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ラブ&ピース

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(2015年/日本 117分)
監督・脚本/園子温 特技監督/田口清隆 製作/重村博文、長澤修一、山本英俊、宮本直人 撮影/木村信也 照明/尾下栄治 美術デザイナー/清水剛 装飾/岩井健志 録音/小宮元 音響効果/斎藤昌利 編集/伊藤潤一 音楽/福田裕彦
出演/長谷川博己、麻生久美子、西田敏行、渋川清彦、マキタスポーツ、深水元基、手塚とおる、奥野瑛太、長谷川大、谷本幸優、IZUMI、小倉一郎、真野恵里菜、神楽坂恵、松田美由紀、田原総一郎、水道橋博士、宮台真司、茂木健一郎、
津田大介

概要とあらすじ
「愛のむきだし」や「冷たい熱帯魚」といった問題作を数多く手がける園子温監督が、愛をテーマに自身初となる怪獣特撮映画の要素を取り入れて描いたオリジナル作品。ロックミュージシャンの夢に破れ、楽器の部品会社で働くサラリーマン鈴木良一。想いを寄せる同僚の寺島裕子にもまともに声をかけることもできず、うだつのあがらない日々を過ごしていた。ある日、良一がデパートの屋上で出会った一匹のミドリガメ。その亀に運命的なものを感じ、ピカドンと名前をつけてかわいがる良一だったが、会社で同僚にからかわれピカドンをトイレに流してしまう。しかし、下水道を流れていったピカドンが地下に住む謎の老人に拾われたことにより、良一とピカドンに思いもよらない展開が待っていた。主演のサラリーマン良一に長谷川博己、同僚の裕子に麻生久美子、謎の老人を西田敏行がそれぞれ演じている。(映画.comより



ピカドンは、LOVEなのか?

ものすごい勢いで監督作品の公開ラッシュが続く園子温
映画以外でも小説を上梓したり、バンドやったりと、
超多忙かつエネルギッシュな活動をみていると
まるで長い刑期を終えて出所した男が
一日中情婦と汗だくになりながらセックスしているかのようです。

20数年前に忌野清志郎を主演として企画されていたという
『ラブ&ピース』は、『地獄でなぜ悪い』と同様に
園子温がかつてやりたくてもできなかったアイデアを
実力も名声も手にした今、実現してみせる映画です。
20数年前に書いた脚本を99%変更していないことは
映画を撮らせてくれなかった当時の関係者に対する
当てこすりとさえ思えます。
すなわち、これは過去への復讐なのです。

園子温の表現の原動力は、青臭い承認欲求です。
その「青臭さ」を魅力と感じるかどうかで評価が分かれるでしょう。
園子温が最も鬱屈していたであろう20数年前に書かれた
『ラブ&ピース』は、紛う方なきSONO SION'S FILM
「俺」と書かれた旗を掲げて疾走する
『自転車吐息(1990)』
の頃からなんにも変わっていないのです。
当初の脚本に東京オリンピックが設定されていたかどうかわかりませんが
時世を考えるとこれ以上ないタイミングではあります。

そんな鬱屈した生活を送っていた園子温のオルターエゴ、
鈴木良一(長谷川博己)はミュージシャンを目指していたものの、
夢破れて、しがない会社員として働いています。
いや、しがないというよりも過剰にダメ人間として描かれる良一は
職場でもやはり過剰かつあからさまにバカにされています。
田原総一朗と園子温のお友達が登場する冒頭のテレビ番組
名指しで良一をあげつらい、嘲笑するのは
世の中のすべてから自分はバカにされていると
良一が感じているからでしょう。極度に卑屈なわけです。
長谷川博己の、熱演なんだかふざけているんだかわからない演技は
最後まで続きます。
良一が暮らしているアパートの美術が懲りまくっていましたが
壁に貼られたもののなかに
セックス・ピストルズを模したレコードジャケットに
『地獄でなぜ悪い』で登場した「ファック・ボンバーズ」の文字が。
(それ以外はわかんなかったー)

デパートの屋上で見つけたミドリガメにシンパシーを感じた良一が
その亀をなんとなく「ピカドン」と名づけ、
持ち歩いて愛でているのを職場の同僚に発見さると、
追い詰められた良一は、ピカドンをトイレに流してしまいます。

ピカドンを捨てたことを激しく悔やんで精神崩壊した良一が
ストリート・ミュージシャンにからみ、
後日良一を見つけたそのミュージシャンが良一を拉致して
首に鎖までつけた状態で客前に引っ張り出し、
「ギター貸してやるから、歌ってみろよ」という一連の流れは
1ミリも理解できません

