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気球クラブ、その後

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(2006年/日本 93分)
監督・脚本/園子温 エグゼクティブプロデューサー/小曽根太 プロデューサー/富田敏家 撮影/谷川創平 編集/伊藤潤一
出演/深水元基、川村ゆきえ、長谷川朝晴、永作博美、西山繭子、いしだ壱成、与座嘉秋、大田恭臣、ペ・ジョンミョン、江口のりこ、安藤玉恵、松尾政寿

概要とあらすじ
「紀子の食卓」の鬼才・園子温が、荒井由美の名曲「翳りゆく部屋」をモチーフに描いた青春ドラマ。かつて二郎が所属していたサークル「気球クラブ・うわの空」には、様々な目的を持った若者たちが参加していた。5年後、ガールフレンドのみどりと微妙な関係を続けていた二郎のもとに、気球クラブのリーダーだった村上の訃報が入る。村上を偲ぶため、バラバラになっていた仲間たちが再び集まることになり……。主演は「HAZARD」の深水元基。(映画.comより



園センチメンタル子温

園子温監督による血が出ない作品、
『気球クラブ、その後』は青春群像劇です。
園子温監督に過激さを期待している人は
拍子抜けするかもしれませんが
園子温監督は、本作のようなセンチメンタルな甘さも
つねに兼ね備えていると思っております。

ビデオカメラで撮影された画は自主制作臭がプンプンし、
映像には深みがまったく感じられません。
あまりの安っぽさからくる違和感に慣れるまで
しばらく時間を必要とします。
切り返しのカット数が多く、
それがまた余計に安っぽく見えてしまいます。

ま、とにかく。
「うわの空」という名前の熱気球サークルのリーダーだった
村上(長谷川朝晴)がどうやらバイク事故で死んだという話が
かつてのサークルのメンバーたちの間に伝わり、
サークル解散から5年経って、それぞれの生活をしていたメンバーたちが
久しぶりに集まろうということで物語が始まります。
『桐島、部活やめるってよ』へと連なる『ゴドーを待ちながら』形式の
中心人物が不在の物語です。
さしずめ、『村上さん、死んだってよ』

熱気球サークルに加入して間もない北二郎を演じるのは
園作品常連の深水元基ですが、
あんまり演技が上手いとは思えない出演者たちの中で
異彩を放っているのは村上の恋人美津子を演じる永作博美です。
ビデオ映像の陳腐さを忘れさせるほど
彼女だけは繊細で逞しい演技を見せてくれます。
ちなみに、北二郎(もしくは北史郎)とミツコという役名は
園作品では繰り返し登場
します。
本作はあきらかに園子温の自我を投影した作品なのです。

村上は、熱気球に熱心な男ですが
サークルのメンバーたちは基本的にちゃらんぽらんで
集まって騒ぐのが楽しいだけのひとたち。
村上の訃報を知らされたときの彼らがみな
飯を作っていたり、セックスをしていたりするのは
無為な日常を表現しているのでしょう。
元メンバーたちがほとんど交友がないにもかかわらず、
携帯の電話番号とメールのアドレスだけは繫がっているのも
ツールに支配された希薄なコミュニケーションに対する揶揄でしょう。
終盤で、輪になった元メンバーたちは
ひとりひとり携帯メモリーを削除します。

熱気球サークルの熱気球とは
「若者の夢」のメタファーといっていいでしょう。
夢に向かって本気で挑もうとしているのは村上だけで
他のメンバーたちは夢を追い求める雰囲気に乗って
社会人になる前のモラトリアムを楽しんでいるに過ぎません。
熱気球と村上は、多くの人が経験したであろう、
開けた未来しか存在しないと思っていた、
かつての青春へのノスタルジーです。
また、おそらくは園監督自身の「東京ガガガ」に対する
郷愁と反省
が深く投影されているように思えます。

熱気球が夢や希望のメタファーだとすれば、
「地上」は、文字通り地に足のついた日常生活のメタファーです。
常に達観しているような美津子が
熱気球に乗っているときに村上から結婚指輪を渡され、
「地上で渡して」と返すのが象徴的です。
美津子は夢見るばかりの村上を覚めた目で見つつ、
それでも村上を見捨てない理解者でもあるのです。
母性の固まりといってしまってもいいかもしれません。

だからといって本作は、
「おめーら、気球のこと忘れたのかよ! 気球で飛ばなきゃダメじゃんよ!
 なにをちんたらつまんねえ仕事してんだよ!」
というような、夢破れて平々凡々とした日常をやり過ごす人々を
馬鹿にしたり、はやし立てたりするのではなく、
それはそれとして、すべての人生を肯定しているような姿勢
感じられます。

今となっては、すっかり夢を実現したようにみえる園子温ですが
おそらく、本作に描かれているような鬱屈を
いまだに持ち続けているように思えてなりません。







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