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アニマル・キングダム

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(原題:Animal Kingdom 2010年/オーストラリア 113分)
監督/デビッド・ミショッド 製作/リズ・ワッツ 脚本/デビッド・ミショッド 美術/ジョー・フォード 編集/ルーク・ドゥーラン 音楽/アンソニー・パートス
出演/ベン・メンデルソーン、ジョエル・エドガートン、ガイ・ピアース、ルーク・フォード、ジャッキー・ウィーバー、サリバン・ステイプルトン、ジェームズ・フレッシュビル

概要とあらすじ
実在の犯罪一家をモデルに1人の少年の葛藤と成長を描いたクライムドラマ。オーストラリア、メルボルンに暮らす17歳の少年ジョシュアは、母の死により祖母ジャニーンの家に引き取られるが、その家に住む親族は強盗や麻薬売人などの犯罪者ばかり。真面目だったジョシュアも徐々に犯罪の世界へ引きずり込まれていく。一家を束ねる祖母ジャニーン役を演じたジャッキー・ウィーバーが、2010年・第83回アカデミー助演女優賞にノミネートされた。監督はナタリー・ポートマン製作・主演の「メタルヘッド」で脚本を手がけ、本作が初メガホンのデビッド・ミショッド。(映画.comより



野獣の王国に居場所はあるか。

『奪還者』から遡っての
デビッド・ミショッド監督のデビュー作
『アニマル・キングダム』です。

『奪還者』は、独特の静かな緊張感を湛えた傑作でしたが
本作もまたゆっくりと蟻地獄に呑まれていくような
嫌〜な感じが充満しております。
1988年のメルボルン郊外で起きた警官2名の射殺事件
オーストラリアの犯罪一家ペティンギル家をモデルにしているそうで
長女だけが一家を離れ、ひとり息子を残して
ヘロインの過剰摂取で死んでしまう冒頭のシーンは
事実に基づいているようです。

それにしても、この冒頭シーン。
ソファでぐったりしている母親の横で
テレビのクイズ番組を観ているちょっとオツムの弱そうな
ジョシュア(ジェームズ・フレッシュヴィル)
駆けつけた救急隊員が処置を行なう間も
ちらちらとテレビに目をやるしぐさが
いま起きている事態の深刻さをまったく理解していない危うさを漂わせ、
まー、嫌〜な感じ。

未成年のジョシュア「J」
祖母のスマーフ(ジャッキー・ウィーヴァー)
頼りにすることになるのですが、
この家族+近所の男バズ(ジョエル・エドガートン)
犯罪一家なのです。
麻薬売買や強盗を生業としている
長男ポープ(ベン・メンデルソーン)、
次男クレイグ(サリバン・ステイプルトン)、
三男ダレン(ルーク・フォード)の三兄弟

それぞれに違う個性を持っていることがわかるのが巧みで、
ポープは共謀かつ陰険なリーダー、
クレイグは落ち着きがなくキレやすく、
ダレンは気弱でアニキたちのいいなり。

でも、じつは最も凶悪なのはママこと、スマーフ。
当たり前ですね、息子たちが犯罪に手を染めていても
平気な顔してるんですから。
家族の健康のために野菜ジュースを作ったり、
息子には必ず挨拶のキスを求めたり、その溺愛ぶりは
やっぱり実在の犯罪一家ケイト・バーカー一家をモデルにした
『血まみれギャングママ(1970)』とも重なります。
「辛いときは、誰かに八つ当たりなさい。
 それが我が家のルールよ」

と、完全に間違った教育を施すスマーフママ。

裏で犯罪者と癒着していたり、
銃の携帯を確認せずにターゲットを射殺したりと
オーストラリア警察のほうも腐敗しきっています。
そうして、バズが警察に射殺されると
三兄弟は仕返しに警察官2人を殺害するのですが、
殺された警察官はバズ殺害とは直接関係ないし、
殺害にいたるまでの直情的かつ短絡的な思考の小悪党感
逆に恐ろしいのです。

一応、Jは高校に通っているようですが
学校のようすなどは一切登場せず、
彼に逃げ場がないことを暗に表現しているのではないでしょうか。
とにかくJはいつもトロンとした目をしていて
まったく意志を感じさせません。
あまりにも無垢なJは
一家と警察とのあいだで翻弄され、
ガールフレンドまでポープに殺されてしまいます。

警察のみならず司法も腐敗していて、
警察官殺しの容疑で逮捕されたポープとダレンは
Jの偽の証言によって釈放されます。
一時はレッキー巡査部長(ガイ・ピアース)の手助けにより、
証人保護プログラムで守られていたにも拘わらず、
結局は一家の犯罪に荷担してしまうのです。

ポープとダレンが釈放されたあと、
何事もなかったように暮らす一家。
ポープによってガールフレンドが殺されたことを悟ったJは
ふらりとスマーフの家に現れ、唐突にポープの頭を銃撃します。
Jは初めてはっきりと自分の意志を示したのです。

ずっと宙ぶらりんなまま漂い、環境に翻弄されていたJに
レッキー巡査部長は「居場所を見つけろ」と言いました。
ポープを殺したJは居場所を見つけたでしょうか。
犯罪一家のみならず警察も司法も含めた
「アニマル・キングダム=野獣の王国」。
Jは、「アニマル・キングダム」を脱出できたのか。
それとも「アニマル・キングダム」のなかに
自分の居場所を切り開いたのか……
どちらにせよ、Jの前に
明るい未来だけが待ち受けているとは思えません。

編集も音楽も気持ちいい、傑作です。





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