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SRサイタマノラッパー ロードサイドの逃亡者

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(2012年/日本 110分)
監督・脚本・編集/入江悠 撮影/三村和弘
出演/奥野瑛太、駒木根隆介、水澤紳吾、北村昭博、永澤俊矢、ガンビーノ小林、美保純

概要とあらすじ
レコード屋もライブハウスもない田舎町を舞台に、ラッパーを目指す若者たちの奮闘を描いてロングランヒットを記録した青春映画「SR サイタマノラッパー」のシリーズ第3作。仲間と別れ東京に出たマイティは、「極悪鳥」というヒップホップグループに入れてもらおうと努めるが、苦渋を味わった挙句に怒りを爆発させてメンバーの1人に大怪我を負わせてしまう。栃木へ逃亡したマイティは、盗難車の転売など違法行為で商売するグループの一員として働き始め、そのグループが開いた詐欺まがいの音楽イベントでかつての仲間のイックとトムと再会するが……。(映画.comより)



オレには絶対追いつけないYo!

正直に告白すると、「ラップ」とくに「日本語ラップ」
ワタクシ、どうしても好きになることができません。
そのファッション性不良グループ性
歌詞に込められた自己啓発的なメッセージの陳腐さ
そもそも日本語をリズムに乗せることの不自然さ……などなど
その理由を挙げてみたところで、
「ラップ」の魅力に取り憑かれた「ラッパー」たちからすると
さんざん経験してきた「日本語ラップ」に対する一般的な揶揄の
繰り返しにしかならないかもしれないし、
歌謡曲のラップパートなどに安易に流用された挙げ句に
そういったマイナスイメージがついてしまったことには
「ラッパー」たち自身が歯がゆい思いをしているのかもしれません。

しかし、ど〜〜しても「ラップ」を聞いたときの
気恥ずかしさをぬぐい去ることが出来ないのです。
つまり「ラップは○○○という理由でダメ」と否定したいのではなく
良さを理解しようと努めても自分の中に入ってこないんだから、
こればっかりはしょうがない。
ただ、Youtubeで鎮座ドープネスを見たときは
マジヤベェハンパネェと思ったりもしたのですから
「ラップ」を好きになるかもしれない素養はあるはずで
「ラップ」の楽しみ方を教えてくれる「ラッパー」の方がいれば
ぜひお願いしたいものです。
——おまえマザファカ、俺たちの真実ぅ、届かねえのかこの現実ぅ
とかいいながら近づいてくるのはやめてくださいね。
今度こそ「ラップ」を嫌いになりますから。

そんなふうに、根本的なところで
この作品に対する壁を乗り越えなくてはいけない僕ですが、
1作目の『SR サイタマノラッパー』
2作目の『SR サイタマノラッパー2 女子ラッパー/傷だらけのライム』
観ているので、このシリーズの面白さは知っているつもりです。
「ラッパー」を題材にはしているものの
子どもから大人へと成長する中で、否が応にも現実と向き合い、
現実と折り合いを付けるのか、さらに夢を追い求めるのかという
普遍的な通過儀礼の物語でもあるので
誰でも共感しやすいテーマの作品ではあるでしょう。

もともと入江監督がラップを好きだったのかどうか知りませんが
フリースタイルの「ラップ」を題材にすることで
通常のセリフから「ラップ」に切り替わる瞬間に
登場人物が「変身」し、ついに心情を吐露するシーンでの
訴えかける言葉の強度が増す効果があることに加え、
「ラッパー」に少なからず漂っている「滑稽さ」を利用して
コミカルなシーンはよりコミカルに、
シリアスなシーンはより痛々しく
見せることに
成功しているのではないでしょうか。

さらに、地方都市という舞台が
登場人物たちのイケテない感じを補強しているのですが
そこが入江監督の地元であるという単純な動機があるにせよ、
電車に乗れば、東京に小一時間で行けてしまう「北関東」という場所の
地理的な近さ
が「東京=夢の実現」との隔たりを
逆説的に大きなものにしていると言えるのではないでしょうか。
東京から遠く離れた場所に故郷を持つ僕などは
「北関東」の東京に対する嫉妬と羨望が
過剰なものにみえることがあるので、
なおさらそう感じるのかもしれません。
(逆に、東京の「北関東」に対するしょうもない蔑視も
 感じますが)

