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殺されたミンジュ

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(原題:One on One 2014年/韓国 122分)
監督・制作総指揮・脚本・撮影・編集/キム・ギドク
出演/マ・ドンソク、キム・ヨンミン、イ・イギョン、チョ・ドンイン、テオ、アン・ジヘ、チョ・ジェリョン、キム・ジュンギ

概要とあらすじ
「嘆きのピエタ」「メビウス」の鬼才キム・ギドクが、少女殺人事件を発端とする暴力の連鎖をスリリングに描いたサスペンス。5月のある晩、ソウル市内の市場で女子高生ミンジュが屈強な男たちに殺害された。しかし事件は誰にも知られないまま闇に葬り去られてしまう。それから1年後、事件に関わった7人の容疑者のうちの1人が、謎の武装集団に拉致される。武装集団は容疑者を拷問して自白を強要。その後も武装集団は変装を繰り返しながら、容疑者たちを1人また1人と拉致していく。そして容疑者たちの証言により、事件の裏に潜んでいた闇が徐々に浮かび上がっていく。謎の集団のリーダー役に「悪いやつら」のマ・ドンソク。「ファイ 悪魔に育てられた少年」のキム・ヨンミンが1人8役に挑んだ。(映画.comより



殺された「民主主義」

キム・ギドク監督の新作『殺されたミンジュ』
「国家が個人に、国民に与える痛み」がテーマだとか。
殺される少女の名前ミンジュ
韓国語で「民主」を意味するんだそうですから
「民主主義」が殺されることから物語が始まるわけですな。
(民主党を「ミンス党」と揶揄して喜んでいるネトウヨは
 今後は「ミンジュ党」に改めたほうが
 いいんじゃないっすかねー棒)

日出づる国でも、民主主義は瀕死の状態ですが
韓国でも同様のようで、
『嘆きのピエタ』に引き続き、
韓国社会が抱える問題を
暴力という側面から捉えんとするキム・ギドク監督は
7人組の謎の集団のメンバーそれぞれに
韓国の歴史的トラウマを象徴させている
んだとか。
さりとて、近年世界的な高まりを見せるテロリズムへの恐怖に
触発された、という一面もあるのではないでしょうか。

前作『メビウス』が無言劇だったのを考えれば
本作は非常に饒舌で、多くのことをセリフで伝えています。
繰り返し登場する「自分は指示に従っただけだ」というセリフが
責任の所在を曖昧にさせ、人間の行動に
確固たる意志や理念が存在しないことを明らかにします。
謎の集団は、ミンジュ殺害に関わった人間を
次々と粛清していきますが、
最後までミンジュが殺されなければならなかった理由は
明かされません。

ミンジュはなにか得体の知れないものの犠牲になったのです。

謎の集団が組織としてグズグズなのも特徴的で
リーダー(マ・ドンソク)だけは明確な目的を持っていたことが
終盤で明らかになりますが
それ以外のメンバーは、単なる憂さ晴らしだったり、
それぞれの理由で世の中に不満を抱いている人間たちばかり。
当然、統率が取れていないのですが
とはいえ、このような政治的イデオロギーや
確たる理念を持たない不満分子が
テロリストへと変貌しているのが現代が抱える問題です。

また、最初に謎の集団のターゲットとなる実行犯を演じた
キム・ヨンミンがなんと、ひとり8役で登場するのも
観客の価値観を混乱させるのに役立っています。
『メビウス』では女優降板という偶発的な理由で
イ・ウヌが一人で二役を演じていましたが
それに味をしめたのか、本作では明らかに作為的です。
なかには、ただホクロを付けるだけで別人になっていたりして
あいつなんだか、こいつなんだか、
よくわからないところもありましたが
立場が変われば、事情も人格も正義も変わることを表現する
一端を担っていたのではないでしょうか。

謎の集団のリーダーによる拷問がエスカレートするうち、
動揺したメンバーたちが弱腰になり、
リーダーに反撥するようになります。
「お前がやっていることは、こいつらと同じじゃないか!
 忍耐を知れ!」
「いつまで耐えるんだ? そうやって利用されてるんだ」
という、やりとり。
どちらのいうことも理解できます。
動揺するメンバーたちの服従に甘んじる心理を端的に表しているのは
同棲相手のDVに怯える女性メンバーではないでしょうか。

彼女は、同棲相手の男(国家)の暴力(圧政)に怯え、
携帯電話の中身までチェック(監視社会)されますが、
なかばレイプ(人権蹂躙)のように犯されながらも
愛しているといわれれば快感を覚え、
金を渡されれば(補助金ばらまき)、頼りにしてしまいます。
そして、「どうせ世の中は変わらないわ」
「我慢してれば、いいこともあるのよ」

言ってのけるのです。
市民デモを嘲笑して満足しているような輩の象徴ですね。

暴力を暴力で制す、というのは
さらなる暴力を産み、無限の暴力ループへと到る
のは
周知の通り。
それでも、悪党を退治するリベンジ・ムービーはなくならないし、
(むしろ増えてるんじゃなかろうか)
合法的な殺人である死刑制度にしたって、
倫理的に死刑廃止を求めるのはよくわかるけれど
出所した加害者が
「あー、とりあえずビール飲んでからソープ行くわ」
なんていう場合、
被害者家族はそれで納得できるのかといえば
そんなに簡単な話ではありませんよね。

意外にも、暴力描写は控えめでしたが
嫌なかんじは存分に発揮されています。
登場人物とエピソードが多いぶん、
観客に考える余地を与えず、
感慨に浸りづらいとは思いましたが、
ま、それも含めてキム・ギドク印の作品です。





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