬が
なんでそこまでして自分が「キャプテン・ソックス」であることを
隊長に認めてもらわないと気が済まないのか不明。

はたまた、
香取慎吾の元カノ優香の今カレである梶原善に挨拶すると
長い下を出して香取慎吾の顔をなめる梶原善。
香取が「ああ、これが○○星人(=梶原善)の挨拶なんですね?」
というと、○○星人である梶原善は
「そんなわけないでしょう」と答え、
香取は気持ち悪そうにしている……
えっ! 挨拶じゃないならなんなの?
挨拶じゃないならなんなんですか? って
普通、聞かない? 聞くでしょ。
そこが判明しないと、あとの綾瀬はるかが舌を出すシーンの
伏線にすらならないじゃん。

また、優香が梶原善を愛しているし、幸せだと言っても
梶原善がどうしようもない男としてしか描かれていないのは問題で
優香が梶原善を愛する理由、それはすなわち
香取慎吾には持ち得ない何かであるはずなので、
そこから香取慎吾は
自分に足りない何かを学ぶべき……じゃないの?

とにかく、なんといっても酷かったのは、香取慎吾。(の役)
最初から、半魚人の西川貴教に対する差別的対応に驚きましたが
(ていうか、あのようにびちょびちょの半魚人だって
 やってくるのがあたりまえの未来宇宙でのお話なんだから
 端から半魚人用の座席があってしかるべき。
 そういうリアリティ・ラインの設定がずさん過ぎ)
ずっとイライラギスギスしている香取は
そもそも自分ひとりで現状から脱出しようと企んでいるゲス野郎。
妻である綾瀬はるかに対しても、従業員の大竹しのぶに対しても
常に高圧的に振る舞います。
もっとも驚いたのは、
綾瀬はるかが(わけあって)「頭が痛くて休んでたの」というと
「アレ(=生理)だったら寝てていいぞ」というシーン。
耳を疑いました。いつの時代の男でしょうか。
まったく仕事をしない香取慎吾は終始傲慢で、
元カノの優香に対して未練を露わにしつつ、
優香の今カレである男のだらしなさをみて、
あんな男とつきあっている今のお前は不幸せで、
こっちのほうが悲しくなってくる!
 とまでいいます。
もちろん、こういう独りよがりな男が主人公でも構いませんが
香取慎吾は最後まで制裁を受けるわけでも改心するわけでもないので
徹底して嫌悪するべきクズでしかありません。

山本耕史から娼婦を買う男が
どういうわけか、しつこく性病を気にしているのも気色が悪いし、
やってきた娼婦との会話のやりとりがものすごくつまらないうえに長い。
よくもまあ、これほどまでに性差別的な要素を
あっけらかんと物語に組み込めたものです。
おそらく、三谷はこのようなものが
ギャグとして通用すると考えているのでしょうが、
その無自覚さが恐ろしい。

なぜか綾瀬はるかに執拗に迫る遠藤憲一
セリフを吐きながらゆっくりとコートを脱いでいくと
SMの女王様みたいな格好で……
というシーンは
かすかに映画的な面白さを感じさせる部分でしたが
繰り返しになりますが、やっぱり根本的に、
鼻や耳がでかかったりするのがあたりまえの未来宇宙で
ちょっとかわった服を着ていたとしても意外でも何でもありません。
遠藤憲一の服装を面白がろうとすること自体が
本作の世界観を構築できていない証拠
です。

遠藤憲一が両性具有で
ものすごいスピードで妊娠から出産に到るのはいいけれど、
「お別れの挨拶だから。大丈夫だから」と偽って
綾瀬はるかとおでこをくっつけたことで妊娠するのは……
これ、催眠レイプだよね。
遠藤憲一が産んだ卵のうち、
1個が宇宙に捨てられちゃって……という
おそらく本作のクライマックスに当たるであろうシーンにも
遠藤憲一の妊娠&出産を祝福する気にはさらさらなれず、
その卵1個の大切さがまったく伝わってこない
ので
卵を掴めるのか掴めないのかのサスペンスに
1ミリもカタルシスはなく、
嫌悪感を伴う軽薄さしか感じませんでした。
で、ここまでのすべてが
ギャラクシー街道の老朽化とか、店の存続とかに
まったく関係ないのね。

あと、郵便屋。
宇宙空間であたりまえのように風が吹いてましたけど。

これだけ、ボケまくってるのにスベりまくるというのも
なかなか稀だとは思いますが
とにかくテンポが悪くて、山も谷もないし、
そんなことより三谷幸喜の差別に対する無自覚さ、
というか、著しい意識の低さに
開いた口がふさがりませんでした。

基本的に、頭の悪いガキが「変顔、超ウケるぅ〜」とかいって
はしゃいでるのと同じ低レベルの笑いしか存在しない、
疑いようのないZ級の愚作です。





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