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罪の手ざわり

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(原題:天注定 A Touch of Sin 2013年/中国・日本合作 129分)
監督・脚本/ジャ・ジャンクー 製作総指揮/ジャ・ジャンクー、森昌行 撮影/ユー・リクウァイ 音楽/リン・チャン
出演/チャオ・タオ、チアン・ウーダーハイワン・バオチャン、ルオ・ランシャン、チャン・ジャーイー、リー・モン、ハン・サンミン、ワン・ホンウェイ

概要とあらすじ
中国の名匠ジャ・ジャンクーが、長編劇映画としてはベネチア映画祭金獅子賞受賞作「長江哀歌」(2006)以来7年ぶりに手がけた作品で、2013年・第66回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した。急激に変化していく中国現代社会で実際に起きた事件から着想を得て、村の共同所有だった炭鉱の利益が実業家に独占されたことに怒る山西省の男、妻子には出稼ぎだと偽り強盗を繰り返す重慶の男、しつこく迫る客を切りつけてしまう湖北省の女、ナイトクラブのダンサーとの恋に苦悩する広東省の男という、時代の波に乗り遅れ、もがきながらもひたむきに生きる人々の姿を描く。(映画.comより



カンヌ脚本賞受賞?……うっそ〜ん!

オフィス北野が製作しているから、
というわけじゃないだろうけど
どこか北野映画チックな雰囲気を持ったイニャリトゥ的群像劇、
『罪の手ざわり』

第66回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した、とのこと。
え〜? マジでぇ〜? うっそ〜ん。
結構期待して観たんですけれども、
とても良くできてるなぁと
感心&感動できるような作品ではありませんでしたよ。
残念ながら。
ま、僕の目が節穴ということで一向に構いませんけれども。

村の経済を支える炭坑を経営する企業と村の役人の癒着を
告発しようとしている山西省の炭鉱夫
各地を転々としながら犯罪に手を染めている重慶の男
不倫相手の男が離婚するのを待たされている湖北省の女
ホステスに恋をする広東省の金欠少年……
という4つのエピソードは
すべて現実に起きた事件をモチーフにしているんだとか。

この、無関係な4人の人生の綾が図らずも絡み合い、
得も言われぬ人間模様を織り成していく……のかと思いきや、
たいして絡み合わないのです。
最初のふたりの男は道ですれ違うだけ。
すれ違いざまにふたつの物語がシームレスに移行すれば
面白味もありそうですが、そういうわけでもありません。
3人目の不倫女は、出所後に就職の面接を受けるのが
最初の炭坑夫がいた会社というだけだし、
4人目の金欠少年のエピソードは完全に独立しています。
これなら、いっそのことエピソードのはじまりに
「湖北省」「広東省」みたいにテロップをいれて
オムニバスにしてしまうほうが
よっぽどスッキリする
のではないでしょうか。

●山西省の炭鉱夫
中国は賄賂が当たり前の社会だなんて耳にしますが
ダーハイ(チアン・ウー)
企業と村が癒着して売上を村の財政に還元せず、
同級生の企業社長と役人が私腹を肥やしていることに憤激しています。
ダーハイは炭坑夫ということのようですが
彼が炭坑夫として働いている描写はまったくなく、
いつもあっちこっちとうろうろしているし、
なんだかトラックがひっくり返っている場所で
ひとりバイクに乗って呑気にしたりしているので
刑事かなにかだろうと思っていました。

とにかく、ダーハイは
企業と村がグルになって行なっている不正に腹を立てて、
当局に訴えようとしているのですが
ダーハイ以外の村人たちはとくに不満をもらすこともありません。
彼は完全に孤立した状態なのですが
ダーハイと彼以外の村人たちとの温度差の根拠が理解できず、
ま、村人たちは問題意識がないということなんだろうけども
村に利益が還元されないことによって起きている問題も
まったく描かれないので
こいつはなにをひとりで怒っているんだろうと思ってしまいます。

ボコられてキレたダーハイはライフル片手に復讐を開始しますが
彼がそんな凶行に及ぶほど追い詰められている感じが
まったく伝わってこないので、
殺戮を繰り返すダーハイに感情移入できないのです。

●重慶の男
ちっこいくせに、なにやらハードボイルドな雰囲気をたたえた
チョウ(ワン・バオチャン)
冒頭のシーンでいきなり3人の山賊みたいなやつらを撃ち殺します。
(ここで、ダーハイとすれちがう)
妻と子供に仕送りをするために出稼ぎしている、
ということのようですが
彼は自由気ままに行動し、銃を撃つのが快感なんでしょう。
殺し屋かなにかだと思っていたのですが
チョウがやることは、銀行から出てきた夫婦を
白昼堂々撃ち殺してバッグを奪うだけ……ただの強盗。
たったそれくらいのもののためにふたりも殺すのかよ。
まったく行動原理が理解できません。

