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グリーン・インフェルノ

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(原題:The Green Inferno 2013年/アメリカ・チリ合作 101分)
監督・原案/イーライ・ロス 製作/イーライ・ロス、ミゲル・アセンシオ・ジャマス、ニコラス・ロペス、クリストファー・ウッドロウ、モリー・コナーズ 脚本/イーライ・ロス、ギレルモ・アモエド 撮影/アントニオ・クエルチャ 美術/フェルナンド・アレ、ニコラス・トン 編集/エルネスト・ディアス 音楽/マヌエル・リベイロ
出演/ロレンツァ・イッツォ、アリエル・レビ、ダリル・サバラ、カービー・ブリス・ブラントン、スカイ・フェレイラ、マグダ・アパノビッチ、ニコラス・マルティネス、アーロン・バーンズ、イグナシオ・アラマンド、ラモン・ラオ、リチャード・バージ

概要とあらすじ
「ホステル」の鬼才イーライ・ロスが、1981年製作のルッジェロ・デオダート監督作「食人族」をモチーフに、アマゾン奥地で食人族に捕らわれた若者たちの壮絶な運命を残酷描写満載で描いたホラー。森林伐採の不正を暴くためアマゾンを訪れた環境活動家の学生たち。過激な活動が問題となり強制送還されることになるが、帰りの飛行機にエンジントラブルが起こりジャングルに墜落してしまう。なんとか生き延びたものの、そこで彼らを待ち受けていたのは人間を食べる習慣を持つ食人族だった。学生たちは食人族に捕らえられ、次々と餌食になっていく。出演はロス監督の妻である女優ロレンツァ・イッツォ、「アフターショック」のアリエル・レビ。(映画.comより



ちゃんと考えろ! そのあと行動しろ!

映画館にアニメを観に行ったら
本作の予告編が流れて不快だったとクレームをいうやつがいたり、
直接関係ないけど、『食人族』のBru-ray発売時、
「映画を観ていない」と宣言したうえで酷評する
たったひとりのバカが書いたレビュー
によって
Amazonが『食人族』のBru-rayを取り扱いしなくなった
(2015年12月現在も取り扱いはないまま)
なにかと話題の食人映画『グリーン・インフェルノ』

本作は上記のような良識ぶったバカが痛い目に合う映画ですから
それみたことかという意味で
結果的にクレーマーたちはグッジョブなのです。
よくぞ日頃のバカさ加減をナイスタイミングで披露してくれました。
なにしろ、本作の登場人物たちは「#Save Amazonia」
プリントされたTシャツを着て食人族に食われるんですから
最高じゃありませんか。

ジャンル映画が大好きなイーライ・ロス監督
『食人族』をはじめとする食人映画を
リブートさせる目的があったのはいうまでもありませんが
単なる映画オタクの懐古趣味ではなく、
現代の、とくにネット社会にはびこる
「SJW(ソーシャル・ジャスティス・ウォリアー)」の実態に対する
辛辣な皮肉を込めたアップデートになっているところが魅力です。

大学生のジャスティン(ロレンツァ・イッツォ)
(イーライ・ロス監督の奥さん。17歳差か…)
健康保険支給のためにハンガー・ストライキをやっている
ACTという抗議グループのリーダー、
アレハンドロ(アリエル・レビ)
なんとな〜く惹かれています。
なんとな〜く正義感が強かったジャスティンは
大学の講義中に、少数民族による女性の陰核切除の儀式をビデオでみて、
なんとな〜く由々しき問題だと感じていたところ、
「わたしの父は国連で働いてるから、なんとかしてくれるかも!」
と口走ったがために、ACTに誘われます。
これが運の尽き。

「考えるな! 行動しろ!」がスローガンの
ACTのリーダー、アレハンドロは
集会の時点ですでに高慢ちきで、独善的なクズだとわかります。
(どうも、アレハンドロの直接的なモデルになっているのは
 「KONY2012」のリーダーのもよう)
それでも、ACTのメンバーたちは
彼を慕って集まっているようにみえますが
正しいことをやっている我々に
賛同しない(もしくは邪魔をする)やつは悪だ、という
偏狭さが窺え、メンバーたちは
正しいことを行なわない卑怯者だと思われたくないというような
ある種の宗教的集団心理に犯されているように思えます。

健康保険支給を訴えていたと思ったら
今度はアマゾンの森林伐採に抗議するあたりに
節操のなさが表れていますが、
とにかく、森林伐採を止めさせ、
原住民のヤハ族を絶滅から救うために
一行はジャングルの奥地へと向かうのでした。
川を遡るボートの舳先に悠然と足をかけて
船長然としたアレハンドロの自己陶酔感
にいらつきます。
(この川は、ヴェルナー・ヘルツォーク監督の
『アギーレ/神の怒り(1972)』が撮影されたことから
「ポンゴ・デ・アギーレ」と呼ばれているそうで、
 本作は『アギーレ〜』よりもさらに奥地へと遡った!
 というのが、たぶんイーライの自慢)

森林伐採の現場に到着したACTの一行は
捕まらないように自分の体を鎖で重機に縛り付け、
スマホで撮影した映像をネットで生中継して
世界中に窮状を訴えようという段取り。
ところが、ジャスティンの鎖にかける鍵だけがうまくかからない。
武装した警備隊にジャスティンが捕まると、
「そのコは国連職員の娘だぞ! どうする!」
警備隊を脅すアレハンドロ。
ジャスティンはアレハンドロに利用されたのでした。
アレハンドロとその彼女のクソビッチに
はらわたが煮えくりかえります。
そして、
ジャスティンを除いて、作戦成功に浮かれる一行が
乗り込んだセスナ機のエンジンが突如爆発!
ついにキター!と叫びたくなります。
このセスナ機がジャングルに墜落するまでの阿鼻叫喚が
瓶で口を切るやつとか、自分のゲロにまみれるやつとか、
ディティールの細かさが本当に素晴らしい。
せっかく助かったのに、
セスナ機のプロペラで死んじゃうやつとか
嫌がらせ方が見事です。

