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ホルテンさんのはじめての冒険

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(原題:O’horten 2007年/ノルウェー 90分)
監督・脚本・製作/ベント・ハーメル 撮影/ジョン・クリスティアン・ロセンルンド 音楽/コーダ 美術/カッリ・ユリアッソン 編集/ポール・ゲンゲンバッハ
出演/ボード・オーベ、ギタ・ナービュ、ビョルン・フローバルグ

概要とあらすじ
「キッチン・ストーリー」「酔いどれ詩人になるまえに」の名匠ベント・ハーメルが、故郷ノルウェーを舞台に定年間近の老人をコミカルに描いた人間賛歌。2008年度アカデミー賞外国語映画賞ノルウェー代表作品。主演は「ヨーロッパ」「デュカネ・小さな潜水夫」のボード・オーベ。ホルテンは規則正しい生活を送る真面目なノルウェー鉄道の運転士だが、定年退職前夜の送別会で予期せぬ事態に見舞われ、最後の出勤日に大遅刻をしてしまう。(映画.comより



人生、まあまあ面白かった。というために

随分前に観て面白かったんだけど、
細部を覚えていないので見直した
『ホルテンさんのはじめての冒険』
で、やっぱり初めて観たときとは感じ方が違っていたりして。

ノルウェー鉄道で40年間勤務するホルテン(ボード・オーベ)
もうすぐ定年退職。
67歳になるホルテンは、どういうわけか独りもんです。
それでも部屋はきれいに整えられているあたり、
彼の几帳面な性格を表していますが、
部屋を出る前、鳥かごに布を被せてから出かけるのは
彼の閉じ込められた状態を示唆しているはずです。

ホルテンの長年の労をねぎらう鉄オタの同僚たちは
ホルテンの定年を讃えて祝おうとするムードですが、
当の本人はさほど感慨深そうではありません。
それどころか、運転する列車が到着した場所にある
なじみのホテルの老女将に対して、
「最後の勤務のあとは飛行機でオスローに戻るんだ」
嬉しそうに語ります。
彼はいたって忠実に鉄道運転士を務めてきましたが、
自分の職に対して執着心がない、というよりも
ここじゃない感を抱いていたのでした。

同僚たちの誘いを断り切れず、
マンションで行なわれる飲み会に
仕方なく参加するつもりだったホルテンは
ドアホンの故障やほほえましい子どもとのやりとりのあと、
定年退職前最後の勤務に遅刻してしまいます。
行方をくらましたホルテンの
「はじめての冒険」のはじまりです。

あちこちにホルテンが彷徨うあいだ、
コミカルなエピソードが連続し、
路面電車、空港(飛行機)、自動車、バイクなど
さまざまな乗り物が登場します。
どれも移動手段で、鉄道も同じく移動手段なのですが
長らく運転士として鉄道に乗っていたホルテンは
目的を持ってどこかへ移動していたわけではなかったのです。
ホルテンはそんな運転士の生活に鬱屈を感じていたからこそ、
分不相応な(?)ヨットを所有していたのではないでしょうか。

昔なじみのタバコ屋の店主が亡くなっていたり、
親しい人がこの世を去り、自分に残されている時間も
そう長くはないことをホルテンは悟ったのかもしれません。
閉店後のジムのプールではしゃぐレズ・カップル
老いたホルテンに反して、人生を謳歌するものの象徴でしょう。

その後、ホルテンが出会ったのが
元外交官だと名乗る老人
アフリカや東南アジアを巡ったと語るその老人の話に
ホルテンは羨望のまなざしで耳を傾けます。
「人生は後悔することばかりだ。
 逆に言うといくつになっても始められる」
と語る老人は
得意だという目隠し運転の最中に心臓発作で死んでしまいます。
(結局、老人が元外交官だというのは嘘で
 発明家だったという老人の弟が外交官で
 老人自身が天才的な発明家だったのでした)

とはいえ、ホルテンが抱えていたトラウマは
鉄道運転士という職業に対する不満ではなく、
元スキー・ジャンパーだった母の期待に応えられなかった
かつての自分自身だったのです。
彼が長年にわたって運転士の仕事をまっとうしたのは
それはそれで讃えられて然るべきものだと思いますが、
彼の生真面目さが臆病さの裏返しだということを
本人が一番よく理解していたのです。
夜のジャンプ台に立ったホルテンは
若き母親の幻に微笑んだあと、
ついにジャンプ台を滑り落ちます。
その後、彼がうまく着地できたのかどうかわかりませんが
このジャンプは臆病だった過去の自分を葬るための
通過儀礼なのではないでしょうか。
(だいぶ歳とってるけど)

どうやらホルテンは、着地に成功したようで
運転士の制服を脱ぎ、晴れ晴れした表情で
ホテルの老女将が待つ駅のホームに降り立ちます。
彼が独りもんだったのも、臆病さゆえなのかもしれません。
ラストカットで連結する列車のクローズ・アップ
若干、下世話だけど、よしとしようよ。

すべて自分の思うがままに人生を楽しむのは
なかなか難しいことですが
最期のときには、人生まあまあ面白かったと思いながら
半笑いで死にたいですね。





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