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人生スイッチ

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(原題:Relatos salvajes 2014年/アルゼンチン・スペイン合作 122分)
監督・脚本/ダミアン・ジフロン 製作/ペドロ・アルモドバル、アグスティン・アルモドバル 撮影/ハヴィエル・ジュリア 編集/ダミアン・ジフロン 音楽/グスターボ・サンタオラヤ
出演/リカルド・ダリン、リタ・コルテセ、ダリオ・グランディネッティ、フリエタ・ジルベルベルグ、レオナルド・スバラーリャ、オスカル・マルチネス、エリカ・リバス

概要とあらすじ
スペインの名匠ペドロ・アルモドバルがプロデューサーを務めたブラックコメディ。2014年・第67回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品され、第87回アカデミー賞ではアルゼンチン映画として外国語映画賞にもノミネートされた。人生において決して押してはならないスイッチを押してしまったがために、絶望的な不運の連鎖に巻き込まれていく男女6人のエピソードを姿を描いた。監督はこれが長編映画3作目となるアルゼンチンの新鋭ダミアン・ジフロン。出演は、アカデミー外国語映画賞受賞作「瞳の奥の秘密」のリカルド・ダリンほか。(映画.comより



現代人を観察する「人間サファリパーク」

僕は観ていませんが、
ある日、届けられた謎のボタンを押すと
どっかの誰かが死ぬけど、大金がもらえるよ〜という
『運命のボタン(2009)』ていう映画がありましたね。
『人生スイッチ』という邦題がつけられた本作は
「人生において
 決して押してはならないスイッチを押してしまったがために、
 絶望的な不運の連鎖に巻き込まれていく男女6人のエピソード」
という惹句が使われていますが
スイッチのようなものは登場しません。
「きっかけ」という意味でのスイッチがあるのは当たり前だけど
転換点を表すようなシンボリックなものは
一切登場しません。
スペイン語の原題『Relatos salvajes』
「野性の物語」とか「けだもののお話」とかいった意味。
タイトルバックで野生動物の写真が使われているのは
そのためでしょう。
それなら、「野性の王国」とかでどうよ。
「人間サファリパーク」とかさ。どうよ。

本作は、6本のエピソードからなるオムニバス形式です。
それぞれのエピソードにはタイトルがついていますが
このタイトルの字幕がまた、どれもビミョーなセンスのものばかり。
まあ、いいけどさー。

●おかえし[Pasternak(パステルナーク)]
仕事先へ向かうために飛行機に乗ったファッション・モデルが
たまたま隣り合わせたクラシック音楽の評論家と話しているうちに、
モデルの元彼「パステルナーク」が
評論家の酷評によって音楽家の道を経たれていたことが判明。
奇遇ですねぇなんつってると、
「そのパステルナークって、わたしの教え子だったわ」
「オレは同級生だった」
「うちの店で働いてたぞ」
と、つぎつぎとパステルナークを知る人物が登場。
そしてその誰もがパステルナークを馬鹿にしているのです。
「ちょっと待て。この中でパステルナークを知ってる人は?」と
評論家が訪ねるとなんと乗客全員が
パステルナークを知っていて、さらにはその全員が
かつてパステルナークを傷つけたことがあった
のです。
パステルナークはこの飛行機の乗務員で
彼は復讐のために怨みを持つ面々を集めたのでした。
全員を同じ便に乗せるなんて離れ業すぎるだろ!
なんて突っ込むのは野暮でしょうな。
コクピットを占拠したパステルナークに
「悪いのは君じゃない! 君の両親だ!」と説得を試みるものの、
そんなことはパステルナークは先刻承知。
庭でくつろぐ両親目がけて、飛行機は突っ込んでいくのです。
パステルナークがちらっと後ろ姿しかみせないのが
ニクい。

●おもてなし[Las ratas(ねずみ)]
レストランで働くウエイトレスは
どしゃぶりの雨の中を店内に駆け込んできた客の顔を見て
その男がかつて父親を自殺に追い込んだ挙げ句に
母親に言い寄ってきた高利貸しだとわかり、動揺。
どうやら政界進出を目論んでいるその男は
これでもかというくらいに高慢ちきなゲス野郎。
その事実を知ったレストランの女将(?)のおばちゃんは
「そんなやつ、猫いらずで殺しチャイナ」とイケイケ。
戸惑うウエイトレスの目を盗んで
おばちゃんが作った猫いらず入りのポテトフライを
ばくばく食べるゲス野郎。でもなぜか効き目が現れないのです。
そこにゲス野郎の息子が合流。
良心の呵責に耐えかねたウエイトレスが
ポテトフライを下げようとしてゲス野郎と揉めているところを
おばちゃんがベス野郎を包丁でメッタ刺し。
……おばちゃんが自暴自棄な凶行へと走る感じが
いまいちだったかなー。

