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ブンミおじさんの森

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(原題:Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives 2010年/イギリス・タイ・ドイツ・フランス・スペイン合作 114分)
監督・脚本/アピチャッポン・ウィーラセタクン 製作/サイモン・フィールド、キース・グリフィス、シャルル・ド・モー、アピチャッポン・ウィーラセタクン 撮影/サヨムプー・ムックディープロム 編集/リー・チャータメーティクン 音響/清水宏一
出演/タナパット・サーイセイマー、ジェンチラー・ポンパス、サックダー・ケァウブアディー、ナッタカーン・アパイウォン

概要とあらすじ
「トロピカル・マラティ」で国際的に高く評価されたタイのアピチャッポン・ウィーラセタクン監督が、カンヌ映画祭でタイ映画に初のパルムドールをもたらしたファンタジー・ドラマ。タイの山間で暮らす余命わずかなブンミは、自分の農園に妻の妹ジェンを呼び寄せる。すると、19年前にこの世を去ったブンミの妻の霊が現れ、さらに行方不明の息子も姿を変えて現われる。やがて、ブンミは彼らとともに深い森へ入っていく。(映画.comより



わからないことだらけ。でも大好き。

録画したものの、
長らくHDの中で眠っていた『ブンミおじさんの森』
ようやく観てみたところ、
タイトルから連想する、
ヒューマニズムに溢れたハートウォーミングな作品だと思いきや、
(それが、なかなか観なかった理由のひとつでもあるが)
静かにぶっとんだ作品で
いまさらながら早く観ればよかったと悔やんでおります。

早朝なのか日没後なのかわからないけれど、
とにかく薄暗い森のなかで
たき火の煙を煙たそうにしていた牛が逃げ出します。
やがて、森の中をうろつく牛を飼い主が捕まえにくるのですが、
その直後、目を赤く光らせる黒い影が登場。
腰を抜かします。
のどかな農村のミニマルな物語が展開されると予想していた矢先に
このファンタジーな飛躍。
もう、大好きです。
すかさず、カルロス・レイガダス監督『闇の後の光(2012)』
思い起こしたのはいうまでもありません。
この時点で、この映画は面白いに違いないと確信しました。

農園を営むブンミおじさんは体調が芳しくなく、
19年前に死んだ妻の妹ジェンを呼び寄せ、
跡を継がないかと切り出します。
ジェンも足が悪く、万全ではないのですが
信頼できる身内はジェンだけだったということでしょうか。

日も暮れて、ブンミおじさんとジェン、ジェンが連れてきた若い男との
3人でテーブルを囲んでいると、
フィックスされた画面の中に
死んだはずの妻がゆっくりと登場。
さらには、行方不明になったカメラ好きの息子が
赤い眼をした毛むくじゃらの「猿の精霊」となって現れるのです。
なんでしょうか、これは。
おそらく本作において、最初は一瞬たじろぐものの、
その霊的存在のふたりを自然に受け入れるグンミやジェンの
態度が重要なのではないでしょうか。
死者が霊として実在するかどうかは問題ではなく、
生きているものが死者を実在しているかのように感じていること
(それは未練といってもいいかもしれないけれど)
シュールな表現なのではないでしょうか。

そうかと思えば、王女のエピソードが登場し、
身分違いの恋に心を引き裂かれています。
王女は自分の外見にコンプレックスがあるようですが、
滝壺のナマズに美しさをたたえられ、
水の中でナマズと結ばれます。

このシーンに宗教的、もしくは政治的意図があるのかどうか
……さっぱりわかりませんん。
わかりませんが、美しい。

自らの死期が近いと悟ったブンミおじさんは
すっかり実体化した死んだ妻と共に
ジェンを引き連れて洞窟へと向かいます。
本作の中では、この洞窟のシーンは
意図するところが比較的受け止めやすく、
洞窟はまさに子宮であって、
ブンミおじさんの胎内回帰願望だといっていいのではないでしょうか。

で、ブンミおじさんは亡くなってしまうのですが
ここからが非常に難解で、
ホテルで香典の金額を数えているジェンとその娘のところに
出家して坊主になった息子が眠れないからと現れ、
袈裟を脱いでシャワーを浴びる
のです。
息子が袈裟を脱いでシャワーを浴びるまでをじっくりと映すのは、
宗教的な役割を捨て去るという意味なのでしょうか。
袈裟からTシャツとジーパンに着替え、
腹ごしらえだと言って、母と妹に外出を促す息子が部屋を出ようとしたとき、
出かけるのは、まるで幽体離脱したかのように
息子と母ジェンだけ
なのです。

これは、なんでしょうか。
ジェンも死期が近く、
出家した息子も違う世界の人間だということでしょうか。
ベッドに座った家族が見つめるテレビでは
どうやらきな臭いニュースばかりが流れています。
この世よりあの世の方がましだということでしょうか。

本作は、えっ?と声を上げるほど
ものすごく唐突に終わります。
でも、だからこそ、
とある人生の一部分を切り取ったに過ぎないという感慨を
もたらします。

本作は、理屈で考えるとわからないことだらけです。
でも、超〜魅力的。
大好きです。





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