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散歩する惑星

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(原題:Sanger Fran Andra Vaningen 2000年/スウェーデン・フランス合作 98分)
監督・脚本/ロイ・アンダーソン プロデューサー/フィリップ・ボバー 撮影/イストヴァン・ボルバス、イェスパー・クレーヴェンオース 音楽/ベニー・アンダーソン
出演/ラース・ノルド、シュテファン・ラーソン、ルチオ・ブチーナ、ハッセ・ソーデルホルム、トルビョーン・ファルトロム

概要とあらすじ
カンヌの国際広告祭で8度のグランプリに輝いているCF界の巨匠、ロイ・アンダーソンの監督作。どこかの惑星で展開するブラックでシュールな出来事の数々を、CGを一切使わずローテクを駆使して(?)アナログ感たっぷり描く。2000年のカンヌ国際映画祭で審査員特別賞を受賞。とある惑星のとある場所。主人公は、保険金目当てに自分の経営する家具屋に火を付けたが、炎と共にすべてを失った男カール。彼にはふたりの息子がいるが、長男トーマスは優しい性格ゆえに心を病んでしまい、今は誰とも話せなくなってしまった…(映画.comより抜粋



かつては詩を書いていたのに!

『さよなら、人類』を観てから
ロイ・アンダーソン監督
「リビング・トリロジー」と呼ばれる三部作を
遡って観ているわたくし。
今回は『散歩する惑星』です。

映画全体のルックは、『さよなら、人類』と同様に
さまざまなエピソードのスケッチが
関連があるようなないような、微妙な一貫性を保ちつつ、
独特の世界観を表現しています。
日焼けマシンに入ったまま、
700人のリストラを通達する経営者(?)のシーン
で始まる本作は
ロイ・アンダーソン監督らしいシニカルな笑いに溢れながらも
拝金主義や盲目的な信仰などに対する
痛烈な批判が前面に出ています。

いつまでも続く渋滞は人生に逃げ場がないことを暗喩しているし、
その反面、我先に逃げ出そうと空港に押し寄せた人々は
あまりにも大量の荷物(=財産)のせいで
やはり身動きが取れなくなっています。

本筋とは関係のないような、
手品の胴体切断に名乗り出た男が
本当にノコギリで腹を切られてしまうシークエンス

やっぱりおかしくて笑っちゃうのですが
この世にはタネも仕掛けもなく、
マジックもミラクルもないということを
言い表しているような気がします。

表面的な滑稽さとは裏腹に
登場人物たちが置かれた状況は、
リストラ、店舗の火事(放火)、精神病の息子などなど
理不尽で苦しい状況ばかりです。
「慈しむべきは座らせる者、痛みと恥に悩む者……」という
詩が繰り返し登場しますが、
これはペルーの詩人セサル・バジェホ
『ふたつの星の間でつまずいて』の一節で
監督曰く、普通の人々への賛歌を綴ったものだそうです。

自分が経営する家具屋に火を放った男は
「ささやかな幸せを感じたかっただけなのに!」
人生の理不尽を嘆き、
タクシーの運転手をしていて客の愚痴を聞くうちに
精神を病んでしまった長男に対しては
「(長男は)かつては詩を書いていたのに!」
繰り返し声を荒げます。
これは詩に代表されるような、
人生をいくらかは豊かにしてくれる(であろう)ものへの憧憬と
現代における他者への想像力の欠如に対する反撥
なのではないでしょうか。
精神を病んで抜け殻のようになった長男は
いまや詩を謳うことなく、絶望の中で沈黙する
現代社会のメタファなのでしょう。
かたや、100歳を迎えてなお「ゲーリング!」と叫ぶ
ナチの残党の生き残りのような人物も描かれます。

キリスト教に対する批判も辛らつで
信仰がまったく救いにならないことを表現しています。
「EXPO 2000」という催しで、
キリストの磔像で大儲けを企んでいる男の商品のひとつが不良品で
十字架から外れて、ぶらぶらと左右に揺れるキリストの姿は
何をかいわんや。
結局、その男の目論見は外れ、
大量のキリスト像はゴミの山に投げ捨てられます。
キリストとて商品であり、不要となれば捨てられるのです。

さらには突然、少女を取り囲む年寄りたちが現れ、
本を読めだの、経験を積めだのと言ったあと、
崖に設置された飛び降り台に目隠しして連れて行かれた少女は
おそらく、何かのいけにえとして崖から突き落とされます。
この集団が具体的に何を指しているのか、
このようなことが実際にあったのかどうか、
僕にはわかりませんが、
その集団の一員が大量のゲロを吐いたあと、
「もっと他にいい方法はないのか?」というあたり、
まったくなんの役にも立たない儀式のための儀式を繰り返し、
とりあえず安堵している人々に対する
痛烈な批判が窺えます。

「Studio 24」という、ロイ・アンダーソン監督自前の
スタジオで撮影された本作は全てがセットです。
遠近感を強調したカットも多くありましたが、
背景は書き割りやミニチュアだというから驚きです。
「CGを一切使わずローテクを駆使して」という
紹介のされ方をしているようですが
あの〜、アナログだからといってローテクというわけではないし、
本作の書き割りの技術なんて、むしろハイテクですよ。





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