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パラダイス 愛

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(原題:Paradies: Liebe 2012年/オーストリア・ドイツ・フランス合作 120分)
監督/ウルリッヒ・ザイドル 製作/ウルリッヒ・ザイドル 脚本/ウルリッヒ・ザイドル、ベロニカ・フランツ 撮影/ボルフガング・ターラー、エドワード・ラックマン 美術/アンドレアス・ドンハウザー、レナーテ・マルティン 編集/クリストフ・シェルテンライプ
出演/マルガレーテ・ティーゼル、ピーター・カズング、インゲ・マックス

概要とあらすじ
「ドッグ・デイズ」で高い評価を受けたオーストリアのウルリッヒ・ザイドル監督が、幸せを求めて欲望のままに突き進む女たちをユーモラスに描いた「パラダイス3部作」の第1作。50代シングルマザーのテレサは、娘のメラニーを妹アンナ・マリアに預け、ケニアのリゾート地で休暇を過ごすことに。そこには、白人女性を「シュガーママ」と呼んで愛を売る現地の青年「ビーチボーイ」たちがいた。友人からビーチボーイたちとの情事について聞かされて興味を抱いたテレサは、自分を女性として扱ってくれる優しい彼らとの関係にのめり込んでいくが……。2012年・第65回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品。日本では13年・第26回東京国際映画祭ワールド・フォーカス部門で3部作が上映され、14年劇場公開。(映画.comより



己の醜さを直視せよ

ウルリッヒ・ザイドルという人のことはまったく知りませんでしたが
『パラダイス 三部作』の紹介記事を読んで
こりゃあ面白いに違いないと思ったまではいいものの、
いつものとおりにグズグズな僕は公開時期を逃し、
いまになってやっとDVDで観ることができました。
ヴェルナー・ヘルツォーク、ミヒャエル・ハネケ、ジョン・ウォーターズ
ウルリッヒ・ザイドル監督に対して賞賛を贈っているというんですから
そのクオリティと作風は推して知るべし。

三部作の第一作目となる『パラダイス 愛』
身体障害者たちがゴーカートに興じるシーンで始まります。
自分には差別意識のようなものはないと思っていますが
率直に言って、障害者たちが楽しむ表情を次々と捉える映像を見ていると
なんだか凄いものを観ているような気分になってきます。
どうやら、冒頭からこちらが試されているのです。

その障害者たちを引率しているのが
ヒロインのテレサ(マルガレーテ・ティーゼル)
とくに説明はありませんが、障害者施設で働いているのでしょう。
テレサはシングルマザーで、
家に帰ると、携帯をいじるしか能のない典型的なバカ娘がいます。
口うるさくて、少し潔癖症ぎみなテレサは
怠け者のデブ娘を友人に預けてまでして
ひとりバカンスに出かけるご様子。
特別に裕福なわけでもなさそうなテレサが
娘(+猫)を他人に預けてまでバカンスへ向かうというのは
それなりに切羽詰まった覚悟があったのではないでしょうか。

オーストリアからテレサがバカンスに向かった先は、ケニア。
あちらではリゾート地として定番なんでしょうか。
どうやら周知の仲の友達もいるようで、
青い空、青い海、澄んだ空気を満喫しつつ、
話題に上るのは、下ネタばかり。
テレサを含む白人女性たちがケニアでバカンスを過ごす目的は
ほぼほぼ現地の黒人男性とのアヴァンチュールなのです。
ていうと若干聞こえがいいですが、
買春ツアーでタイに行く日本人のおっさんと発想は同じなのです。
さらには、テレサと彼女の知り合いの女性たちが
揃いも揃って三段腹の超絶だらしない体型というのが
おかしさを通り越してグロテスクでさえあります。
どう考えても、いい女だなと
男がヨダレをたらしながら言い寄ってくるような女性ではありません。
その姿こそが残酷なのですが
それでも「きれいだね」「ステキだね」といわれると
真に受けてしまうテレサたちの姿がさらに残酷なのです。

それでも、どうやらテレサは快楽を満たすためだけではなく、
「愛」を感じられる新しい出会いを求めているような節があり、
最初に出会った黒人男性とコトに及ぼうとすると拒否します。
どう考えてもそのつもりだったくせに。

やたらとしつこい売り子にゲンナリしているところに現れた
ムンガ(ピーター・カズング)の振る舞いのスマートさに安心したのか
テレサはムンガと行動を共にし、ついに一戦交えます。
「ブラをつけてるとアップ、外すとダウン」とおどけるテレサが
自虐的でありながら、自尊心をくすぐられるとコロっといってしまうさまの
痛々しさたるや。
そうかと思えば、蚊帳に覆われたベッドで眠るテレサの絵画的な美しさ。

案の定、ムンガからあれやこれやと金をむしり取られたテレサは
失望しつつもまだ男漁りは諦めていないようす。
ほかの男も試すものの、同じ結果に。
一見優しそうな現地の黒人男性たちも、しつこくつきまとって
ネックレスやブレスレットを売ろうとする売り子たちと代わりはないのです。
そして、いくらテレサが愛を要求しても
金で男を買っているに過ぎないし、
男も金で性を売っているに過ぎないのです。

白人観光客の愚かさを客観しするかのようなフィックスしたカメラで
ビーチに並んで横たわる醜い中年女性たちが
「瞳の奥を見つめて心で通じ合いたいの」とかいいながら
自分たちが見つめているのは黒人男性のチンコだけ
というのが
もう、どうしようもない皮肉になっています。
バカンス中に誕生日を迎えたテレサが
何度娘に電話しても通じないわびしさのあと、
中年ビッチが集まって催すささやかな誕生日パーティーは
招いた男娼が汗だくになってサービスしても勃起しないという
トホホな結果に。
ついにはテレサは純粋なバーテンを誘惑し、
あたかも男娼のようにクンニを要求するものの、
そんな気がないバーテンは戸惑うばかり。
「愛」がない相手とはセックスできないと考えていたはずのテレサは
いつしか愛があろうがなかろうが、私に奉仕しなさいという
傲慢さを身につけてしまったのです。
バーテンに対する誘い文句として
「白人とキスしたことある?」「白人を抱いたことある?」と迫るのは
どう考えても、お前ら黒人にとって
白人の女を抱けるのは喜ばしいことに決まっているという、
明らかな差別意識が介在しているのです。

そもそも、リゾート地で現地の男性とのセックスを楽しみにしている時点で
差別とまでいわないとしても、相手を安く見積もっているし、
ムンガのような男がそんな白人観光客を
金ヅルとしか考えないのも致し方ない道理であって
お互いが利己的に搾取し合う関係でしかないのです。
そんな関係に「愛」などあろうはずもありません。

終始、己の醜さを直視せよといわんばかりの本作でした。
続編ではないにしろ、なにしろ三部作ですから。
今後、どういう展開になっていくのか、
非常に楽しみです。





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