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岸辺の旅

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(2015年/日本・フランス合作 128分)
監督/黒沢清 原作/湯本香樹実 脚本/宇治田隆史、黒沢清 製作/畠中達郎、和崎信哉、百武弘二、水口昌彦、山本浩、佐々木史朗 撮影/芦澤明子 照明/永田英則、飯村浩史 V.E/鏡原圭吾 録音/松本昇和 美術/安宅紀史 編集/今井剛 音楽/大友良英、江藤直子
出演/深津絵里、浅野忠信、小松政夫、村岡希美、奥貫薫、赤堀雅秋、蒼井優、首藤康之、柄本明

概要とあらすじ
湯本香樹実による同名小説を黒沢清監督が映画化し、第68回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門で監督賞を受賞。深津絵里と浅野忠信が主役となる夫婦を演じた。3年前に夫の優介が失踪した妻の瑞希は、その喪失感を経て、ようやくピアノを人に教える仕事を再開した。ある日、突然帰ってきた優介は「俺、死んだよ」と瑞希に告げる。「一緒に来ないか、きれいな場所があるんだ」との優介の言葉に瑞希は2人で旅に出る。それは優介が失踪からの3年間にお世話になった人々を訪ねていく旅だった。旅の中でお互いの深い愛を改めて感じていく2人だったが、瑞希が優介に永遠の別れを伝える時は刻一刻と近づいていた。(映画.comより



死者と生者が共存する「はっきりしない」世界

死んだ恋人や家族が幽霊となって蘇る映画なんて
枚挙に暇がありませんが
大抵はセンチメンタルなお涙頂戴ムービーだったりします。
黒沢清監督の『岸辺の旅』にも
センチメンタルなところがないワケじゃありませんが
そこは、ほれ。やっぱり黒沢清。
不思議〜な映画に仕上がっています。

ピアノの家庭教師をしている瑞希(深津絵里)
台所で白玉団子をつくっていると
突然、3年前に失踪し、死んだはずの
夫・優介(浅野忠信)が現れます。
瞬時に優介が幽霊だと悟った瑞希は一瞬たじろぐものの、
作ったばかりの白玉団子を食べさせるのです。
この、ちょっとびっくりしたけど、おかえりなさい的な感じが
死者と生者が抵抗なく共存する不思議な感覚を呼び起こします。
優介はどうも自殺したようですが、
亡骸は海の底で蟹に食われてるというし、
運転免許は燃やしちゃったというし、
突然自分を見失うような病気を患っていたようでもあるし、
いまいち死因がハッキリわかりませんでした。
ちなみに本作の幽霊は土足で家にあがるようです。

優介が失踪中の間に立ち寄った場所を巡る旅は
夫婦が絆を取り戻すロマンチックな多幸感に溢れています。
幽霊である優介の姿が見えるのは
瑞希が霊感が強いからではなく、
誰にでも見えて普通に会話もできるというのが
本作の独特なところ。
小松政夫が演じる新聞屋のおっちゃんだけは
 じつは……という演出がありましたが。どうかひとつ!)

駅員に切符の買い方を聞いたり、
坊主と出会って、成仏させられるかも!というシーンなど
結構コミカルな場面もありましたが、
カーテンや木々の枝を揺らす風や、
部屋の中央にあるどうにも邪魔な太い柱が画面を遮ったりして、
幽霊がこの世に存在することのまがまがしさ
漂っています。
とくに照明の変化による演出が絶妙なサスペンスで
中華料理屋の女将が幼くして死んだ妹のことを独白するシーンで
すーっと灯りが落ちて暗くなるのには
ぞっとします。

息子を亡くした農家の主人(柄本明)
息子の妻である義理の娘・薫(奥貫薫)に覇気がないからと
「薫は死んでるんじゃないかと思ってるんだ」といいます。
それでも一緒に暮らしているという不思議。
かつてこの村で塾の講師だった優介が
アインシュタインの相対性理論を講義しているなかで
「全てのものは無と無の組合せでできている」
というようなことを言いますが
死者と生者も同様に無であるなら
同時に存在していても不思議ではないのでしょう、か。

幽霊より怖かったのが
優介の不倫相手だった朋子(蒼井優)
かつての優介の職場であり、朋子が働く病院で対峙する
瑞希との静かな女の闘いが、あー怖い。
瑞希が
「優介のことがよくわかるようになりました。
 夫婦ってそんなものですよ」

てなことを言って、自分こそが正妻アピールをすると
「知ってますよ。私も結婚してますから。
 いまお腹に赤ちゃんがいますし。
 このまま死ぬまで平凡な人生を過ごすんでしょうね。
 ま、それが一番でしょうけど」

てなことを言って、自分のほうが一枚上だ反撃。
あー怖い。

死者がこの世に現れるのは
やっぱりなにかしらの未練があるから
という、
ひとつの提示は示されていたように思いますが
優介が瑞希の前から姿を消したのは
魂が浄化されたからとか、成仏したからとかと結論づけるのは
少なくとも本作においては早計な気がします。
なにしろ、優介と旅をするあいだに
瑞希がたどり着いた考えは
「はっきりさせなくてもいいこともある」
なのですから。

恐がりなくせにホラー映画が好きで
にもかかわらず霊を信じていない僕ですが
もしも霊界のような世界が存在するのなら
ないよりはあったほうがいいよねぇ。そりゃ。

↓すっかり感動ムービーに仕上がってる予告編




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