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きみはいい子

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(2015年/日本 121分)
監督/呉美保 原作/中脇初枝 脚本/高田亮 製作/川村英己 撮影/月永雄太 照明/藤井勇 録音/吉田憲義 美術/井上心平 編集/木村悦子 音楽/田中拓人
出演/高良健吾、尾野真千子、池脇千鶴、高橋和也、喜多道枝、黒川芽以、内田慈、松嶋亮、加部亜門、富田靖子

概要とあらすじ
「そこのみにて光輝く」でモントリオール世界映画祭の最優秀監督賞を受賞した呉美保監督が、2013年本屋大賞で第4位にも選ばれた中脇初枝の同名短編小説集を映画化。5つの短編から成る原作から、「サンタさんの来ない家」「べっぴんさん」「こんにちは、さようなら」という3編を1本の映画にした。真面目だがクラスの問題に正面から向き合えない新米教師や、幼い頃に受けた暴力がトラウマになり、自分の子どもを傷つけてしまう母親など、子どもたちやそれに関わる大人たちが抱える現代社会の問題を通して、人が人を愛することの大切さを描き出す。出演は高良健吾、尾野真千子のほか、「そこのみにて光輝く」に続いての呉監督作となる池脇千鶴、高橋和也ら。(映画.comより



抱きしめたい! 抱きしめられたい!

傑作『そこのみにて光輝く』のスタッフが再集結した
『きみはいい子』。
劇場公開を見逃してDVD鑑賞になった僕が言うのもなんですが
もう、呉美保監督作品は鉄板といってもいいんじゃないでしょうか。
「あたりまえのいい話」をこれ見よがしに語る映画が
ヘドが出るほど大嫌いな僕にとって、
ネグレクト(幼児虐待&育児放棄)、モンスター・ペアレンツ、
認知症、自閉症
などを題材とする本作は
眉に唾するにあまりある題材でしたが、
さすがとしかいいようのない絶妙のバランスで
歯が浮くような、安易で説教臭い美談に納めない
ぐるっと一周まわってシンプルで大切なことを
感じさせてくれました。

娘を虐待している母親、雅美(尾野真千子)
左手にはめた腕時計を袖で隠すカットが繰り返されるので
最初はリストカットの痕があるのかなと思っていたら、
親から虐待を受けていた雅美自身が
タバコの火を押し付けられた痕があったのでした。
この雅美が自分の傷を隠す仕草は
自分の虐待によって娘の体に残っているアザを隠そうとすることと
対を成しています。

彼女は娘を叱るときに
「恥かかせんじゃないわよ!」と怒鳴りますが
それは自分がされたことと自分がしていることの
両方に対して「恥」だと感じていることの現れではないでしょうか。

かたや小学校の新人教師、岡野(高良健吾)
学級崩壊ぎみの生徒達とモンスター・ペアレンツの攻撃によって
疲弊しています。
一人の生徒が授業中におもらししたら
その子の親から
「うちの子が夜尿症だと知ってて、なんで対処できないんですか?
 うちの子は先生が怖いからもらしたんですよ」
なんていう、クソ電話がかかってきます。
そこで、学年主任の女性教師が電話に替わり、
軽やかな対応をみせたときは
おー、さすがに先輩はたいしたモンだと思いましたが、
教室で生徒が暴れても「親と話してからだね」と言ったり、
明らかに虐待が疑われる生徒に対しても
服を脱がしてアザを確認するのは一線を越えるとかいう態度をみると
小学校は単に「お子さまを一時的にお預かりしている施設」にすぎず、
小学校がやっていることは、教育とはほど遠く、
先輩教師はクレーム対応に慣れているだけなのでした。

明るく元気な肝っ玉かーちゃん的な陽子に扮する
池脇千鶴の演技と存在感は素晴らしいのひと言です。
陽子も雅美同様に親から虐待された過去を持っていましたが
明るく大らかに振る舞うことで
自分の親の二の舞を演じまいとしていたのでした。

自宅で岡野が憔悴仕切っていると
甥っ子が抱きついて「がんばって」と励まします
ちょっと間違えば、ゲンナリしてしまいそうなシーン。
ところがなんと、図らずも落涙してしまいました。
ていうか、それはズルいわ。
効き目が半端ないわ。たまらんわ。
岡野の姉(内田慈)がいう
「子どもを可愛がれば世界が平和になるわけ」という言葉は
おそらく真実です。
なにしろ子どもとは、大人のかつての姿なのですから。

ハグの絶大な効き目を体感した岡野は
生徒達に家族の誰かに抱きしめてもらうことを宿題にします。
翌日、生徒達が抱きしめられた感想を話すシーンでは
意図的にドキュメンタリーのようになり、
生の子供達の声と表情が心に響きます。
ていうか本作は、学級崩壊しているシーンでも
子供達の演技がものすごく自然なのは驚きでした。

認知症ぎみのおばあちゃん(喜多道枝)
自閉症の子ども(加部亜門)との対比を
妥当とするかどうかは判断が難しいところですが
欠けている部分を責め立てるのではなく、
魅力的な部分を認めてあげるべき
という観点からは
双方に同じことが言えるような気がします。
自閉症の子に扮する加部亜門は
本当にそういう子を起用したのかなと勘ぐるほど
素晴らしい演技力でした。
『おおかみこどもの雨と雪』で幼い雨の声を務めた子だとか。
 と思ったら、おばあちゃん役の喜多道枝は
 『フランダースの犬』のネロの声やってた!

岡野が出した、家族に抱きしめてもらう宿題を
「絶対やってくる!」と悲愴な決意で帰って行った子どもは
翌日から登校しなくなり、
不安に駆られた岡野がその子の住むボロアパートに駆けていって、
息を切らしながらドアをノックする……という
嫌な余韻を残すラストも絶妙で、
本作を甘いだけのいい話に終わらせないための
覚悟が感じられました。

ラーメンからパスタを食べるシーンへ、
涙から水たまりへと繫ぐ編集の面白さ

照明の色の変化だけで心象を伝えようとする演出は
映画を観る喜びに溢れています。
文句なしの傑作です。





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2016/03/23 (水) 11:13:26 | URL | ジョニーA #E9eLvxbA [ 編集 ]

Re: お願い

> ジョニーAさま
リンクもはっていただいているので問題ありません。
ご連絡ありがとうございます。
またお暇なときに覗いてやってください。

2016/03/23 (水) 13:18:28 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

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