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初恋・地獄篇

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(1968年/日本 108分)
監督/羽仁進 脚本/寺山修司、羽仁進 製作/藤井知至 撮影/奥村祐治 録音/久保田幸雄 照明/鎌田勉 編集/羽仁進 スチル/沢渡朔
出演/高橋章夫、石井くに子、満井幸治、福田和子、宮戸美佐子、湯浅実、額村貴美子、木村一郎、支那虎、浅野春男、スージー・トランブル、安西愛子、安念むつ子

概要とあらすじ
寺山修司と、「アンデスの花嫁」の羽仁進が共同でオリジナル・シナリオを執筆、羽仁進が監督した青春もの。撮影は「樹氷のよろめき」の奥村祐治。シュンが七歳の時、父が死に、母は再婚した。教護院に入ったシュンは間もなく、彫金師の家にひき取られ、仕事の手伝いをしながら成長した。孤独なシュンはある日、ひとりの少女ナナミと知り合った。ナナミは、集団就職で上京した後、いまヌードモデルをやっている。二人は一軒の安ホテルで抱きあった。だが初めての経験でシュンは当惑するばかりであった。ナナミはそんなシュンに優しかったが、二人は不成功のままホテルを出た…(映画.comより



基本的に、初恋は地獄です。

初恋の相手と相思相愛になってめでたく結ばれる……
なんて、天国みたいな人生を送る人もなかにはいるんでしょうが
基本的に、初恋は地獄です。
『初恋・地獄篇』というからには
『初恋・天国篇』が存在する可能性もないわけじゃないけれど
そんなもんを映画にしてもちっとも面白くないでしょう。

真っ暗闇に街灯だけが光輝くトンネルの中を歩く
シュン(高橋章夫)ナナミ(石井くに子)が向かう先は
ラブホテル。いや、連れ込み宿というべきか。
終始うじうじしているシュンは童貞で
さっさと自分で服を脱ぐナナミは性的に奔放なようす。
ふたりがどこでどう知り合ってこうなっているのかわかりませんが
初体験の相手がナナミのような経験豊富(そうな)女性で
しかも年増の薄汚いババアでもないのですから
これほど恵まれたエスケープ・フロム・童貞はないはずなのに
シュンはキス以上の行為をすることができません。

ウブにも程があるだろう、このやろう! と
だんだん苛立ってくるのですが
シュンのもじもじうじうじは、彼がウブなせいだけではなく、
どうやら彼の生い立ちに問題があったのでした。
幼いころに父親を亡くしたシュンは母親に育てられていたものの、
母親はシュンを置き去りにしてボクサーと駆け落ち。
養父母に引き取られるも、義父から性的虐待を受け続けていたのです。
実の母親からも口にキスされていたり、
主に性的な方面で精神を蝕まれたシュンは鬱屈し、
「笑う会」という自己啓発セミナーに通わされたりします。
シュン……おまえ、これは
『初恋・地獄篇』じゃなくて、『人生・地獄篇』だよ!

挙げ句の果てには、墓地で近所の少女と遊ぶうちに
ロリ容疑で追いかけ回されるハメに。

どうしても性的に間違った方向へと進んでしまうシュン。
セックス・ウェルカムなナナミを前にしても
躊躇してしまうには深いわけがあったのです。

一方、「モデル」をしているナナミ。
「モデル」とは、裸になって
客から鑑賞されたり、写真を撮られたりする風俗嬢です。
ストリップとのぞき部屋が一緒になったような、
とってもビミョーな性風俗。
なぜナナミがシュンのことを構うのか、よくわかりませんでしたが
ナナミはお得意の客に気持ちを寄せているようで
そのお客が妻子持ちであることが
彼女にとっての「地獄」なのでしょう。

途中、地下室のSMクラブみたいなところで
(といっても、客はやっぱり写真を撮るだけだけど)
女闘美(めとみ)たちによるキャットファイトが。
こういうアングラなところや
流行歌の使用、天狗のお面などの土着的なところが
寺山修司的
なんでしょうかね。

全編モノクロの本作は
ナナミの同級生が高校の文化祭で披露する自主制作映画の一部だけ
パートカラー
になっています。
その映画自体、自分の初恋の想いをセンチメンタルに綴り、
しかもその初恋の相手を上映会に招待しているのですから
(その相手は来なかったけれど)
目を覆うばかりに痛々しいものですが
初恋真っ只中の本人してみれば
モノクロの映画をカラーにしてしまうくらい
頭の中は鮮やかに彩られているのかも知れません。
それ以外の現実はモノクロなのでしょう。

義父の性的誘惑に反撥したシュンは
ついに家を出てナナミとの童貞喪失に再チャレンジする決意をします。
シュンにとって、ナナミと合体することは
単純に、初エッチひゃっほーではなく、
図らずも狂ってしまった日常を抜け出して
本来あるべき自分の姿を取り戻すために
避けることのできない通過儀礼
だったのでしょう。

ところが、輩に絡まれたシュンは
ナナミが待つ連れ込み宿を目前にして車にはねられ、
死んでしまいます。
童貞のまま。地獄のまま。

クローズアップとモンタージュを多用した
荒々しくも甘酸っぱい作品です。





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