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ひそひそ星

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(2015年/日本 100分)
監督・脚本・プロデュース/園子温 プロデューサー/鈴木剛、園いづみ 撮影/山本英夫 照明/小野晃 録音/永口靖 美術/清水剛 編集/伊藤潤一 制作/山内遊 衣装/澤田石和寛
出演/神楽坂恵、遠藤賢司、池田優斗、森康子

概要とあらすじ
園子温監督が2014年に設立したシオンプロダクションの第1作として、自主制作で完成させたモノクロSFドラマ。園監督が1990年に執筆した脚本を、妻である女優・神楽坂恵を主演に迎えて映画化した。類は数度にわたる大災害と失敗を繰り返して衰退の一途にあった。現在、宇宙は機械によって支配され、人工知能を持つロボットが8割を占めるのに対し、人間は2割にまで減少している。アンドロイドの鈴木洋子は、相棒のコンピューターきかい6・7・マーMと共に宇宙船に乗り込み、星々を巡って人間の荷物を届ける宇宙宅配便の仕事をしていた。ある日、洋子は大きな音をたてると人間が死ぬ可能性のある「ひそひそ星」に住む女性に荷物を届けに行くが……。共演にミュージシャンの遠藤賢司、映画「at Home アットホーム」などに出演する子役・池田優斗。(映画.comより



距離と時間と詩的宇宙

2015年は園子温監督のメジャー作品が
たてつづけに公開されましたが
どれもイマイチだったというのが正直なところ。
なんというか、園子温独特の熱量を
感じられないものばかりでした。

で、自ら設立したシオンプロダクションの第1作、
『ひそひそ星』
有り体に言えば、原点回帰の宣言ではないでしょうか。
エログロ満載の過激な暴力描写で評価を得るよりもさらに前の
初期作品と通じるファンタジックでセンチメンタルな
詩人・園子温への原点回帰のように感じます。

人間が全体の2割にまで減少し、AIが支配する宇宙の中で
神社と長屋が合体したような外観の
宇宙船「レンタルナンバーZ」に乗りこみ、
「記憶の宅配便」を仕事とする
アンドロイド・鈴木洋子「マシンナンバー722」(神楽坂恵)
宇宙船は、『2001年宇宙の旅』のHALのような
コクピットに内蔵された「きかい6・7・マーM」という
子ども声のコンピュータによって制御されているもよう。
どうやらこの宇宙船には重力をもたらす機能があるようで
水道の蛇口から水滴がぽたぽたと落ちています。

昭和の安いアパートのような内装の宇宙船
鈴木洋子はお茶を沸かし、掃除をし、ビールを飲んだりして
淡々と日常をやり過ごしています。
鈴木洋子の動力が大量の単3電池だったのには笑いましたが
そのようなSF的整合性には端から無頓着で
過去と未来のディティールが確信的悪ふざけによって撹拌され、
ノスタルジックな異空間を作り出しています。

どうみても人間にしかみえない鈴木洋子が
人間と違うところといえば、
歳をとらず、距離と時間に対する執着がないこと。
たしかに、もしも人間が歳をとらず死にもしないなら、
時間なんてどうでもいいですよね。
人間には死があるから、時間を貴重だと感じるのかもしれません。
だからこそ、人間はテレポーテーションの技術を開発するに到った。
ところが、実際にテレポーテーションが実用化されると
人間たちはあまり使わなかった
……というのが面白い。
「距離と時間に対する憧れは、
 人間にとって心臓のときめきのようなものだろう」

鈴木洋子が想像してみるように
効率化を図り、距離と時間のコスト削減を極限まで進めた結果、
人間は自分たちが大事なものを失ったことに気づいたのでしょう。
では、大事なものとは何か。
本作において、それは「記憶≒思い出」ではないでしょうか。
アンドロイド・鈴木洋子にとっては無価値な荷物には
人間にとってはかけがえのない思い出の徴が入っているのです。
障子(?)越しに人影だけが映る長い廊下
とりわけ家族の思い出をたどる道。
文字通り、影絵で表現される童話のように
楽しさと悲しみが同居しています。
(なんとかコーチという名前の外国人が登場するシーンは
 さっぱりわからなかったけど……)

鈴木洋子が荷物を届けに行く惑星は
どこも人気がなく荒廃しています。
東日本大震災の3年後、
2014年に撮影された福島県富岡町、南相馬、浪江町の街並みは
大量の瓦礫が撤去された後だからこその寂寥感が漂います。
園子温監督は『ヒミズ』『希望の国』でも
福島で撮影していますが
本作における被災地の映像は、現実が虚構を超えた挙げ句に反転し、
現実こそがSFとしかいいようがない不条理な世界観

溢れていました。

長い時間がかかっても荷物を送ろうとする人間の
気持ちがわからなかった鈴木洋子は
徐々に人間に興味を持ち始め……たのかどうか、
空き缶を靴にはさんだり、たばこを吸ってみたりして、
ラストでは、空き缶を宅配便の箱に入れます。
あれは誰に送るつもりでしょうかね……

30デシベル以上の音がすると人間は死んでしまう、という設定が
非常に面白いと思っていたのですが、
その設定が終盤で登場するまえから
ずっと小声でしゃべっているので
あんまり効果的に活かされていなかったのは残念ですが
まあ、そんな細かいことは置いておいて
詩を読むようにして映像にひたったら
親しい仲間と感想を言い合えばいいんじゃないでしょうか。
小声で。ひそひそと。





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