シリーズ3作目となる『ロードサイドの逃亡者』
埼玉から飛び出してついに東京砂漠のコンクリートジャングルへと
旅立ったマイティ(奥野瑛太)の物語です。
一旗揚げるべく、東京で奮闘するものの現実は甘くなく……
という話に違いはないのですが
マイティは「ラップ」で挫折するわけではありません。
マイティは元来、子分体質なのか
どうみてもチンピラグループにしか見えないラップグループの
パシリとして痛めつけられているだけなのです。
ヒップホップの世界がどうなっているのか知りませんが
少なくとも僕が知っている限りにおいて、
アマチュアバンドの場合は、マネージャーやローディはいても
こういう親分子分みたいな関係性はありません。

自分でライブをブッキングするなりなんなり、
単独で「ラッパー」活動をすることは可能でしょうから
マイティがステージに立たせてもらうために
このチンピラたちに2年間も仕えているのが理解できないのです。
マイティの転落を描くためには
このような設定が必要だったのかもしれませんが
たとえば、音楽事務所の社長にだまされるとか、
自分よりラップの実力が劣るラッパーが
アイドル的人気だけでもてはやされ売れていくとか、
いや、そもそもどうしようもなくラップが下手だったとか
そういった「ラップ」で挫折するところを
観てみたかったという思いもあるのです。
しかし、この作品はそうはなっていないので
いかんせんダメなマイティの自業自得に見えてしまい
感情移入できないのが残念なところ。

MCバトルの決勝戦で八百長を指示されたマイティがみせる
あからさまにうなだれた様子などなど
あまりにもわかりやすい展開と演技が続くにも拘わらず
ついにキレたマイティがムカデ人間(北村昭博)
殴るシーンでは「いけ! もっと殴れ!」と
心の中で叫んでしまうのですから
心を揺さぶるのが巧いのうと認めるほかありません。

しかーし! その後、マイティが逃げるシーンで
追っ手が全然追いつかないのはどういうことか!
すぐに捕まりそうな距離まで
あきらめの悪そうなチンピラたちが追ってきているにも拘わらず
彼女が働く弁当屋にたどり着いたときには
誰一人追ってきていないのには肩すかしをくらいます。
これは、この作品最大の見せ場であろう
イベント会場での長回しシーンでも同様だし、
ラストの留置所らしき場所での監視員たちの態度にしても
マイティに対する周囲の明らかに不自然な猶予を与える行動は
たとえそのほかのシーンがいくら素晴らしくても
看過できない問題点です。

そして、前代未聞といってもいいかもしれない
1カット1シーンでの15分以上にわたる長回しシーン。
もし仮に「作品にどんな効果があるかしらないけど、
とにかくこれがやりたかった」と言われても
認めざるを得ないほどの圧巻のシーンです。
実際に建てられたステージで演奏が行われているイベント会場で、
大勢の客はもちろん、テキ屋の屋台も出店させ、
その中を移動しながら演技する俳優たち……
いったいどれだけの段取りと打ち合わせと下準備が
必要でしょうか。
想像しただけでも気が遠くなりそうです。

ちなみにこんな感じ。
 彼女を残してマイティ車降りる
→屋台の裏を歩く
→下っ端のガキたちから手提げ金庫を奪う
→チンピララッパーたちとぶつかって逃げる
→親分たちと遭遇
→囲まれて殴られる
→下っ端のガキひとり倒す
→屋台に突っ込んでブロッコリーかじる
→車に戻る
→彼女いない
→とうろもこしを持った彼女戻る(ナニヤッテンダバカ!)
→カメラ車の荷台へ
→窓から車内のバックショット
→エンスト。煙出る
→ショーグン聞こえてくる
→マイティ歩いてステージに近づく
→捕まってムカデ人間に殴られる
→警官来る
→彼女も来る
→ショーグンのラップ

……この間、セリフだってありますからね。
もちろん、このシーンにも
先述した「追っ手が全然追いつかない問題」は山ほどあるのですが
現場の緊張感を考えたら、もうそんなことどうでもいいです。
アトラクションのように楽しんじゃいましょう。
Youtubeにこのシーンが終わった直後の
メイキング映像がありました。
みんなが抱き合い、イカツいチンピラ役の俳優が
むせび泣く姿を見ると、ちょっとうらやましい気分になります。

アイデアと熱意があれば、このような低予算の自主制作の作品でも
これだけの映画体験をもたらしてくれるということは
スタッフ、キャスト、エキストラもろもろ全員に
惜しみない拍手を送らざるを得ないと同時に
潤沢な予算がありながら、ゴミ映画を作り続ける連中の
無策と怠惰が浮き彫りになる、そんな作品でした。







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