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ズートピア

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(原題:Zootopia 2016年/アメリカ 109分)
監督/バイロン・ハワード、リッチ・ムーア 共同監督/ジャレッド・ブッシュ 製作/クラーク・スペンサー 製作総指揮/ジョン・ラセター 音楽/マイケル・ジアッキノ
声の出演/ジニファー・グッドウィン、ジェイソン・ベイトマン、イドリス・エルバ、ネイト・トレンス、J・K・シモンズ、ジェニー・スレイト(日本語吹き替え:上戸彩、森川智之、三宅健太、高橋茂雄、玄田哲章、竹内順子)

概要とあらすじ
動物たちが高度な文明社会を築いた世界「ズートピア」を舞台に、ウサギの女の子ジュディが夢をかなえるために奮闘する姿を描いたディズニーアニメーション。監督は「塔の上のラプンツェル」のバイロン・ハワードと「シュガー・ラッシュ」のリッチ・ムーア。どんな動物も快適な暮らしができる環境が整えられた世界。各々の動物たちには決められた役割があり、農場でニンジン作りに従事するのがウサギの務めだったが、ウサギの女の子ジュディは、サイやゾウ、カバといった大きくて強い動物だけがなれる警察官に憧れていた。警察学校をトップの成績で卒業し、史上初のウサギの警察官として希望に胸を膨らませて大都会ズートピアにやってきたジュディだったが、スイギュウの署長ボゴは、そんなジュディの能力を認めてくれない。なんとかして認められようと奮闘するジュディは、キツネの詐欺師ニックと出会い、ひょんなことからニックとともにカワウソの行方不明事件を追うことになるのだが……。(映画.comより



ラクなんだよね。ひとくくりにするのって。

傑作との呼び名も高い『ズートピア』
公開から一月以上経っているのに映画館はほぼ満席でした。
あんまりケッサクケッサクいわれると、
自分は観なくてもいいんじゃないかと思えてくるのですが
やっぱり今年押さえておきたい一本ではないかと考え、
人生初の日本語吹き替え版を観てまいりました。
ていうか、ディズニーアニメを映画館で観るのが初めてかも。

それにしても、まー、よくできてる。
感心するし、尊敬します。まー、よくできてる。
ちょっと呆れるくらいに完成度が高い作品でした。
監督もふたりですが、脚本に7人も関わってるんですから、
練りに練られている印象です。
アメリカが抱える社会問題を表現しているとは聞いていたので
説教臭かったら嫌だなと思っていましたが、そんなことはなく、
アメリカ国内に限ったことではない差別や偏見の普遍的な問題を
見事に寓話化
しています。
擬人化した動物たちが登場する子供だましのアニメと思わせて、
むしろ大人の観客に対して
本作をどう受け止めるのか突きつけてくるような
超ビターな作品。
にもかかわらず、表面的には
笑いあり、涙あり、アクションありの娯楽満載なバディもの。
すげえや。すげえ、すげえ。

おそらく、本作が
差別ってよくないよね! みんな仲よくしようね!
という、薄っぺらいきれい事に収まらず、
より現実的かつ深遠なものになっているのは
ウサギの女の子、ジュディが持つ自己矛盾のせいではないでしょうか。
「よりよい世界を作る」ことを目指して
ウサギ初の警察官になるジュディは
夢と希望を持った清廉潔白な理想主義者で、
現実問題に直面したヒロイン・ジュディの
葛藤&挫折が描かれるのは当然だとして
本作では、ジュディの思考や行動そのものに
すでに差別やレッテル貼りが無自覚に含まれているのが肝。

ジュディの自己矛盾が顕著に現れるのは
警察署長に駐車違反の取り締まりを命じられ、
午前中のうちに200台以上の駐禁キップを切るシーン。
一見、ジュディの有能ぶりを示すように受け取れるものの、
過剰な厳格さで駐禁キップを切るのは
彼女にとって、警察署長を見返すのが目的で、
「よりよい世界を作る」ためではありません。
当然の如く、駐禁キップを切られた自動車の持ち主たちは
不満をもらします。
駐車違反の取り締まりを不本意な仕事だと捉え、
もっと「警察官らしい仕事をしたい」
不満を募らせるジュディは
自己実現欲求を満たすために行動しています。

