" />

テナント 恐怖を借りた男

tenant.jpg



(原題:Le locataire 1976年/フランス・アメリカ合作 126分)
監督/ロマン・ポランスキー 原作/ローラン・トポル 脚本/ロマン・ポランスキー、ジェラール・ブラッシュ 撮影/スヴェン・ニクヴィスト 編集/フランソワーズ・ボノ 音楽/フィリップ・サルド
出演/ロマン・ポランスキー、イザベル・アジャーニ、メルビン・ダグラス、ベルナール・フレッソン、シェリー・ウィンタース

概要とあらすじ
「チャイナタウン」のロマン・ポランスキー監督が、自ら主演を務めて撮りあげたサイコサスペンス。パリの古びたアパートに空き部屋を見つけた青年トレルコフスキーは、前の住人である女性シモーヌが投身自殺を図り重体となっていることを知り、病院へ見舞いに行く。やがてトレルコフスキーはシモーヌが死亡したことからアパートへ引っ越すが、奇妙な住人たちに悩まされるうちに被害妄想を募らせていく。(映画.comより



不寛容、自意識過剰、そして被害妄想へ

ロマン・ポランスキー
いろいろと大変な人生を歩んでいるのは有名ですが
シャロン・テート事件が1969年、
13歳の少女に対する淫行の疑いをかけられたのが1977年。
で、『テナント 恐怖を借りた男』は1976年の作品なので
この2大事件が本作に直接影響を与えているとは思えません。
まあ、このふたつの事件のまえに
ナチスによるユダヤ人迫害も経験しているのですから
とにかく、周囲の人間は信用がおけず、
いつ寝返るかわからない存在だというのが
ポランスキーが他者と接するときのデフォルトなのかもしれません。

アパートを探していたトレルコフスキー(ロマン・ポランスキー)
最近水道は通ったけれど共同便所で
しかもつい最近自殺者が出た部屋を
少々高めの値段設定に譲歩してでも借りようとする動機は
よくわかりません。
どういうわけか最初からトレルコフスキーは
その部屋に固執しているようにみえます。

本来関係がなく、誰に命じられたわけでもないのに
前の借り主である自殺した女性がまだかろうじて息があると聞けば
果物を抱えて病院に見舞いに行くのも不自然です。
観終わってから考えれば、すでにトレルコフスキーは
なにかに囚われたような行動をみせていたのがわかります。

アパートの窓のレースのカーテンを追いながら
クレーンカメラが移動し、
トレルコフスキーがアパートに入ってくるまでを
ワンカットで捉える冒頭シーン
『ローズマリーの赤ちゃん』の縮小版のよう。
主人公が新しく引っ越したアパートで
変な隣人にからまれるのも同じです。

いかにも小心者でお人好しそうな
トレルコフスキーが巻き込まれる隣人トラブルは
現代でもそのまま当てはまる不寛容が原因です。
「○○さんのゴミの出し方が!」とか、
日本のマンションでも管理組合の連中が
寄って集って個人を陥れることって
あるような気がします。

とにかく、高圧的な隣人たちに
びくびくしながら生活していたトレルコフスキーは
タバコの銘柄がゴロワーズからマルボロになり、
マニキュア→メイク→女装と
どんどん自殺した女性に近づいていきます。
トレルコフスキーは頭の半分では
理不尽な隣人に対抗する手段として女性化していきますが
残りの半分では自ら望んで女装を楽しんでいるようにもみえるのです。

いつも共同便所から自分の部屋を覗き見ている人間がいることを
気にかけていた彼が
あるとき、その共同便所に行って窓から自分の部屋を覗くと
そこには自分の姿が。

この瞬間から、物語は完全に倒錯した世界へと突入するのです。

あたかも監視するように、共同便所から自分を覗き見る自分は
トレルコフスキーの自意識そのもの。
彼が小心者でお人好しなのは
自分を良く(もしくは無害でスマートな人間として)みられたいという
過剰な自意識の現れだったのではないでしょうか。
トレルコフスキーが女装へとひた走るのも
彼の美意識の具現化のように思えてなりません。

自意識過剰から被害妄想へと至ったトレルコフスキーは
自らすすんで破滅へと向かっていきます。
結局、前の住人と同じように(それどころか二度も)
部屋の窓から身を投げて病院送りになった彼を見舞いに来たのは
トレルコフスキー自身。

かれは今後もずっと自殺のループを繰り返すのでしょうか。

思いのほか、
イザベル・アジャーニの扱いが小さかったのは意外でしたが
価値観が反転するさまをじっくりゆっくりみせる
ポランスキーらしい心理サスペンスです。





にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ 
↑お気に召したらクリックしていただけますと、もんどりうって喜びます。
関連記事
スポンサーサイト

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

«  | ホーム |  »

プロフィール

のほうず
映画が好きで観るのはいいが、
かたっぱしから忘れていくので
オツムのリハビリ的ブログ。
******************
当ブログの文章・画像およびイラストの無断転載を禁じます。引用される場合は、出典の表記と当ブログへのリンクを設定してください。

FC2ブログランキング

FC2Blog Ranking

お気に召したら
クリックお願いします。
にほんブログ村 映画ブログ 映画評論・レビューへ

スポンサードリンク

↓過去の記事はこちらから!↓

検索フォーム

QRコード

QR

ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

カウンタ