" />

裸の島

ill591.jpg



(1960年/日本 98分)
監督・脚本/新藤兼人 製作/新藤兼人、松浦栄策 撮影/黒田清巳 美術/新藤兼人 音楽/林光 録音/丸山国衛 照明/永井俊一 編集/榎寿雄
出演/乙羽信子、殿山泰司、田中伸二、堀本正

概要とあらすじ
瀬戸内海の孤島に往む夫婦と子供たちの自然との戦いを記録したもので、「第五福竜丸」に続いて新藤兼人が自らの脚本を監督したセリフなしの映画。撮影は「らくがき黒板」の黒田清巳。十三人のスタッフで作られた。瀬戸内海の一孤島。周囲約五〇〇メートル。この島に中年の夫婦と二人の子供が生活している。孤島の土地はやせているが、夫婦の県命な努力で、なぎさから頂上まで耕されている。春は麦をとり、夏はさつま芋をとって暮す生活である。島には水がない。畑へやる水も飲む水も、遥るかにみえる大きな島からテンマ船でタゴに入れて運ぶのだ…(映画.comより抜粋



水を運び、畑を耕して、飯を食う

モスクワ国際映画祭グランプリ(1961)を受賞しているせいか
ロシアでは『裸の島』はよく知られた作品だそうで、
本作と同様にセリフがない『草原の実験』
アレクサンドル・コット監督も参考にしたとか。

新藤兼人らが設立した近代映画協会は赤字続きで
解散記念作品として本作が作られたそうですが、
さまざまな賞を受賞して、興行的にも大当たり。
近代映画協会も解散を逃れたと言うことで
まさに「ファイナル・ファンタジー」な作品なのです。

それにしても、冒頭で空撮によって映し出される島の映像が
とにかく凄い。
外周を見渡せるほど小さな島の
波打ち際から頂上までの急斜面はびっしりと段々畑で覆われています。
舞台となったのは、瀬戸内海にある宿禰島(すくねじま)。
本来は無人島だそうですが
まさに猫の額ほどの土地をギリギリまで活用しようという
貪欲な生命力が伝わってきます。
1994年に主演の乙羽信子が亡くなったときには
この島で遺骨の一部が散骨されたんだとか。
新藤監督と乙羽信子にとって
それほど思い出深い場所だったんでしょう。

孤島で暮らしているのは、
殿山泰司と乙羽信子の夫婦と二人の子ども。
一応、役名があるようですが、
セリフがないので作品中ではわかりません。
殿山と乙羽は夜が明けきる前から
手こぎ船を繰り出して少し大きな別の島へと渡り、
水を汲んだ樽を天秤棒で担いで持って帰るのです。
島に帰って、岩場に船を止めたあとは、
島の急斜面をそろりそろりと水を運ぶふたり。
これは、みるからにキツい重労働です。
殿山と乙羽のふたりも、
ほんとうに水を担いでいるようにみえましたが
とにかく、この生水は
飲料水であり、生活水であり、畑の作物に与える水でもあって
生活に欠かせないものなのですが、
船を漕ぎ、水を汲み、天秤棒で担いで急斜面を昇る、
という作業を一日のうちに何度も繰り返す
さまを
カメラは淡々と捉え続けます。
痩せた畑に撒かれた水が、
一瞬のうちに土に吸い込まれていくのをみると
徒労感が倍増します。

あまりにも過酷な日々をみていると
もうちょっとほかに暮らす場所はないのかと思ったりしますが
彼らにとって生きる場所はこの島しかないのです。
とはいえ、この島も彼ら夫婦の持ち物ではなく、
収穫した小麦を地代として治めたりしています。

何度も何度も、水を担いで急斜面を行き来するうちに
乙羽の表情に明らかな疲労が漂い始め、
ついに倒れ込んで水をこぼしてしまうと
駆け寄ってきた殿山は乙羽を殴る
のでした。

この家族の暮らしぶりを最下層の生活……なんていうと、
自分をとっても高慢な人間に感じますが
たとえ現代の都市生活者であったとしても
日々の労働というのは、
このような徒労感を伴うものなのかもしれません。
自分が毎日繰り返している仕事が、
一体何の役にたつのかわからず、
それでも続けるしかないという無常感

多くの人が同じように感じている気がします。

それでも、
秋祭りに出かけたり、子どもが釣り上げた鯛を売りに行って
つかのまのレジャーを楽しんだり、
過酷な日々の中にも
ちょっとした喜びや楽しみがあるのです。
まだ幼い二人の子供達も、両親の大変さは重々理解しているようで
少しでも役にたちたいと思っているようすが
けなげです。
子どもって、結構そういうことを
敏感に感じとっているものですよね。
また、子どもたちを遊びに連れて行ったりしているとき、
じつは親も、日常から解放されて
それなりに楽しんでいるものでしょう。

ところが、長男が突然高熱にうなされ、
そのまま他界してしまいます。

長男の葬儀のあと、また同じように繰り返される畑の水やりの最中に
悲しみにくれる乙羽がキレてしまい、
樽の水をぶちまけて、作物を引っこ抜いて、嗚咽します。

乙羽の気持ちを十分理解している殿山が
だまって水やりを続けていると、
気を取り直した乙羽はそれに従うのでした。

たとえ、最愛の家族が亡くなったとしても
生き残った者は、生き続けるしかないのです。
たとえ過酷だったとしても、
生き続けることが人生だとすれば
とにかく、水を運び、畑を耕して、
飯を食わなければならないのでしょう。





にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑お気に召したらクリックしていただけますと、もんどりうって喜びます。
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

のほうず
映画が好きで観るのはいいが、
かたっぱしから忘れていくので
オツムのリハビリ的ブログ。
******************
当ブログの文章・画像およびイラストの無断転載を禁じます。引用される場合は、出典の表記と当ブログへのリンクを設定してください。

FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

お気に召したら
クリックお願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

スポンサードリンク

↓過去の記事はこちらから!↓

検索フォーム

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

カウンタ