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隠された記憶

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(原題:Cache 2005年/フランス 119分)
監督・脚本/ミヒャエル・ハネケ 製作/ファイト・ハイドゥシュカ 撮影/クリスチャン・ベルジェ 編集/ミシェル・ハドゥスー、ナディン・ミュズ
出演/ダニエル・オートゥイユ、ジュリエット・ビノシュ、モーリス・ベニシュー、アニー・ジラルド、ベルナール・ル・コク、ワリッド・アフキール、レスター・マクドンスキ

概要とあらすじ
「ファニーゲーム」「ピアニスト」などで知られるミヒャエル・ハネケ監督の衝撃のサスペンス。テレビ局の人気キャスターは美しい妻と息子との幸せな生活を営んでいたが、ある日、送り主不明のビデオテープが届く。そこには彼の私生活を撮影した映像が収録されていた。その後もテープは何度も届き、届くたびによりプライベートな内容へとエスカレートしていく。主演は「八日目」「愛と宿命の泉」のダニエル・オートゥイユ。カンヌ国際映画祭監督賞受賞。(映画.comより



「やましさ」は決して赦さない

世界でもっとも意地の悪い映画監督(であろう)
ミヒャエル・ハネケ『隠された記憶』です。

ある日突然、書評をするテレビ番組の人気司会、
ジョルジュ(ダニエル・オートゥイユ)の家の外観を撮影した
VHSのテープが送られてきます。
おそらく据え置きされたカメラで撮られた映像は
ただジョルジュの家の外観を映しているだけで
何も起こらないのですが
妻のアン(ジュリエット・ビノシュ)とともに
気持ち悪いなあなんて言っていると
次に送られてきたVHSは
子供が書いたような絵が添えられていて
それはひとが口から血(のようなもの)を吐いている絵だったのでした。

人気司会者のジョルジュは、それなりに裕福そうで
テレビで顔も知られていることから
金目当てのゆすりの可能性も考えられますが、
そんなことはどうでもよく、
ジョルジュを演じるダニエル・オートゥイユは
僕の中ではいつまでたっても
『ザ・カンニング[IQ=0](1980)』という
心底くだらないコメディ映画のイメージがあるので
どうせバカなんだろうな〜と思ってしまうのです。

……ていう話のほうがどうでもいいことでしたが、
やがて、ジョルジュの実家を撮影したVHSが送られてきて
そこで暮らす病気がちな母親のことが心配になったジョルジュは
母の元を訪れるのですが
この時点で、ジョルジュにはVHSを送りつけてくる犯人に対して
思い当たるフシがあるようす。
それは、かつてジョルジュが幼かったころにいた
使用人の子供マジッド(モーリス・ベニシュー)だったのです。
アルジェリア人のマジッドは、ジョルジュの両親によって
養子になることが決まっていましたが
それが気に入らなかったジョルジュは
マジッドがナタで自分を襲ってきたという嘘をついて
養子縁組を破断させ、
マジッドは施設送りになった過去があったのでした。

次に送られてきたVHSによって
数十年ぶりに対面するジョルジュとマジッド。
ジョルジュは、マジッドがVHSを送りつけてくる犯人だと考えて
激高していますが
マジッドは落ち着いたようすでそれを否定します。
どうもマジッドは犯人ではなさそうですが
後日、その部屋でのふたりのやりとりを撮影したVHS
送られてくるのです。
なおさら、マジッドが犯人だと思うジョルジュ。

このあたりまでくると、
ジョルジュが過去に犯した罪によるやましさ
囚われていることがわかってきます。
VHSが送られてくることは、確かに気味が悪いとはいえ、
ジョルジュはこれといった実害を受けているわけではないのに
恐れおののき、激高するのです。
それは自身も認める罪をチクチクといじられることに対する憤りであり、
自己防衛でもあるのではないでしょうか。

さらには、ジョルジュの「やましさ」が
彼の個人的な過去についての話に留まらないことは
容易に想像がつきます。
どうやらそれは、フランスが植民地支配していた
アルジェリアの独立にまつわるアルジェリア戦争(1961)
象徴しているようなのです。
フランスはアルジェリアに対して、差別や虐殺を繰り返したそうですが
Wikipediaによると
「フランス政府は忘却政策を行い
 アルジェリア戦争に関する報道を規制して
 過去の汚点として忘れ去ろうとした。 」
そうで
まさにジョルジュの姿と重なるのです。

マジッドはアルジェリア人だし、
ジョルジュの息子の部屋にはジダン(アルジェリア移民)のポスター
ありました。
さらには、テレビのニュースでパレスチナの紛争が映し出され、
このようなことはフランスに限ったことではなく、
世界中で起きていることを示唆します。

ジョルジュを自宅に呼び出し、
「これを見せたくて呼んだ」といって
突然カミソリで首を切って死んでしまうマジョッドには驚きましたが
結局、誰がVHSを送りつけた犯人なのかは
わからずじまいで終わります。
別のところに真犯人がいるのかもしれないし、
神の視点およびメッセージととれなくもなさそうですが
僕には、ジョルジュのトラウマが結んだ映像のように感じられました。
忘れようとしつつもそのことに固執し、
記憶の中で過去を監視しているのは
ジョルジュ本人なのではないでしょうか。

まったく気がつきませんでしたが
学校から下校する子どもたちを長々と映したラストシーンで
ジョルジュの息子とマジッドの息子が談笑している
そうです。
ハネケがこうあるべき未来を提示したのでしょうか。

ハネケ監督にしては、
思いのほかわかりやすくメッセージが込められた作品でした。
(そうでもないか)





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