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ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲

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(原題:Feher Isten 2014年/ハンガリー・ドイツ・スウェーデン合作 119分)
監督/コーネル・ムンドルッツォ 脚本/カタ・ウェーベル、コーネル・ムンドルッツォ、ビクトリア・ペトラニー
撮影/マルツェッル・レーブ 美術/マールトン・アーグ 衣装/ザビーネ・グライニグ 編集/ダービド・ヤンチョー 音楽/アシャー・ゴールドシュミット 動物コーディネーター/テレサ・アン・ミラー テクニカルアドバイザー/テレサ・アン・ミラー
出演/ジョーフィア・プショッタ、シャーンドル・ジョーテール、ラースロー・ガールフィ、リリ・ホルバート、サボルチ・トゥーロチー、リリ・モノリ

概要とあらすじ
ハンガリーの首都ブタペストを舞台に、雑種犬だけに重税を課す悪法によって飼い主の少女と引き離された犬ハーゲンと、人間に虐げられ保護施設に入れられた犬たちが起こす反乱を描いた異色ドラマ。雑種犬に重税が課されるようになった街。13歳の少女リリは、可愛がっていた愛犬ハーゲンを父親に捨てられてしまい、必死でハーゲンを探す。一方、安住の地を求めて街中をさまよっていたハーゲンは、やがて人間に虐げられてきた保護施設の犬たちを従え、人間たちに反乱を起こす。第67回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、同部門グランプリとパルムドッグ賞をダブル受賞した。(映画.comより



意外にもB級ちっくな動物スリラー

犬版『猿の惑星』とか、犬版ヒッチコックの『鳥』とかいわれて
とにかく犬が凄いと話題の
『ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲』

「ホワイト・ゴッド」というタイトルを考えれば、
白い狂犬と黒人調教師の闘いを描いた
サミュエル・フラー監督『ホワイト・ドッグ/魔犬(1981)』から
インスパイヤされた部分が多いのかもしれません。
(凶暴化した犬のシルエットがす〜っと通り過ぎるような
 オマージュ的演出もちらほら)
わざわざ「ホワイト・ゴッド」=「白い神様」というのですから
単に人間 vs 犬という構図ではなく、
白人至上主義によってその他の人種が虐げられている人間社会の現状を
揶揄しているのは間違いないでしょう。

序盤で登場する人間たち(とくに大人)は
ことごとく残忍で理不尽な存在
として描かれます。
公園でリリ(ジョーフィア・プショッタ)
愛犬のハーゲンとじゃれているシーンのすぐあとに、
リリの父ダニエル(シャーンドル・ジョーテール)
検査のために牛を解体しているシーンをみせるのは
人間が動物に対するときの基本的な高慢さを
えげつないやり方で示しています。

新しい旦那だか愛人だかと
オーストラリアに旅行(仕事?)で行く母親も
十分身勝手ですが、
その間、リリとハーゲンが預けられることになった
父親のダニエルもかなり嫌なやつとして描かれています。
ま、ダニエルがリリを預かることになったその日から
雑種犬(ハーゲンは雑種)は課税の対象になるとかいう問題が
突然湧き出てくるのは、
かなり強引な話運びだとは思いますが。
(そんな突拍子もない法律が施行されることくらい、
 ダニエルも、ましてや元ヨメは報道で知ってるだろうに)

実の娘に対する態度とは思えないくらいに
ガミガミうるさいダニエルは
とくにハーゲンに対して冷淡ですが、
このあと捨てられることになるハーゲンとリリは
同じ境遇にあります。
その後、ハーゲンは人間たちに翻弄され、
思わぬ調教を施されることになりますが、
リリが置かれている状況もハーゲンと同じなのではないでしょうか。

娘を元夫に預けて、やっかいばらいした母親は
新しい男と旅行に行くし、
しぶしぶリリを預かったダニエルは面倒くさそうだし、
まるでリリは扱いにくいペットのようです。
さしずめ父親ダニエルは、ペットの世話に手を焼くオーナーで
リリが所属する楽団の指導者がブリーダー
といったところか。
大人たちは、自分たちが扱いやすいように
子どもを飼い慣らそうとしています。
後半、リリとダニエルは和解しますが
ダニエルの「(リリを)子ども扱いしてた」という告白が
他者(動物含め)への敬意が欠けていたことを表していて、
おそらくそれは本作のテーマのはずです。

捨てられたハーゲンが
野良犬の仲間と出会う→保健所の捕獲から逃げる→
ホームレスに助けられたかと思いきや闘犬として売られる→
闘犬として調教され、凶暴さを身につける……

という居たたまれない経験を辿る一方、
父親への反撥もあり、淡い恋もあり、
子どもから大人の女性へと変貌を遂げつつあるリリが辿る過程は
あきらかにハーゲンとリリの成長を
同列のものとして対比させているのでしょう。

噂通り、たしかに、犬は凄かった。
演技といっていいかどうか、わかりませんが
ハーゲンの動きは演出されているようにしか見えなかったし、
大量の犬が街を失踪する光景は痛快かつ凄まじいものでした。
出演した犬たちのほとんどは保護施設から集められたそうですが
いかにも統率されているかのように見える集団行動は
見応え十分です。

ビジュアルとか予告映像とかを観る限りでは
少女と犬の冒険を描いているような
わりといいかんじの(←なにこれ)映画に思われそうですが
本作はかなりの割合で動物パニック映画だし、
動物スリラーです。
とはいえ、スリラーとしては物足りなさもあるけど。
(どっちなの?)

ハーゲン率いる雑種犬軍団が街を暴れ回るようになって
かつて非道い目に合わされた人間たちに復讐していくさまは
痛快ではあるものの、
封鎖された街のディストピア感がいまいちで、
どの程度大変なことになっているのか、
伝わりづらい感じはありました。

で、ラスト。
闘犬として調教されて凶暴になってしまったハーゲンと
リリが対峙します。

かつてのようにはリリの言うことを聞かないハーゲン。
ハーゲンはわたしのこと、忘れちゃったの?

すっかり変わり果てた表情のハーゲンをみて
これではハーゲンに襲われるかもしれないと思ったリリが
得意のトランペットでメロディーを吹くと、あら不思議。
急に大人しくなったハーゲンは
フセの態度をとるのです。
……って、特撮映画の怪獣かよ!!
笛とか歌声とかで大人しくなる怪獣、いままでにいっぱいあったろ!
(具体的には出てこないけど)
正直、このラストにはズッコケました。
かろうじて、ハーゲンがリリの吹くトランペットで
大人しくなるのはわからないでもないが、
そのほか大量の犬たちも一緒になって大人しくなるのは
なんでだよ。
これじゃ、リリが奏でるトランペットの音色には
動物を癒す力がある……
みたいなことになっちゃうじゃんね。

というわけで、
意外にもB級ちっくなスリラーでして
そのつもりで楽しむのがよろしいかと。
でも、犬たちはやっぱ凄いっすよ。





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