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ウエスト・オブ・メンフィス 自由への闘い

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(原題:WEST OF MEMPHIS 2012年/アメリカ・ニュージーランド 148分)
監督/エイミー・バーグ 製作/エイミー・バーグ 、フラン・ウォルシュ、ピーター・ジャクソン、ダミアン・エコールズ、ロリ・デイヴィス 脚本/エイミー・バーグ、ビリー・マクミリン 撮影/マリス・アルベルチ、ローナン・キリーン 編集/ビリー・マクミリン 音楽/ニック・ケイヴ、ウォーレン・エリス

概要とあらすじ
1993年、ウエスト・メンフィスで3人の男児が殺害される事件が発生、地元の少年3人が逮捕される。犯行の異様さから犯人は悪魔崇拝者との噂が広まる中、容疑者たちがヘヴィメタルのファンだったことが大きな理由として喧伝され、3人は裁判で有罪となる。ところが、のちに捜査のずさんな実態が次々と明らかとなる。3人に対する支援の輪は次第に人気ミュージシャンやハリウッド・スターなどを巻き込んで大きな広がりとなっていく。やがて「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのピーター・ジャクソン監督&フランシス・ウォルシュ夫妻が事件の真相解明と3人の救済に乗り出し、ついに冤罪の決定的証拠を見つけ出すが…(allcinemaより抜粋



生き埋めにされた真実

「ウエスト・メンフィス3=WM3」を描いた
『デビルズ・ノット(2013)』は再現ドラマのようでしたが
『ウエスト・オブ・メンフィス 自由への闘い』
ガチのドキュメンタリー。
製作年は観る順番が逆になってしまったけれど
『デビルズ・ノット』で事件の全体を把握できていたので
登場人物の人間関係に混乱することもなく、
かえってこの順番でよかったように思います。

ドキュメンタリーなので、本作に登場するのは
当然本人たちばかり。
『デビルズ・ノット』のキャスティングと演出が
かなり実物に忠実だったことがわかります。
そして、何度も繰り返して登場するのは
実際の事件現場と殺された少年たちの死体の写真。
やはり『デビルズ・ノット』そのままに
全裸で手首と足首を繫がれた少年たちの姿は
かなりショッキングです。

本作は、事件の発端から裁判の行方、
ピーター・ジャクソン監督フランシス・ウォルシュ監督
WM3の救済に乗り出して独自に捜査を展開し、
逮捕から18年の時を経て
「アンフォード・プリー」というメチャクチャな司法取引によって
WM3=ダミアン・エコールズ、ジェイソン・ボールドウィン、
ジェシー・ミスケリー・Jrが釈放されるまでと、
その後を描いていますが
WM3に有罪判決が下されるまでの物語だった
『デビルズ・ノット』では描かれなかった事実
多く含まれています。

悪魔主義者でヘビメタ好きという理由で
犯人だと疑われたWM3に対して
警察はなんと彼らのアリバイ捜査すらしていなかったこと。
のちに、ジェシーは何キロも離れた場所のパーティーに
参加していたという証言も出てくるのですが
どれほど警察が最初からWM3を犯人と決めつけ、
犯人に仕立て上げようとしていたかがわかり、
腹立たしくも恐ろしいばかりです。

裁判中、
「ダミアンから悪魔集会に誘われたことがある」と証言していた女性は
WM3が投獄されて長い時間が経ってから
「あれは嘘だった」といまさら告白。
(悪魔集会に誘われたのが本当だったとしても
 真犯人だという証拠にはならないけど)
別の男は「ダミアンは少年の性器を切断して血を啜ったと話してた」
証言していたにもかかわらず、
「オレはヤク中でいつもラリってて、
 なんであんなことを言ったのかわからない」
という始末。

軽度の知的障害者のジェシーが
警察のあからさまな誘導尋問によって自白したことを除けば
アリバイや物的証拠、現場の遺留品など
事件に直接関わる証拠がまったく登場しない裁判で
検察が持ち出したのはサバイバル・ナイフ
ところがそのナイフは事件の1年以上前に湖に捨てられたもの
あきらかな捏造なのです。
さらには頼りない法医学者が参考人として呼び出され、
死体の傷はこのナイフによるものだと断定してしまいます。
ところが、本作が取材した別の法医学者によれば
「あの死体写真を見ればあんなナイフじゃないことは一目でわかる。
 あの傷は死んだあとにできたもので
 殺人者はわざわざ死体を傷つけたりしない」

と、失笑しつつ全面否定。

じゃあ、体中にあるあの傷はなんなんだというと……ワニガメ!!
殺された少年たちが捨てられた沼地には
凶暴かつそこそこ巨大なワニガメやカミツキガメが
生息していた
のです。
傷跡の形はワニガメのツメの形と一致し、
少年たちの性器が切り取られていたのも
突起物のため、ワニガメなどが噛み付きやすいという事実も。
もちろん、これとて推理の範疇をでませんが
サバイバル・ナイフ説と比較して、
どちらが信憑性があるかといわれれば、当然ワニガメ説でしょう。

WM3を支援する有志たちの独自の調査によって
続々と新事実が出てきても、再審請求を受理しない裁判所。
当時の裁判長デヴィッド・バーネットは、
「あの事件に関わらなければ人生は楽だった。
 たまたまわたしが担当しただけだったのに、
 18年もあの事件に振り回されたんだ」
という、
むしろ迷惑しているのはこっちだといわんばかりの見事なゲス発言。
このゲスが再審請求を拒み続けていたのですが
上院議員に出馬することになり、晴れて再審されることになったのです。
ただ、その結果は
無罪を主張しながら有罪答弁を行なうことで執行猶予を受けるという
「アンフォード・プリー」という司法取引だったのです。

釈然としない結果ではあるけれど
とにかく18年ぶりに解放されたWM3。
ところが、本作の取材というか捜査はこれだけでは終わらず、
真犯人の捜索へと及びます。
そこで疑惑が浮上してきたのが
スティーブの継父テリー・ホッブスです。
テリーに疑惑の目が向けられる根拠は以下の通り。
・殺害現場に残っていた毛髪のDNAがテリーのDNAと一致
・事件直前に被害者少年たちと一緒にいた目撃証言あり
・事件直前と事件後の間に服を着替えているという証言あり
・スティーブがいつも持ち歩いていたナイフがテリーの道具箱にあった
・たびたびDVを行ない、スティーブの妹に肉体関係を迫った過去がある
・とくにスティーブに対してはベルトで殴るなど過剰に厳しかった
・テリーの家族は、テリーが少年たちを殺したことを知っていて
 それを「ホッブス家の秘密」と呼んでいた


これらのことを問い詰められても、
のらりくらりと質問をかわすテリー。
もう、まっくろなのです。
それでも今後テリーを追求する手立てがないという、
真実が生き埋めにされたような気色悪い状況が現実のもよう。

『デビルズ・ノット』で、
事件直後にレストランのトイレに駆け込んだ
泥まみれの黒人はどうなった? という疑問は残るものの、
ひとつずつ事実を検証していく構成はスリリングでした。
真犯人が特定されて、
WM3が完全無罪を証明できることはないのかもしれないけれど
彼らには、残りの人生で
失われた青春を取り戻してもらいたいものです。





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