さりとて、自己矛盾を抱えるジュディを
非難できる人間などいるでしょうか。
自分はもっとやりがいのある仕事をやりたいと思う向上心がなければ
与えられた現状に甘んじ、自分が本来持っている可能性を
発揮することは出来ません。
また、保守的な農家の両親に対するジュディの言動にも
農家もしくは田舎全体に対する蔑視が含まれているとはいえ、
おら、こんな村いやだ〜♪と感じた成長過程の若者が
親元から巣立つのはむしろ健全な発想でもあるはずで
ま、だからこそ、ジュディの一挙手一投足が
観客に対して自問自答を促すのです。

人間が抱える問題を表現するのに
擬人化した動物を用いて本作が行なったことの特筆すべき点は
動物の種類を通じて人種や性差、
生活習慣の違いによる住み分けを表現しただけではなく、
それぞれの動物のサイズの違いを忠実に再現しているのが
重要なように思います。
本作には小さなネズミから大きなキリンや象まで登場しますが
本来のサイズの比率で表現された動物たちが
ひとつの社会で暮らすということは、どういうことか。
それはバリアフリーな社会とはどうあるべきかの
ひとつのモデルケース
を示しているように感じます。

行方不明になっていた肉食動物たちを発見したジュディでしたが、
功績を讃えられて出席した記者会見で
原因はわからないが、肉食動物が「野生化」したのは
肉食動物の「DNA」に起因するかもしれない
という
憶測を語ってしまいます。
彼女には悪気がなかったのかもしれませんが、これはいけません。
本作ではしつこく描かれていますが、
人はすぐ短絡的に事象を解釈します。
肉食動物=凶暴に象徴される短絡化は
現実のあらゆる場面で見受けられ、
我が国でも、東日本大震災による福島第一原発の事故を受けて
「福島の農家は人殺し」などというバカまで出現しました。
それ以前にも、部落差別や在日朝鮮人差別などなど。
……ラクなんだよね。ひとくくりにするのって。
それ以上、考えなくていいから。

ただ、根拠のないレッテル貼りが
批判されるのは当然のことだとしても
容姿や言動から受けとる印象が
対象を判断する材料になることは否めません。
本作で言えば、頭に虫がたかっているあいつ
いかにも胡散臭くてだらしないし、
そいつが紹介するヌーディスト・クラブの面々をみて
ジュディが恥じらいとともに驚くのも普通の反応でしょう。
そもそも、アニメーションに限らず、
キャラクター造形というやつは
そのようなパブリック・イメージを基にしているはずで、
本作ではそれを利用しながら否定しているとも言えるけれど、
観客も外見から受け取るイメージを基に
登場人物のキャラクターを把握しているので
やっぱり、なんとも複雑なのです。

市長がライオンであることの意味とか、
笑わずにはいられないナマケモノとか、
ドン・コルリオーネとか、
『アナ雪』自虐ネタとか、
ザッピングしたラジオで流れてる曲が全部ネガティブとか、
小ネタはいっぱいあるけれど、
全部すっとばしますが、
エンターテイメント的どんでん返しとして
十分な効果があると思われる、
ヒツジの副市長が肉食動物「野生化」事件の真犯人だと判明しますが、
これはただのどんでん返しにあらず、
ヒツジは大人しいから悪いことはしないでしょ? という
観客の先入観をも告発
する
なんとも巧妙な構成なのです。
先述したパブリック・イメージを逆手に取った
どんでん返しというのはよくありますが、
本作はパブリック・イメージを持つことそのものに対して
どんでん返しを仕掛けてきています。

本作の製作陣がこのような作品を作った背景には
当然、このような現実に対する危機感があるからで
今後、人間はいかにして「理性」を保つことが出来るのか、
試されているような気がします。





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