●エンスト[El más fuerte(最強の)]
とろとろ走る車を追い越し際に捨て台詞を吐いたら……
という『激突』チックな一本。
「トロいんだよ! 田舎もんが!」って
さっそうと走り去った先で車が止まっちゃうわけですが
……エンストじゃなくて、パンクなんだよな。
なんで「エンスト」にしたんでしょうか。
「エンスト」ググっちゃったじゃねえかよ。
仮に「エンスト」が、不本意に車が止まってしまうことの
すべてを意味すると拡大解釈しても、
パンクで車を止めるのってただの停車じゃないの?
まあ、いいけどよ。
パンクした車に追いついた田舎もんは
フロントガラスを割るわ、ウンコするわ、
本当に腹立たしい最悪のキチガイなのですが
こういうつまらない意地の張り合いで
後に引けなくなる感じにはリアリティがあります。
銃が登場しないのは、アメリカ映画じゃない、いいところ。
ふたりのバトルの展開もアイデア満載で魅力的です。
すべてが終わってしまったあとで駆け付けた警察の
「痴情のもつれかな…。」というセリフで
爆笑しているやつが映画館にいましたが
その直後に映される、
抱きついたまま丸焦げになったふたりの死体がオチなんだから
フリで笑ってどうする。

●ヒーローになるために[Bombita(ボンビータ)]
あの「爆破されたビルがきれいに崩れ落ちる」ってやつの
腕のいいビル解体職人が
娘の誕生日にケーキを買って帰ろうと
車を路上駐車していたらレッカーされて、
不本意にも罰金をとられたうえに、娘の誕生パーティーにも間に合わず、
陸運局の窓口の無慈悲かつ事務的な対応にブチギレ。
会社は解雇されるわ、妻から離婚を迫られるわ、
なにもかもが悪い方向へ転がっていった解体職人は
ついに爆薬の専門家の腕を振るって反撃に出るのでした。
ま、テロですけど。
もっとも社会的なメッセージが強く感じられる本篇は
めんどくさいから罰金払っておしまいにしよ、みたいな
結果的に社会の悪しきシステムに懐柔されてしまう人々の態度を揶揄し、
解体職人はいちやくヒーローとなるのですが
彼はヒーローになりたくて行為に至ったわけではないはずなので
「ヒーローになるために」というタイトルはどうなのよ。

●愚息[La propuesta(提案)]
妊婦を轢き逃げした息子をかばうために
事実をもみ消し、使用人に罪を被せようとする
お金持ちのお話。
弁護士やら検事やら使用人やらを巻き込んでいくうちに
足元を見られたお金持ちに対する請求額が増え続け……と、
いろんな人間の醜さが凝縮されております。
最後には、被害者の妊婦の夫によって
使用人が殺されてしまいますが
これ、お金持ち連中にしては願ったり叶ったりなわけで
いや〜な気分になります。
それにしても「愚息」って、ねぇ……
確かに息子が真犯人なんだけど、
そこじゃないと思うんだ、この話の面白さは。

●ハッピーウエディング
[Hasta que la muerte nos separe(死ぬまで一緒)]

結婚式でひゃーひゃー言ってる新郎新婦。
ところが、新郎が浮気相手を結婚式に招待していたことに
新婦が気づいて、大騒ぎになります。
おろおろと自暴自棄になっていた新婦が
屋上で休憩中の料理人と出会ってから気を取り直すのですが
そこからの人が変わったような傍若無人ぶりには
ちょっと違和感があるけれど、痛快ではあります。

全エピソードに通底するのは
現代人が溜め込んだ負の感情といったところでしょうか。
ま、驚くほど斬新!とは思わないけれど
気の利いた小話、といった感じです。
かの松本人志大先生が今後も映画を撮るとしたら
こういうオムニバス形式が合うんじゃないの?
なんてことを、考えながら観ていました。
大きなお世話ですか? そうですか。





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