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コングレス未来学会議

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(原題:The Congress 2013年/イスラエル・ドイツ・ポーランド・ルクセンブルク・フランス・ベルギー合作 120分)
監督/アリ・フォルマン 製作/アリ・フォルマン、ラインハルト・ブルンディヒ、ロビン・ライト 原作/スタニスワフ・レム 脚本/アリ・フォルマンアニメーション 監督/ヨニ・グッドマン 撮影/ミハウ・エングレルト 編集/ニリ・フェレー 音楽/マックス・リヒター
出演/ロビン・ライト、ハーベイ・カイテル、ポール・ジアマッティ、ダニー・ヒューストン、ジョン・ハム、コディ・スミット=マクフィー、サミ・ゲイル、マイケル・スタール=デビッド、マイケル・ランデス、サラ・シャヒ

概要とあらすじ
「戦場でワルツを」のアリ・フォルマン監督が、「惑星ソラリス」の原作でも知られるポーランドのSF作家スタニスワフ・レムによる小説「泰平ヨンの未来学会議」をアニメーションと実写を交えて映画化。俳優が自らの一番輝いている姿をスキャンし、デジタルデータとして保存することが可能になった未来世界。40歳を超えて女優としての旬を過ぎたロビン・ライトは、難病を抱えた息子のためにも、巨額の報酬と引き換えに、それまで出演を拒んできた売れ筋の映画を含むあらゆるジャンルの作品に彼女のデータを提供するという契約を結ぶ。映画会社のミラマウント社にデータを提供したロビンは演技をすることもなくなり、表舞台から退く。そして20年後、ミラマウント社が開く未来学会議に招かれたロビンは、人々が化学薬品を使った新たな娯楽に没頭している世の中を目の当たりにする。(映画.comより



そもそも実体など存在しないのだ

いかにも小難しそうなタイトルの
『コングレス未来学会議』
幻覚表現と造語だらけだというスタニスワフ・レムの原作は
映像化が不可能と言われ、たしかに難しそうだけれど
(もちろん読んだことないけれど)
本作は論理的な整合性で頭を悩ますのではなく、
ぶっとんだ映像表現に酔いしれる……
そんな作品になっています。
アリ・フォルマン監督によって
宇宙飛行士だった原作の主人公「泰平ヨン」
大胆にもハリウッド女優に置き換えられ、
その名前すら登場しません。
映画化不可能といわれた原作を
映画でしかできないやり方で(しかも現代の)
表現したといえるのではないでしょうか。

ロビン・ライトの泣き顔のクローズ・アップから
ゆっくりとカメラが後退する間、
ハーベイ・カイテル扮するマネージャーのアルが
ババちびるくらいこんこんと説教しているシーンから始まります。
おそらく、演技の中でも最も難しい「泣く」演技から始めたのは
本作の根幹をなすテーマを宣言しているように思えます。
映画の中のロビン・ライトは本当に泣いているけれど
それを演じているロビン・ライトは演技で泣いているのですから。

かつて人気を博した女優、ロビン・ライトは
40歳を過ぎ、次第に人気が陰りを見せ始め、
それまでの身勝手な「セレブ的行動」によって
出演依頼のオファーが激減しているところに、
映画会社のミラマウント社から「最後のオファー」が届きます。
その「最後のオファー」とは、
高額なギャランティーのかわりに
ロビン・ライトの肉体と仕草をスキャンしてデータ化し、
CGキャラクターとして利用する
というもの。
しかも今後一切、実物のロビン・ライトは
女優活動をしてはならないという契約なのです。
すでにキアヌ・リーブスは契約済みとのこと。

映画がほとんどCGアニメーション化しているというのは
もはや現実のこと。
『ウォンテッド(2008)』で激しいアクションをみせる
アンジェリーナ・ジョリーの肉体がじつはCGで、
あとから顔だけ合成した
というのは有名な話。
もう俳優いらなくね? というところまで
とっくの昔にきているのです。
必要とされるのはキャラなのです。

