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トスカーナの贋作

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(原題:Copie Conforme 2010年/フランス・イタリア合作 106分)
監督・脚本/アッバス・キアロスタミ 製作/マラン・カルミッツ、ナタナエル・カルミッツ、シャルル・ジリベール、アンジェロ・バルバガッロ 脚色/マスメ・ラヒジ  撮影/ルカ・ビガッツィ 美術/ジャンカルロ・バージリ、ルドヴィカ・フェラーリオ 編集/バフマン・キアロスタミ
出演/ジュリエット・ビノシュ、ウィリアム・シメル、ジャン=クロード・カリエール、アガット・ナタンソン、ジャンナ・ジャンケッティ、アドリアン・ムーア、アンジェロ・バルバガッロ、アンドレア・ラウレンツィ、フィリッポ・トロジャーノ、マニュエラ・バルシメッリ

概要とあらすじ
「友だちのうちはどこ?」「桜桃の味」などで知られる名匠アッバス・キアロスタミ監督が、初めて母国イランを離れて撮影したラブストーリー。イタリアの南トスカーナ地方の小さな村を訪れたイギリス人作家が、ギャラリーを経営するフランス人女性に出会う。2人はあるカフェの女主人に夫婦と勘違いされたことをきっかけに、まるで長年連れ添った夫婦であるかのように振る舞いはじめる。主演のジュリエット・ビノシュは、本作でカンヌ映画祭主演女優賞を受賞した。(映画.comより



偽物は本物の映し鏡

アッバス・キアロスタミ監督作品は
この『トスカーナの贋作』の次の作品、
『ライク・サムワン・イン・ラブ(2012)』しか
見たことがないのですが
なんだかこの2作は、とてもよく似た作品でした。
キアロスタミ監督に一貫する特徴なのかわかりませんが
つねに移動しながら物語が展開するのも同じだし、
『ライク・サムワン・イン・ラブ』のデリヘル嬢と客は
かりそめの擬似恋愛関係でしょう。

タイトルから、
芸術の価値についての映画かなと予想していて
始まりはその通りだったのですが
徐々に恋愛もしくは結婚生活における
男女の考え方の違いについての会話劇
になっていきます。
著名な作家ジェームズ(ウィリアム・シメル)が出版した
『贋作 本物より美しき贋作を』という本の内容が
いまいち気に入らないジュリエット・ビノシュ(役名は「彼女」)
講演会でジェームズに電話番号を渡し、
ふたりは逢うことに。
ここから長いドライブシーンが始まって
その後カフェに立ち寄るまで移動をし続けながらの
会話が続きます。
フロントガラスに反射する町並みや
窓ガラスや鏡に映り込んだ人物
を際だたせているのが
特徴的です。

ふたりは、作家と一読者という関係のはずですが
とくにジュリエットのほうが妙に攻撃的です。
カフェの女主人に夫婦だと思われたことから
あたかも本当の夫婦のような関係へと変化していくのですが
ジュリエットが手を焼いているわがまま息子が
「サインをもらうときになんで名字を言わないの?」
言っていたのを思い出すと、
この2人はかつて本当の夫婦で
ジュリエットの息子の父親はジェームズなんじゃないかと
勘ぐり始めるのですが
ドライブ中の会話で、
ジェームズはジュリエットの妹の名前を知らなかったし、
やはり本来は他人同士なのでしょう。

ところが、徐々にふたりは
男もしくは夫の代表として語り、
女もしくは妻(そして母)の代表として振る舞う
ようになるのです。
ふたりが擬似夫婦を意識して演じているのか曖昧ですが
「5年前のあのとき、いねむりしたよな?」なんて
昔話まで持ち出すので
どうみても倦怠期を迎えた夫婦の痴話げんかにしか
見えなくなってきます。
本当は夫婦じゃないのに。

このふたりの倒錯的な関係が
「本物より美しき贋作を」というテーマに立ち返らせます。
芸術において、夫婦生活において、人生において、
本物か偽物かということが重要ではなくなり、
肝心なのはものの見方であって、
満足できるかどうかが価値を決めるのです。
価値を生むといってもいいかもしれません。
でも、それは決して妥協ではないと思うのですが。

正直、僕は女心がわからない男なので
ヒステリックかつロマンチックなジュリエットの態度には
へとへとになります。
ジェームズが
「わかったわかった、僕が悪いよ!
 このレストランに入ったのも、ワインが不味いのも
 全部僕のせいだ!」

と、キレる気持ちがよ〜くわかります。
少なくとも男からみれば、
ジュリエットの言動はカフェの女主人の達観とはほど遠く、
ずっと不満をもらし、求めてばかりです。

オリジナルに対する崇拝は非常に根深く、
難しい問題ですが
たとえコピーだったとしても、それをいいと思っているなら
それでいいんじゃないのかなと思います。
あとになってそれがオリジナルでないとわかったときに
落胆するとしたら、
それはたんに経済的損失を感じているからであって、
そのものが本来持つ価値とは無関係な気がします。

さりとて、恋愛や夫婦生活においては……
さらに、難しいなぁ……





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