とにかく、そこで歌ったピカドンの歌が
たまたまそこに居合わせたレコード会社の人間を魅了するのです。

評価が数字で表れやすいスポーツものはともかく、
「絵が上手い」とか「歌が上手い」など、
いわゆる「芸術点」の高さを映画で表現するときは
必ずや「これはスゴイんだ」というテイになってしまいます。
登場人物たちが、スゴイスゴイともてはやすから
これはスゴイんですよという設定になってしまうのですが
本作もその呪縛と無縁ではなく、
園子温自身が作曲した歌は、どう聞いても胸を打つようなものではなく、
ましてや名曲などではありません。
「全力歯ぎしりレッツゴー」なども
確かに耳に残るキャッチさは認めますが
それは単に鼻歌だからであって、
聞いたこともない音楽に触れたときの感動とはまったく無縁です。
良一が歌う歌も、出来の悪いJ-POPの鼻歌でしかないでしょう。
クマムシの「あったかいんだから〜」のレベルにも達していません。
図らずも(?)ラストで流れる『スロー・バラード』の破壊力
良一が歌う歌の陳腐さを際だたせています。
むしろ、忌野清志郎の凄さを再認識するために
本作が存在しているのではないかとさえ思えてきます。

余談ですが、
忌野清志郎の歌には、どれだけ切ない歌でも
必ず、彼女=たったひとりの理解者が存在します。
それは『スロー・バラード』でも同様で
歌い手を心で支えてくれる存在がいるということであり、
たったひとりでも理解者がいるんならいいじゃねえかと
嫉妬の炎が燃え上がりますがそれはともかく、
本作において良一の理解者は寺島裕子(麻生久美子)なのでしょう。
どうも、麻生久美子はさえない男のミューズのようで
『アイデン&ティティ(2003)』でも
やっぱり売れないミュージシャンを陰で支える女性でした。

さて。
良一にトイレで捨てられたピカドンが流れ着いたのは
捨てられたペットやおもちゃたちが集う場所。
彼らは謎の老人(西田敏行)が処方した薬によって
人間の言葉が話せるようになっているというわけ。
この荒唐無稽であり得ない設定こそが
本作の見どころではありますが……

バカバカしい表現こそ、取り組み方の真剣さが問われると思うのですが
このシーンでは本作の予算の少なさが浮き彫りに。
おそらく可能なら動物に演技させたいところも
パペットで代用されているのがありありとわかります。
人間の言葉を話す面々があくまでガヤでしかなく、
気の利いたことをなにひとついわないのもガッカリです。
最近だと『テッド』のような完成度とはほど遠く、
子供だましが続きます。
さらに西田敏行による説明のための一人芝居が背筋を凍らせます。

西田敏行の目を盗んで地上へ繰り出したパペットたちのうち、
マリアという人形が地下へ戻るのを拒否し、
クリスマスで浮かれた街のショーウインドウの前にいると
神楽坂恵が連れた元ご主人様の少女が新しい人形を抱えて通り過ぎる、
というシーンなどは、わかりきった結末をみせられたうえに
完全に物語が停滞していています。
あの人形のマリアをかわいそうだと思えばいいんでしょうか。
無理でしょ?

ピカドンが言葉を話せるようにと
西田敏行が間違えて薬を処方したせいで
それを飲んだピカドンがご主人の叶えたい夢と比例して肥大するという理屈は
さっぱりわかりませんが
とにかく、ピカドンの身体の大きさは
良一の自意識の大きさを投影しているのでしょうか。
でも、そうだとしたら、
あれよあれよという間にスターダムを駆け上がり、
やがて世界を目指すようになる良一は
どんどん夢を叶えていっているわけで、
むしろピカドンは小さくなるんじゃないの?…
そういうことじゃないの?
じゃ、欲望の大きさってことかな?
いつのまにか、「ピカドン」が「LOVEちゃん」にすり替わっていたのも
納得いきません。
あの亀は「ピカドン」だからこそ意味があるんじゃないのかよ?
「あのピカドンを忘れるな」と言いつつ、
「LOVE」として抽象化してしまうのかと思うと残念でなりません。

おそらく、良一は
ラストで原点回帰したはず。
それは虚飾に浮かれたり、仲間を足蹴にしたりしない、
本来の自分ということなんでしょう。
だけど、自己実現のためには犠牲となるものが必ずや存在するはずだし、
良一が原点だと考えているのは
世間に認められなくていじけているだけの生活なわけで
そこに戻っちゃうのはなにも学習していないように思えます。
たとえ、そのような鬱屈した時期が
自己実現の衝動に満ちあふれていたとしても
よもや、園子温が誰にも認められなかった時代に戻りたいとは
考えていない、はずでしょ?





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コメント

むか~し「部屋」というがありましたね。
あの映画はなんだったんでしょうかね。一応、観たけど。

自分は当時、ともだち(園子温の知り合い)にたのまれて「部屋」の前売りの手伝いをしました(笑)

2015/07/05 (日) 00:56:59 | URL | 朕 #- [ 編集 ]

Re: タイトルなし

> 朕さん
「部屋」、ハードボイルドなお部屋探しでしたね。

2015/07/05 (日) 10:47:00 | URL | のほうず #- [ 編集 ]

> ハードボイルドなお部屋探し

実質、タモリ倶楽部ですね(笑)

2015/07/05 (日) 18:30:01 | URL | 朕 #- [ 編集 ]

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