●湖北省の女
奥さんと別れるっていったじゃない、いつまで待たせるの?
という、典型的に薄幸な愛人シャオユー(チャオ・タオ)
煮え切らない不倫相手に振り回されていると
受付嬢をやっている勤め先のソープランド的なところへ
妻が乗り込んできてボコられます。
で、実家に帰るんだけれども
(ここで、2011年に起きた中国高速鉄道列車事故のニュース映像が。
 列車を埋めちゃって大問題になったあれです)
やっぱり元の職場に戻るシャオユー。

すると、性的サービスをしない受付嬢のシャオユーに
目をつけた二人組がやってきて、性的サービスしろと。
わたし、受付嬢だからできません! て断ると、またやってくる。
だから、わたしはできませんってば! て断ると、またやってくる。

あの〜、ドアの鍵かけるとかしないのはなぜ?
挙げ句の果ては「ほら! 金はあるんだよ! 金は!」と
札束で執拗にシバかれるシャオユー……このカットが長い!

いや、わかりますよ。このカットのしつこい長さの意図は。
こんなに侮辱されてるってことでしょ。
でもさぁ、その前になんでシャオユーはじっと耐えてるの?
「そういう」店なんだから、こんな変な客はいるはずだし、
絶対に用心棒的な男がいるでしょう?
なんで、助けを呼ばないのよ。意味わかんないよ。
それがあまりにも不自然だから
しつこい札束ビンタをみても、ちっともグッとこないのです。

でまぁ、シャオユーはナイフを取りだして
しつこい客を斬りつけてしまうのですが
ここで、おまえは修羅雪姫か? ってくらいの
ナイフ捌きと決めポーズを見せ、突然ジャンル映画化する
のです。
本作全体のテイストとはまったくかけ離れた演出に
頭の中は大混乱。
あたし、大変なことしちゃった……て
オロオロと逃げるのが自然だと思うのですが
シャオユーは少しも動揺した様子をみせません。

まあ、ナイフがね、
不倫相手が空港で取り上げられそうになったナイフだとか、
重慶の男が子供に林檎の皮をむいてやっていたとか、
伏線つーか、因縁みたいなもんはあるけれど
だからどうした程度のものでしょう。

●広東省の少年
縫製工場に勤めていたシャオホイ(ルオ・ランシャン)
無駄口たたいて同僚に怪我をさせてしまいます。
見るからに危なそうな機械だったのでさもありなんて感じですが、
怪我をした同僚が休んでいる間は無駄働きだと言われ、退職。
旧友に紹介された、豪華なイメクラみたいな風俗店
働くことになります。
シャオホイは、その店のホステス・リェンロン(リー・モン)
恋心を抱いてしまうようになるのですが、
このリェンロンはシャオホイが列車のなかで見かけていた女の子なのに、
あれ? もしかしてあのときの? みたいなくだりが一切ないのは
どうしたことか。
しかも、このリェンロン。
店で働いているときは色気むんむんのすれっからしで
ふざけてシャオホイのちんこ触ってくるような女の子なのに
プライベートでは、芦田愛菜が成長したような顔立ち
おっとりしちゃって、まったく同一人物に見えません。

とにかく、勝手に失恋したシャオホイは紹介してもらった店をやめますが、
金をせびる母親からの電話で
シャオホイが金欠だったことが急遽判明

一瞬でも、シャオホイが預金通帳を眺めてため息つくようなカットがあれば
ああ、キツいんだなと思えるんですけど
どうみてもただの脳天気な若者にしか見えないので、びっくりです。
ことごとく現実逃避を繰り返したあげくに、
シャオホイは飛び降り自殺します。
これがまた、中途半端な高さで……

まあ、激変する中国で起きた事件をモチーフに
欺瞞、隷属、貧困などなど、
限界ギリギリまで蓄積している鬱憤を描こうとしたのかもしれませんが
どのエピソードも
心に染みるようなものだったとはとてもいえません。

暴力描写は常に唐突かつ過剰だったりして
それはいいのですが、
それがいつも同じ熱量で繰り返されるので
非常にテンポが悪いと感じました。
(炭坑夫がライフルで次々と殺人を犯すときは
 毎回同じようにタメて、同じように唐突に殺すし、
 不倫女を浮気相手の妻が襲撃したときは
 無意味に派手にふっとばされた不倫女が車に激突し、
 車の警報音が鳴り始めるんだけど、
 いまいちその警報音が不倫女の置かれた危機的状況を表現するのに
 役立っていない……とか)

編集のタイミングに変な間があったりしても
それが面白いと思えればそれでいいのですが
なんなのこの間は、なんなのこの激しさは、てな感じで
すべてがチグハグに感じられました。





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