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ゼロの未来

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(原題:The Zero Theorem 2013年/イギリス・ルーマニア・フランス・アメリカ合作 107分)
監督/テリー・ギリアム 製作/ニコラス・シャルティエ、ディーン・ザナック 製作総指揮パトリック・ニュウォール 脚本/パット・ルーシン 撮影/ニコラ・ペコリーニ 美術/デビッド・ウォーレン 衣装/カルロ・ポッジョーリ 編集/ミック・オーズリー 音楽/ジョージ・フェントン
出演/クリストフ・ヴァルツ、デビッド・シューリス、メラニー・ティエリー、ルーカス・ヘッジズ、マット・デイモン、ティルダ・スウィントン、ベン・ウィショー

概要とあらすじ
「未来世紀ブラジル」「12モンキーズ」の鬼才テリー・ギリアム監督が、「イングロリアス・バスターズ」「ジャンゴ 繋がれざる者」のクリストフ・ワルツを主演に描いたSFドラマ。コンピューターに支配された近未来を舞台に、謎めいた数式を解くため教会にこもって生きる孤独な天才技師の人生が、ある女性との出会いから変化していく様を描いた。世間になじめない天才コンピューター技師のコーエンは、「ゼロの定理」という謎めいた数式を解くことを義務付けられ、ひとり教会にこもって定理の解明を続ける。ある日、パーティに連れていたれたコーエンは、そこで魅力的な女性ベインスリーと出会う。自分と同じく天才と呼ばれるボブとの交流やベインスリーとの恋を通じて、コーエンは生きる意味を知っていくが……。(映画.comより



なにが人間を律し、管理するのか。

テリー・ギリアムの新作だというのに
思いのほか公開規模が小さい『ゼロの未来』を観るために
今年3月に再オープンした恵比寿ガーデンシネマ
初めて行って参りました。
場所が場所だけに、小洒落ててイケ好かないBunkamuraみたいだったら
でっかいウンコして流さずに返ってやろうと思っていましたが
たしかに小洒落てはいるものの、座席の間隔は広くてゆったり、
アルコールは飲めるわ、観やすいわで
とてもいい映画館でした。
だから、ウンコはしませんでした。

冒頭から、スキンヘッドでだらしない中年ボディを披露する
天才プログラマー・コーエン(クリストフ・ヴァルツ)
彼が勤務先の会社マンコムへとしぶしぶ出勤するまでの街の光景で
テリー・ギリアム的世界観が炸裂します。
テリー・ギリアムが初来日したときに
秋葉原の町並みを観てカルチャーショックを受けたというように
大量の電光掲示板が踊り、コスプレをした人々が行き交います。
あまりの情報量の多さに目眩が。
さらに、そのようなアキバ的なモチーフが
ヨーロッパの古い建物に組み込まれているレトロ・フューチャーな美術
テリーのギリアムらしさでしょう。

コーエンが働く会社マンコムもまるでゲームセンター
自転車のペダルを漕ぐような動きをしながら
まったく使い方がわからないコントローラーで
さっぱり意味がわからないプログラミングをしています。
小窓から試験管のようなものが出てきて、なんだよあれはと思っていたら
どうやらあの試験管がソフトウェア(プログラム)のよう。
意味があろうがなかろうが、こういうデザインが楽しいのです。

実存的な悩みを抱えるコーエンは
他者との接触を拒み、自宅に引きこもって
「人生の意味」を教えてくれる一本の電話を待っています。
でも、そんな電話がかかってくるはずはありません。
「人生の意味」なんてものは自分で作り出すものですが
自分を「We=我々」と称するコーエンは
自分の存在を相対化し、自己と向き合う責任から
逃避しているのです。
何重にも施錠した自宅にこもって常にモニターに向かい、
宅配ピザやチンするだけの食事しかしないコーエンの姿は
まさに「ひきこもり」そのもの。

マンコムのマネージメント(マット・デイモン)から
「ゼロの定理」を解明するよう指示されたコーエンは
ストレスを爆発させます。
マネージメントからあてがわれたセラピストに扮する
ティルダ・スウィントンは、またしても顔芸を披露。
『スノー・ピアサー』『ブランド・ブタペスト・ホテル』
ティルダ……最近、まともな顔で登場しないんですけど。

パーティで知り合ったベインズリー(メラニー・ティエリー)
なにかとコーエンの世話を焼くようになり、
コーエンは少しずつ変化を見せ始めます。
(ペインズリーもまたマネージメントによって派遣されたのだが)
このペインズリーに扮するメラニー・ティエリーが
可愛いったらありゃしない!

セクシーなコスプレも最高だけど
天真爛漫な表情がなんともいえず魅力的です。
しょうがないわね!的に、キッチンのゴミを片付け、
食器を洗おうとする彼女はまさに押しかけ女房。
コーエンが恋に落ちるのも当然のこと。

スパイダーマンのパチもんみたいなボディ・スーツを着込んで
ペインズリーとヴァーチャルデートを楽しむコーエンが
好きなものをイメージしてみてといわれ、思い描いたのが
ペインズリーとふたりでブラック・ホールに吸い込まれていく映像って
おまえ、どんなけネガティブなのさ。

超天才プログラマーで、
マネージメントの息子ボブ(ルーカス・ヘッジズ)
コーエンの手助けをするようになりますが
頭脳明晰で大人びた態度をみせる15歳のボブは
思春期特有の初々しさ&弱々しさも垣間見せ、
徐々にコーエンと心で繫がるようになっていくのです。
ふたりが久しぶりに外出した公園の
大量の禁止マークでつくられたオブジェが皮肉で最高。
(オブジェ自体も×のかたち)

すべてはマネージメントによって管理された社会の
tool=道具でしかないという設定は
(ここにトンカチがかかってくる)
どうしたって『未来世紀ブラジル』を思い出さずにいられませんが
本作はもっと抽象的かつ観念的で宗教的
コーエンが引き込もるのは廃墟となった教会だし、
ご丁寧に白い鳩まで飛んできます。
コーエンがスキンヘッドなのは僧侶のイメージか?
冒頭のアキバ的雑踏のなかで
「仏教にもサイエントロジーにも飽きた方は、こちらの……」という
キャッチコピーが聞こえてきましたが
テリー・ギリアム監督が
「既存の宗教はもう終わっている(映画秘宝2015年6月号)」と語る
現実を象徴するのがコーエンが暮らす廃墟の教会なのでしょう。

頭がないキリスト像の頭部に据えられた監視カメラ
マネージメントの視線ですが、それはすなわち神の視線でしょう。
ところが、「ゼロ」=「虚無」を解明しようとする先に
神は存在しないはず。

だとすれば、現在〜未来の世界では
一体なにが人間を律し、管理するのか。
経済? 情報? テクノロジー?
……どーなんでしょーねぇ! 

いつしか自分のことを「We」ではなく、
「 I 」というようになったコーエン。
自分を律して管理するのは、やはり自分であるべきなのです。





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