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ザ・チャイルド

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(原題:Quien Puede Matar A Un Nino? 1976年/スペイン 110分)
監督/ナルシソ・イバネッツ・セラドール 脚本/ルイス・ペニャフィエル 撮影/ホセ・ルイス・アルカイネ 音楽/ワルド・デ・ロス・リオス
出演/ルイス・フィアンダー、プルネラ・ランサム

概要とあらすじ
ある島に観光に来た夫婦を無差別に襲う子供達を描いた恐怖映画。77年ファンタスティック国際映画祭批評家大賞受賞作品。製作はマヌエル・ペレス、監督は「象牙色のアイドル」のナルシソ・イバネッツ・セラドール、脚本はルイス・ペニャフィエル、原作はJ・J・プランス、撮影はホセ・ルイス・アルカイネ、音楽はワルド・デ・ロス・リオスが各々担当。出演はルイス・フィアンダー、プルネラ・ランサム、アントニオ・イランソなど。(映画.comより)



マイ・ベスト・トラウマ

子どもの頃にテレビで何度も放送され、
その強烈な印象が大人になってからも
頭から離れなかったという意味で
『ザ・チャイルド』は僕にとって
まさに「トラウマ映画」なのです。

とはいえ、頭にこびりついていたのはあくまで印象のみ。
憶えているのはカットの断片と理不尽なラストシーンだけ。
映画のタイトルすら憶えていないというテイタラク。
ふと思いたち、ダメ元で少ない情報を検索窓に入力すると
事もなく、あっさりヒット。
しかも期せずして、30年記念DVDが発売されるという
神の啓示を受けたようなタイミングに迷わずポチったのでした。
ネットってすごいね。

冒頭で、アウシュビッツや朝鮮戦争など
世界中の戦争・紛争の記録映像が約8分間も流され
犠牲になった子どもたちの映像が映し出されるのですが
なにしろ事実であるだけにこの記録映像が
映画の中でもっともショッキングかもしれません。
これから始まる物語の前振りとして
常に大人の都合で非道い目に合ってきた子どもたちが
印象づけられるのですが
ナルシソ・イバネッツ・セラドール監督はインタビューで
「この記録映像を冒頭に持ってきたのは失敗だった。
 映画の最後にするべきだった。」
と語っています。
いや……冒頭でいいと思いますよ、監督。
ちょっと長いけど。

本編がはじまって映し出されるのは
海水浴を楽しむ人々でごったがえすスペインのビーチ
ピチピチのビキニギャルやブクブクのマダムたちの姿が
冒頭の記録映像の飢餓で死んでいく子どもたちの姿との
皮肉な対比を見せつけます。
そこへ一体の女性の遺体が流れ着き、ビーチは騒然となるのですが
女性の遺体はあくまで不穏な物語を予感させるための
プロローグに過ぎません。

そんなことは露知らず、この地にバカンスにやってきたのは
生物学者のトム(ルイス・フィアンダー)
妊娠中の妻エヴリン(プルネラ・ランサム)
そんな街は祭の真っ最中、花火を打ち上げ、爆竹を鳴らし、
盛り上がっているのですが、ふたりは街の喧噪を避け
トムが以前行ったことのある離島・アルマンソーラ
静かにバカンスを過ごすことにするのです。
船を借りたふたりは離島へ向けて出発するのですが
おそらくは離島から流れてきたと思われる花をすくい上げるシーンが
さきほどのビーチに流れ着いた死体が
離島から流れてきたものだと暗示しています。

離島に到着したふたりは
桟橋で遊ぶ子どもたちを見たものの、
それ以外には街には誰もいないことに気づきます。
しかも慌てて逃げ出したような様子から
ふたりは徐々に不安を感じ始めるのです。
この「生活感はあるのに誰もいない」という不安感が
この作品のもっとも肝の部分であると思われます。
しかもホラー映画でいつも恐怖を煽る暗闇や夜ではなく
灼熱の太陽にさらされた真昼の街であることが
この作品独特の恐怖をかもし出しています。
さきほどの祭にうかれる街の喧噪と離島の静けさ
絶妙な対比となっているのです。
そして、この場所が離島であることが
開放的な空間でありながら、閉じ込められていることを
表しています。