そして、ついに登場!
真っ赤な体の食人族、ヤハ族!!
捕獲したACTのメンバーをべったべたべったべた触ってきます。
遅れて現れたのは、部族のリーダーと思しき黄色い隻眼の老婆!
(名前はわかりませんが、ここでは仮に
 「夏木マリ」と呼ぶことにします)
夏木マリが神様の授け物じゃ〜と叫んだかと思うと、
まずはいちばん心優しいデブを押さえつけ、
両目をえぐってぺろり。お次はタンをぱくり。
やっぱ、貴重な部位は長老のものなのです。
続いて、腕をすとーん! 足をすとーん! 首をすとーん!
あたかも、「すしざんまい」のマグロのように解体します。
ここはアマゾンのすしざんまいなのです。
アマゾンまいです。

デブを解体したあとは、塩で揉み、
釜で燻製にする調理の行程をきっちりみせる丁寧さ。

利益を独り占めする文明社会の野蛮な資本家どもと違って
夏木マリは村人全員に肉を分配します。
(いくらデブだからって、あんなに肉が取れるとは思えないけど…)
檻の中でその一部始終を見ているメンバーたちの絶望といったら……

隙を見て脱出した女性に一縷の望みを託しつつ、
ヤハ族に与えられた食事を食べていると
ヤハ族の子供達がきゃっきゃいいながら
体に貼って遊んでいる皮のようなものには、
なんと、脱出した女性の体にあったタトゥーが。

恋人の肉を食べていたことに気づいたレズカップルの女性はショックを受け、
割った食器のかけらで自分の喉を切り裂いて自殺してしまいます。
(この動作のすばやいこと)
その女性の死体にマリファナを詰め込んで
ヤハ族をラリパッパさせる作戦は成功したものの、
ラリパッパしたぶん、凶暴になっちゃって、
ハッパ野郎は調理もしてもらえずに生きたままガブリ。
一度は脱出に成功した「GPS…」が口癖のヒゲは蟻責めの憂き目に。

ところで、アレハンドロは
檻の中にいるあいだもますますゲスなクソ野郎で
そもそも森林伐採を阻止するつもりもなく、
現地の建築業者どうしの利権争いに乗じて
名を上げたいだけだったのです。
仲間の肉を平気で平らげた挙げ句、
センズリまでコキはじめます。

アレハンドロをここまで徹底的に最低な人間として描くのには
抗議行動そのものを馬鹿にしているのではなく、
正義を笠に着て自分の虚栄心を満足させようとする
アレハンドロのような人間が最低なんだという意図に
念を押す配慮があるような気がします。

どうも、初対面から
夏木マリに気に入られていた様子のジャスティンは
夏木マリのバージン・チェックにも合格し、
メイクを施されて、あわや陰核を切除される寸前、
フルートのネックレスで懐柔した子どもに助けられて脱出。
当然、アレハンドロなんぞ置き去りです。
ところが、新しくやってきた森林伐採業者の
武装した警備隊とヤハ族の戦闘に遭遇。
銃撃を受けて、ジャスティンの足元に倒れ込んだ
部隊長らしき黄色いマッチョ
「We need you」と漏らすのでした。
(↑僕の勘違いでなければ英語だったはず。
 間違ってたら、食べてもいいよ♡)

結果的に、生還したジャスティンが
森林伐採を阻止することになったのは皮肉です。
国連で事情を説明する彼女は
自分以外のメンバーは全員飛行機事故で死んだ、
ヤハ族は優しい人たちで、私を助けてくれた
、と証言します。
おそらくジャスティンは
ヤハ族が食人族だったと伝えれば、
文明社会の価値観によって「野蛮」認定され、
迫害を受けることを危惧したのでしょう。
ヤハ族は、彼らの社会の中の常識に従って生活しているだけ
そもそもなにも問題はないのです。
他国を侵略して人間を食べ尽くすわけでもありません。
かたや、他人の土地に勝手に侵入して土地を荒らし、
抵抗すれば銃殺する文明社会の人間たち。
どちらが野蛮でしょうか。

さて、もっともおぞましい殺され方をして
スカッとさせてくれるはずのアレハンドロは
どうなったかというと……
なんと、衛星写真に生きてる姿が映ってるという
アレハンドロの妹からの電話が!

なんだよ! 超もやもやするよ!

ジャスティンが戻った大学のキャンパスでは
ACTのあとを引き継いだ(?)抗議グループが
アレハンドロの顔がプリントされたTシャツを着ていて
正義のヒーロー扱いされているし、
アレハンドロが生きているというのは
これでSJWが全滅するわけじゃないよ、ということでしょうか。
やれやれ。

『食人族』監督のルッジェロ・デオダートに捧げられた本作は
ただのオマージュに留まらず、
(繰り返しになりますが)
命の次に大事というくらいにスマホに頼り切りだったり、
エンドクレジットに
スタッフのツイッターアカウントがあったり、
現代社会に対する皮肉がたっぷり。
文句なしの大大大傑作です。

(ところで、ジャスティンの部屋の壁に貼ってあったポスターは
 『ベティ・ブルー』?)





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