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ディストラクション・ベイビーズ

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(2016年/日本 108分)
監督/真利子哲也 脚本/真利子哲也、喜安浩平 製作/椎木隆太、森口和則、太田和宏、大和田廣樹、王毓雅、阿南雅浩 撮影/佐々木靖之 録音/高田伸也 美術/岩本浩典 衣装/小里幸子 編集/李英美 音楽/向井秀徳
出演/柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎、池松壮亮、北村匠海、三浦誠己、でんでん

概要とあらすじ
柳楽優弥、菅田将暉、小松菜奈、村上虹郎ら若手実力派キャストが集結し、愛媛県松山市を舞台に若者たちの欲望と狂気を描いた青春群像劇。「イエローキッド」「NINIFUNI」などで世界的注目を集める新鋭・真利子哲也監督が商業映画デビューを果たし、「桐島、部活やめるってよ」の喜安浩平が共同脚本を担当。愛媛の小さな港町・三津浜の造船所で暮らす泰良と弟の将太。いつもケンカばかりしている泰良は、ある日突然、町から姿を消し、松山の中心街で強そうな相手を見つけてはケンカを売るようになる。そんなある日、裕也という青年から声を掛けられた泰良は、裕也と一緒に通行人に無差別に暴行を加え、車を強奪。その車に乗りあわせていた少女・那奈も巻き込んで松山市外へと向かう。(映画.comより



内に秘めたる怪物……かも

インディーズ映画界最後の大物と言われる
真利子哲也監督の商業映画デビュー作、
『ディストラクション・ベイビーズ』
真利子哲也監督の作品を観るのはこれが初めてなので
期待と不安を持ちながら観てまいりました。

とにかく、柳楽優弥がすごい。
港町で喧嘩に明け暮れていた泰良(たいら=柳楽優弥)
身元引受人の工場長・でんでんに「勝手にしろ」と
愛想を尽かされたのを機に姿を消してしまいます。
泰良が再び姿を現したのは、松山の路地裏。
フリージャズのような演奏をバックに
歩く泰良の後ろ姿を捉えたシーンが不穏な空気に満ちています。
そして、ついに泰良が振り返ったときの
泰良=柳楽優弥の表情の狂いっぷり。

眼はらんらんと輝き、口元にはうっすらと笑みがうかぶ、
話が通じない人の顔。

喧嘩相手を物色していた泰良は
ひとりのバンドマンに目をつけると突然襲いかかりますが
くんずほぐれつの格闘の末、
少し上背のあるそのバンドマンに負けてしまいます。
普通はここで勝負あり。終わりです。
(ま、そのまえに普通は
 わけもなくひとに殴りかかったりしないけど)
ところが泰良は、その後バンドマンがいるライブハウスに乗り込み、
喧嘩の続きをやりはじめる
のです。
とにかく、しつこい。しつこい。

なんと、この泰良には
モデルとなった実在の人物がいるそうで
監督は何度も松山に足を運び、取材を重ねたそうですが、
こんなひとと、絶対に関わりたくない……
それはともかく、泰良はただ「楽しくて」喧嘩をしているだけで、
彼には怒りの感情も目的もありません。
通常、もめ事が起きたときは
なんじゃ、わりゃ〜! やんのか、こら〜! などと
啖呵を切るものですが
本作を観ると、啖呵というものが
殴り合いになるのを避けるために存在する
ということを
改めて理解できます。
普通は、できれば啖呵をきっているうちにことが治まり、
殴り合いにならずに済ませようとしているのです。
んが、いきなり殴ってくる泰良にそんな道理は通じません。

また、本作の喧嘩シーンでは
カメラがぐっと近づいたり、
細かく編集して迫力を出したりすることはなく、
少し離れた場所から傍観するように喧嘩を見つめています。
この演出が、喧嘩にリアリティを持たせるだけでなく、
「一体なにやってんだ」感を引き立てます。

相手がヤクザでも平気で喧嘩をふっかける泰良。
あいかわらず、しつこく挑む泰良が
アニキ分のヤクザをカウンターパンチで倒したとき、
初めてはっきりと声を出します。
「フォーー!!」
もう、獣です。ズートピアには住めない獣です。

やがて、泰良の喧嘩っぷりに魅了された裕也(菅田将暉)
行動を共にするように。
菅田将暉は『そこのみにて光輝く』と重なるような役柄でしたが、
裕也という男の軽薄さと卑屈さには
同情する余地がまるでありません。
泰良の相棒を名乗り、
自分まで強くなったような高揚感に満たされた裕也は
自ら通行人に喧嘩をふっかけるものの、
そのターゲットは女性ばかり。

泰良と裕也のふたりに
拉致されたキャバ嬢・那奈(小松菜奈)が加わった後半は
これはもう『ワールド・イズ・マイン』
思い出さずにはいられません。
キャバ嬢・那奈はずるがしこい嫌な女ですが
それ以前に万引きという癖を持っています。
那奈の万引き癖と泰良の喧嘩癖は
おそらく強い近似性を持っているはず。

なにしろギスギスした世の中なので、
抑圧された暴力や鬱屈した感情を描く作品も多いですが、
本作はどうも、現代社会の空気を反映しているというよりも、
ラストシーンで登場する秋祭りの喧嘩御輿が象徴するように
人間が根源的に持つ暴力への欲求を表現しているように感じます。
僕たちは「ケ」の日常を過ごす間、
みずからの暴力性をひた隠しにして生活しています。
そのガス抜きのためにあるのが「ハレ」の日である祭ですが、
そんなコントロールされた日常を嘲うかのように
暴力をむき出しにするのが泰良なのでしょう。
だからといって、暴力を肯定する作品ではもちろんありません。
だけれども、ヤクザを殴り倒す泰良をみて
痛快な気持ちがわかなかったといえば嘘になるでしょう。
人間が持つ潜在的な暴力性と向き合わす契機を
観客に与えているのではないでしょうか。

泰良とその弟の生い立ちに
事態の原因を示すのかもしれない要素が若干ありましたが
最後まで、怪物・泰良の心理を表現しないのは見事でした。
不良映画でもなく、ヤクザ映画でもない、
社会に対する不満をため込んだ男の暴走でもない……
あくまで泰良は得体の知れないモンスター。
そしてそれは誰もが内に秘めたる怪物……かも。


真利子哲也監督の今後にも注目です。





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