近年では、アルモドバル監督の作品を多く手がける
撮影監督のホセ・ルイス・アルカイネのインタビューによれば
この離島の撮影は、マドリッドに作られたセットと
数カ所の違う場所で撮影されているというから驚きです。
撮影場所によって、光の強度が違えば陰の濃さも変わり、
湿度が違えば光の拡散の仕方の変化が映像に反映されてしまうとのことで
同じ映像になるように違和感なく撮影するためには
大変なご苦労があったご様子。

登場人物が気づかないように
スーパーの陳列棚の陰に倒れている死体をとらえるショットなど
少しずつ謎を小出しにしていく手法が
サスペンスを盛り上げます。
やがてふたりは「子どもたちが大人を襲っている」という
決定的な場面に遭遇するのですが
大人を襲う子どもたちが、まるで遊んでいるように
楽しげな笑顔を振りまいているのが、これまた怖い。
「子どもの笑顔」ってやつは何事にも代え難く、
幸せの象徴のように扱われることが常ですが
見ようによってはこれほどまでに恐ろしい代物になるのです。

恐ろしい子どもが描かれているとはいえ、
『オーメン』のように特定の子ども個人ではなく
ヒッチコックの『鳥』
ジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』
引き合いに出されるように
子どもが集団となって襲ってくるところがこの作品の白眉です。
終盤でトムに襲いかかってくる子どもたちは
まるで「個」のない鳥か虫のようです。

僕がかろうじて記憶に留めていたシーンは
男子たちが集まって若い女性の死体をまさぐっているシーンです。
うーん、やっぱりエロは強し!(オレだからか?)
大人の女性をレイプするのではなく、
死体のおっぱいを触ってニヤニヤしている男子たちの姿は
改めて観ても、ほかの暴力シーンより
なんとも薄気味悪い、いや〜な気分にさせるシーンでした。

そもそも、この離島の子どもたちが
なぜ突然大人たちを襲うようになったのかは語られていません。
途中、まだ大人を襲うつもりのない子どもに対して
リーダー格の子どもがその子の眼を見つめるだけで
洗脳してしまうシーンはオカルトチックなので
最初に大人を襲い始めた子どもたちは
なぜか急にスイッチが入った!みたいなことでしょうか。
ま、この作品の場合は
そのあたりの根拠や動機はあまり気になりません。
それよりも、その「オカルト的能力」によって
エヴリンのお腹にいた赤ちゃん(6か月)まで洗脳され
ついには腹の中からエブリンを殺してしまうのが恐ろしい。

そして僕にとって、もっともトラウマになっているラストシーン
エヴリンが死んでしまい、ひとりになったトムは
島から逃げ出すためにボートに乗り込みますが
子どもたちに追いつかれ、ボートの上で子どもたちと格闘になります。
次から次へと襲いかかる子どもたちは
トムの胸をハサミで突き刺し、足をナイフで刺すのです。
そこへ海から現れたのは巡視艇。
トムは子どもたちを振り払いながら
「こいつらがやったんだ!」と叫びますが
巡視艇から見れば、トムの姿は
子どもを殴り、なぎ倒し、海へ突き落とす非道い大人の男。
子どもが暴力を振るわれていると判断した巡視艇は
トムを射殺するのです。

この理不尽さ。やるせなす。
これが子供心にもっとも強烈で
「えええ〜?? 悪くないのにぃ? 正しいってなに〜?」
という絶望的な気持ちにさせたのです。
思えば僕は、それ以来いまでもずっと
世の理不尽さに対抗してきたような気がします。
(その都度、返り討ちにあってるけど)

このあと、何も知らずに離島に上陸した巡視艇の乗組員は
子どもに銃で殺され、武器を手に入れた子どもたちは
さらに勢力を広げるためにボートに乗って本土へと出発するのです。
……が、いま観ると、このエピローグは蛇足に思えます。
トムが殺されたところで、嫌〜な感じを残しつつ
スパッと終わったほうがよかったような気がします。

原題の「Quien Puede Matar A Un Nino?」
「誰が子どもを殺せるのか?」という意味ですが
問答無用に尊重すべき子どもというアンタッチャブルな存在を
逆手に取った、じわじわと怖い作品です。
近々(2013年4月時点)リメイクが公開されるようですが
この離島の不気味さがどれくらい受け継がれているでしょうか。
ゴア表現の過激さは最近のホラー映画には劣るかも知れませんが
丁寧に織り込まれた伏線と心理描写は
なかなか再現するのが難しいと思われます。
リメイクはまったく違うアプローチのほうが
面白くなるかも知れませんね。
お手並み拝見!





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2014/09/13 (土) 02:10:09 | | # [ 編集 ]

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