" />

彼女と彼

ill503.jpg



(1963年/日本 117分)
監督/羽仁進 脚本/清水邦夫、羽仁進 製作/小口禎三、中島正幸 撮影/長野重一 美術/今保太郎 音楽/武満徹 録音/安田哲男 照明/田口政広 編集/土本典昭
出演/左幸子、岡田英次、山下菊二、長谷川明男、五十嵐まりこ、木村俊恵、平松淑美

概要とあらすじ
清水邦夫と「充たされた生活」の羽仁進が共同でオリジナル・シナリオを執筆、羽仁進が監督した社会ドラマ撮影もコンビの長野重一。広大な団地アパートのある東京の郊外。石川直子、英一夫婦はこのアパートに住んでいる。ある朝直子はバタヤ集落の燃えている音で目がさめた。白い西洋菓子のようなコンクリートの城壁に住む団地族、それと対照的にあるうすぎたないバタヤ集落。直子はブリキと古木材の焼跡で無心に土を掘り返す盲目の少女をみつけた。その少女は、夫の英一の大学時代の友人でこのバタヤ集落に住む伊古奈と呼ばれる男が連れている少女であった…(映画.comより抜粋



すべて背負って立つのか、どこかで引き返すのか

日本人で初めてベルリン国際映画祭女優賞を獲得した
羽仁進監督『彼女と彼』です。
その栄誉に輝いた本作のヒロインは左幸子

全身は小柄でちょっとすんぐりしているところはあるけれど
彼女の健康的かつ妖艶な美貌にうっとりします。
左幸子のクローズアップを多用する本作は
あたかも左幸子のアイドル映画のようです。
当時、左幸子と夫婦だった羽仁進監督は
さぞかし彼女のことを可愛いと思っていたことでしょう。
左幸子を捉えるカメラからデレデレ感が伝わってきます。
……にもかかわらず、羽仁進監督は
左幸子の妹と不倫関係になり、ズブズブの関係へと至るのですから
まったくもって男と女の関係は、一寸先は闇なのです。

百合ヶ丘の団地に暮らす
英一(岡田英次)直子(左幸子)夫婦は
裕福とはいえないけれど貧乏でもない、いわゆる中流。
高度成長期真っ只中とはいえ、
公務員の英一は18:00きっかりに帰宅するし、
直子は、夫の帰りを待ち、部屋着に着替えさせ、
晩酌の酌をし、おいと呼ばれればズボンを用意するような、
いまやすっかり姿を消した夫を健気に支える専業主婦で、
どう考えても今よりは時間がゆったりと感じられます。
英一は際だって亭主関白なわけでもないので
当時の夫婦生活に即した、それなりにラブラブな夫婦なのでしょう。

英一と直子が暮らす団地のすぐそばに
バタヤ部落の集落があるという、
格差社会モロだしな風景はかつていたるところに存在したのでしょう。
ある晩、バタヤ部落のバラックが炎に包まれているのを発見した直子が
とにかく近くに行ってみたいと興奮するのは
あくまで野次馬根性だったのではないでしょうか。
どうやらなんにでもクビを突っ込みたがるきらいのある直子には
若干、子供じみた天真爛漫さと抑えきれない好奇心があるようす。

それだけならよかったものの、
部落の住民のなかに学生時代の英一と仲間だった伊古奈(山下菊二)を発見し、
伊古奈と度を超えた関係性を持つようになるのです。
大学生時代、英一と伊古奈は
ともにセツルメント活動を行っていた仲でした。
セツルメントとは貧困地域でのボランティア活動のこと。

英一はことさら禁欲的だったり差別的だったりするわけではなく、
ごく一般的な常識を備え持った人間だと思いますが
セツルメント活動が契機になったかどうかは定かではないものの、
伊古奈は貧困にあえぐ住民と接するうちに
彼らと生活をともにする以外の生活に欺瞞を感じるほど
ストイックになってしまったのではないでしょうか。

あきらかに伊古奈との交流によって感化された直子は
火事の野次馬から、もともとのおせっかいな性格によって善意が芽生え、
やがては善行を行なわないことの罪悪感に借られるようになった、
という気がします。

また、髪型をショートにまとめた直子に対して
英一が「いいじゃないか。奥様って感じで」と褒めたにもかかわらず、
直子は「(髪型を)変えなきゃ良かったかな」というあたり、
彼女が典型的な妻という存在に納まることに違和感を感じているのは
あきらかです。
さりとて、直子は出張する英一から特別に小遣いをもらうと
超うれしそうだったりするのが、
彼女の微妙な矛盾を表現しているのではないでしょうか。

団地に暮らす人々の中流意識
現代にも繫がるコミュニティーにおける関係性の希薄さなどをモチーフに
善意がもたらす予期せぬ弊害を
押しつけがましくなく表現しているように感じました。
知らん顔するのは簡単、でも、
善意で何かをしようとしたとき自分はどこまで責任を負えるのか。
すべて背負って立つのか、どこかで引き返すのか。
きれい事ではすまされない難しい問題ですな。





にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑お気に召したらクリックしていただけますと、もんどりうって喜びます。
関連記事
スポンサーサイト

コメント

非公開Aさん

ご指摘ありがとうございます!訂正しました。

2015/07/06 (月) 20:24:00 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

のほうず

のほうず
映画が好きで観るのはいいが、
かたっぱしから忘れていくので
オツムのリハビリ的ブログ。
******************
当ブログの文章・画像およびイラストの無断転載を禁じます。引用される場合は、出典の表記と当ブログへのリンクを設定してください。

FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

お気に召したら
クリックお願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

スポンサードリンク

↓過去の記事はこちらから!↓

検索フォーム

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

カウンタ