それじゃあ、私はなんなのよ!と、
オファーを拒否するロビン・ライトでしたが
CGかどうかという前にそもそもの話として
泣けと言われれば泣いて、笑えといわれれば笑い、
いつも監督に言われるままに演技しているじゃないか、と。
顔だって、若さを保ちたくて整形してるじゃないかと。
本来の君なんか存在しないんだよ! と、
またしてもババちびるほど説教するアル。
このやりとり自体がアイデンティティーの本質を問いかけるものですが
虚栄心をズタズタにされるロビン・ライト役を
ロビン・ライト本人が演じているという構造が
本作を重層的なものにしているのです。
ロビンを説得するためにみせる映画のDVDで
「いままで君に隠してきた秘密があるんだ」
「浮気してるのね?!」
「そうじゃない。僕はいままでずっとブッシュに投票してきたんだ
「まさか、そんな……」
というくだりが笑えます。

ロビンが契約を受け入れてから20年の時が経って、
「コングレス未来学介護」に招待された彼女(64歳)が
アバラハマシティに車で乗り入れると、
そこはすべてがアニメ化される世界。
ここから始まるアニメ・パートの
ドラッギーな幻覚描写がすさまじいのです。

にもかかわらず、1920年代のフライシャー兄妹に影響されているという
アニメのタッチはどこかレトロでポップ。

不思議なことに、僕はこのアニメ・パートを
普段通りにアニメとして観るのではなく、
アニメ化した実在の人間という意識で観ていました。
設定通りにアニメで見えているだけなんだと。
これこそまさに、アニマが宿っているということか。

アニメ・パートの魅力については
言葉では説明しようがありません。
いつまでも押し寄せるイメージの洪水に
心地よく流されていくのがベストです。
一度観ただけでは把握しきれないほど情報量が多く、
また、アニメだからこそ表現できる遊び心に溢れています。
いま思い出せる範囲でいうなら、
キリスト、ブッダ、マリリン・モンロー、イーストウッド、
マイケル・ジャクソン、オノ・ヨーコ、トム・クルーズ、
プレスリー,ジミヘン、モハメド・アリなどなどが
カメオ出演(?)しています。
グレイス・ジョーンズにはひっくり返った!

このアニメ・パートのストーリー展開は
かなり原作に忠実なようですが
新しくなったミラマウント社の新しいリーダー(ボブス)
スティーブ・ジョブスをイメージしているのはわかるものの、
社名が「ミラマウント・ナガサキ」という日本名なのは
よくわかりません。
ま、とにかくボブスが新たに打ち出したのは
すべての人々は、新薬を飲むことで
自分用にカスタマイズされたイメージ世界で
暮らせるようになる
というもの。

本作は原作を大きく改編して
主人公を他人の人生を演じる俳優にし、
虚飾にまみれるエンタメ界の物語にしていますが
それは物語を象徴的にみせるための
アリ・フォルマン監督の秀逸なアイデアであり、
かつわかりやすくするためのサービスだともいえるのですが
スターやセレブでなくとも
僕たちの生活は虚構で成り立っている
いえるのではないでしょうか。

誰もが愛してやまない「お金」だって本来ただの紙切れだし、
FXだかSFXだか知りませんが
数値が上下する折れ線グラフに一喜一憂する現実は
まさにイマジネーションの世界です。
そこには実体などありません。
個人のアイデンティティなんてやつも
自分探しの旅に出れば見つかるものではなく
そもそも存在しないのではないでしょうか。
社会で生きるために、誰もがなにかの役割を演じているし、
「君って、○○なところがあるよね」なんて人からいわれて
気に入れば、それを「自分らしさ」だと設定し、
そういう人間になろうと自分で自分を
演じるようになるだけのことのように思います。

そもそも虚像で成り立っている自我を失うのを
恐れること自体が滑稽なのかもしれません。
それでも肉体的な固体としては
あきらかに自分というものは存在するので
人間はややこしいのです。

聴力と視力を失いつつあるロビンの息子が検査を受けるとき、
言葉を聞き間違えた息子が
音から関連づけたイメージによって返答するのは
クリエイティビティの根源のようにみえます。
本作は虚像にまみれて真実を省みない人々の現状に
警鐘を鳴らしているのは確かですが
その想像力(妄想力)が人間を人間たらしめているし、
だからこそこんな作品が生まれるわけで……

ラストで、ロビンが息子の姿になってしまうあたり、
示唆するものが非常に多いのですが
まあとにかく、多くのものをもたらしてくれるし、
一回観ただけでは咀嚼しきれないほどの
芳醇な映画の喜びに満ちあふれているし、
何度でも繰り返し観たい大傑作といって間違いありません。





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