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(2006年/日本 104分)
監督・脚本/黒沢清 撮影/芦澤明子 美術/安宅紀史 音楽/はい島邦明 録音/小松将人 照明/市川徳充 編集/高橋信之
出演/役所広司、小西真奈美、伊原剛志、葉月里緒奈、オダギリジョー、加瀬亮、平山広行、奥貫薫、中村育二、野村宏伸

概要とあらすじ
“赤い服”を着た死体の発見に端を発する連続殺人事件。捜査を進める刑事(役所広司)の前にはやがて、耳を劈くような“叫び”とともに“赤い服”を着た幽霊が出現し、執拗に憑きまとい始める。廃墟のような湾岸地帯を舞台に複雑怪奇な世界を描くゴースト・ストーリー。(映画.comより



叫ぶ過去と、癒す過去

黒沢清監督にとって、
赤いワンピースの女性というのは
なにかを象徴するものなのでしょうか。
たぶん、そうなんでしょうね。
『叫』は、同じく赤いワンピースが登場した『CURE』
おなじ発想のもとに作られたような気がしました。
『CURE』では主人公の心理に巣くうのが
サイコパスの素養であり、暴力に対する潜在的な憧れでしたが、
本作ではあからさまに幽霊という姿をした
忌まわしい過去の記憶が、その役割を担っています。

夢オチで始まる本作は
刑事の吉岡(役所広司)が殺人事件を捜査していると、
遺体や現場に次々と自分が関わっている痕跡が見つかり、
まったく身に覚えのない吉岡が
自身の潔白を明らかにするために謎を解明していく、
という流れ。
とはいえ、吉岡本人が自身の潔白にさほど自信がないのが
本作の危うい魅力です。

いつしか、吉岡のまえには
赤いワンピースの女(葉月里緒奈)が現れるようになり、
馬鹿息子を殺してしまう医者の父親(中村育二)
唐突に挿入されるエピソードの
会社社長(野村宏伸)愛人(奥貫薫)へと
狂気が伝染していきます。

車で移動するときの背景が
意図的に違和感のある合成
なのはいつも通りですが
赤いワンピースの女がふわふわと漂ったり、
にわかに近づいてきたりするときの映像的な違和感が
かえって恐怖を引き立てます。

そんなことより、早々に結論めいたことを言ってしまうと
本作に通底するのは
早急すぎる時代の流れに対する批判と
忘れ去られた過去からの
救いを求める「叫び」
ではないでしょうか。

その過去からの「叫び」に反するように
息子を殺した父親も会社社長の愛人も
「なしにしたくなった」と呟きます。
彼らは過去を後悔し、過去に囚われているのです。
過去というものは、時が過ぎれば忘れられてしまうものですが
かつて存在したということまで否定されるいわれはありません。
おわずもがな、過去の蓄積によって現在があるのです。
「あそこ、空き地になったのね。なにが建ってたっけ?」と、
吉岡の恋人、春江(小西真奈美)に聞かれた吉岡が
「覚えてないなぁ」という何気ない会話のような
「無自覚な忘却」に対しても
存在を葬られた過去は嘆き、悲しんでいるのでしょう。

また、たびたび起こる地震は
この世を「なしにする」ための予兆
であって
(東日本大震災を経験した今では繊細な問題ですが)
吉岡が「それを望んでたりしてね」と漏らすように
過去をリセットしたいと欲する終末願望が漂っています。
多用される鏡は(水面も含めて)
自分を客観視する窓にほかならず、
現実と異世界との窓口でもあるはずです。

結果的に、吉岡は半年前に春江を殺していて
その事実を隠蔽するために記憶を隠蔽し、
過去と向き合うことから逃避していたのではないでしょうか。
「わたしは死んだ。だからみんなも死んでください」という
赤いワンピースの女が最後に残すセリフが辛辣ですが、
春江の幽霊は寛容で、むしろ吉岡を癒す存在です。
このふたりの幽霊は、
どちらも忌まわしい過去を象徴しているにもかかわらず、
振る舞いが対照的なのが面白いところ。
わずらわしい存在であり、
かと思えば、安らぎを与える存在でもある
という
過去の二面性が表現されていました。
(とかいいながら、春江の優しさは
 吉岡の記憶が捏造したものかも、という思いも。
 もしくは、あえて優しく振る舞うという高度な嫌がらせか)

ある意味、センチメンタルな印象も受けましたが
怖がらせるのが目的のホラー映画とは一味違う、
まさに黒沢清の映画です。





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