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ぼくを探しに

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(原題:Attila Marcel 2013年/フランス 106分)
監督・脚本/シルバン・ショメ 製作/クリス・ボルズリ、クローディー・オサール 撮影/アントワーヌ・ロッシュ 美術/カルロス・コンティ 音楽/シルバン・ショメ、フランク・モンバレット
出演/ギョーム・グイ、アンヌ・ル・ニ、ベルナデット・ラフォン、エレーヌ・バンサン、ルイス・レゴ、ファニー・トゥーロン、キー・カイング、ジャン=クロード・ドレフュス、ビンセント・デナード、シリル・クトン

概要とあらすじ
アカデミー長編アニメーション賞を受賞した「ベルヴィル・ランデブー」や、ジャック・タチの遺稿をもとに映画化した「イリュージョニスト」などで知られるフランスのアニメーション作家シルバン・ショメが、初めて手がけた実写長編作。「ベルヴィル・ランデブー」のサントラで使われた楽曲「アッティラ・マルセル」に着想を得て、仏文豪マルセル・プルーストの小説「失われた時を求めて」のエッセンスも織り交ぜながら、孤独な主人公が不思議な女性との出会いから失われた過去の記憶が呼び覚まされ、少しずつ変化していく人生を描いたファンタジックな物語。幼い頃に両親を亡くし、そのショックで言葉を話すことができなくなったポールは、伯母のもとで世界一のピアニストになるよう育てられる。友だちもいない孤独な人生を歩み、大人になったポールは、ある日、同じアパルトマンに住む謎めいた女性マダム・プルーストと出会う。彼女のいれたハーブティーを飲むと、固く閉ざされた心の奥底の記憶が呼び覚まされていき、ポールの人生に変化が訪れる。(映画.comより



失われた時を求めて……

まずは最初にいってしまおう。
ひゃぁ〜、もう、いい! 最高だ!

『イリュージョニスト』もまあまあよかったけれど
とにかく『ベルヴィル・ランデブー』が大好きな僕は
シルバン・ショメ監督のあからさまなファンなのですが
『ぼくを探しに』という初の実写長編映画を撮ったと聞いて
期待とともに不安がよぎりました。
あのアニメの世界観を実写で表現できるんだろうか……
そう思ったのです。
シルバン・ショメ監督のアニメは、
本当は実写映画を撮りたいけれど予算がないからアニメにしました、
というようなものではなく、
監督自身がアニメーターでもあり、
アニメーション本来の
絵が動く喜びが充満しているような作品なので
決してアニメ<実写とは考えられず、
むしろ実写にすることで
監督の魅力が損なわれるんじゃないかとさえ思っていました。
ところが、『ぼくを探しに』を観てみると
ショメ監督風味はそのままに、
実写でしかできない魅力を持った作品になっているではあ〜りませんか。
素晴らしい! 以上!

……って終わるわけにもいかないので続けますが
結局、面白い映画ってやつは
キャラクター造形とストーリーテリングなんすね、なんていう
わかりきったことを再認識させてくれたのでした。
『ぼくを探しに』なんて邦題がついていると、
いかにも自分探しの物語のようで
確かにそれは間違いではないのでだけれど
本作はそんな生やさしいものではありません。

冒頭で
「すべては記憶の中にある。
 そこは薬局か化学室のようで
 手に取るのが鎮静剤か毒薬かわからない」

という、マルセル・プルーストの言葉が引用されます。
マルセル・プルーストといえば、『失われた時を求めて』でしょう。
読んだことがあるかって? アルワケナイジャン!
なにしろ、ドがつく長編で
この小説を読んでいる間にかなりの時を失うことになりそうなので
読んでみようとしたこともありませんが
とにかく、本作はマルセル・プルーストをモチーフにしているのです。
主人公の父親はアッティラ・マルセルという名前だし、
ちょっと神秘主義的なマダム・プルーストも登場します。
だからといって、
マルセル・プルースト方面を探索し始めると
いつまで経っても本作に戻って来られないので
『失われた時を求めて』に関しては
バカのフリして気づかなかったことにします。
(もともとバカだからフリをする必要なし、とか言うな!)

2歳で両親を失ったのをきっかけに
まったく口をきかないまま33歳になった
ポール(ギョーム・グイ)
双子のアニー伯母さん(ベルナデット・ラフォン)
アンナ伯母さん(エレーヌ・バンサン)に育てられ、
ピアニストとして伯母さんたちのメヌエット教室を
手伝っています。
この双子のおばあちゃんが可愛らしく、
シルバン・ショメ監督のおばあちゃん好きが窺えますが
ポールに扮するギョーム・グイが
ポールの回想で登場する父親アッティラ・マルセルを
一人二役で演じているのが素晴らしい。
顔を見れば(とくに瞳)同一人物だとすぐにわかるものの、
ポールがシャツのボタンを一番上まで止めているような
世間知らずの童貞である一方、
父親アッティラ・マルセルは長髪ムキムキのプロレスラーで
無骨な乱暴者なので、まったく印象が違うふたりを
見事に演じ分けているのです。

言葉を発さないポールの周囲には
盲目の老調律師が登場し、ふたりは対比を成すのかと思いましたが
調律師はさほど大きな役割を与えられてはいませんでした。
ただ、盲目の調律師は
過去の記憶と想像の中の住人のようにも見えます。
調律師の引き合い(?)でポールが出会ったのは
同じマンションに住むマダム・プルースト(アンヌ・ル・ニ)
エコなマダム・プルーストは自身が栽培した野菜を使った
「ハーブティー」を処方し、
セラピストのようなことをやっていたのでした。

マダム・プルーストが作った「ハーブティー」を飲んだポールは
気絶している間に「失われた時」を遡り、
乳児の頃の記憶にたどり着きます。
そこには、愛しいマンマとマンマにDVをする父親が。
双子伯母さんからそう聞かされていたのか
ポールは父親のことを
マンマをいじめる悪いやつだと思っていたようですが
何度も「ハーブティー」を飲んで記憶にトリップするうちに
父親とマンマが愛し合っていたことに気づくのです。
そして両親の本当の死因は
壁をぶち抜いたために落ちてきた天井の下敷きになったからで
その2階に住んでいたのが双子伯母さんだったのです。

奔放に振る舞っているように見えたマダム・プルーストは
じつはガンに冒されていて
静かに姿を消したあと亡くなってしまいます。
双子伯母さんと揉み合ったときにかつらが外れますが
おそらく抗がん剤によって頭髪が抜けおちていた
のでしょう。
公園の木が伐採されることにひとりで抗議するマダム・プルーストは
文字通りエコロジストのとる行動ですが
自分の死に抵抗しようとする想いを重ねていたのかも知れません。
彼女の主治医がナイスキャラで
彼が作った、いまにも噛み付きそうなチワワの剥製
お笑いポイントです。

何度も落選しているピアノコンクールに出場したポールは
マダム・プルーストの「ハーブティー」の治療のおかげか、
謎のカエル楽団に囲まれ、見事優勝しますが
マダム・プルーストの死と過去のすべてを知ったポールは
ピアノを辞めてしまいます。
そのかわり、ウクレレ教室を始めます。
そのウクレレはマダム・プルーストの遺品なのです。

処女のくせに積極的な中国人女性と結ばれたポールは
ラストシーンでやっと言葉を発します。
それは彼が幼児期からようやく抜け出して
自立した証しなのでした。

さまざまな技工が施されているなかに
しっかりと胸を打つストーリーがあり、
シルバン・ショメ監督の
アニメだけに留まらない表現力の幅広さに
打ちのめされる傑作です。





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