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冬の光

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(原題:Nattvardsgasterna 1962年/スウェーデン 86分)
監督・脚本/イングマール・ベルイマン 撮影/スベン・ニクビスト 美術/P・A・ルンドグレン 音楽/J・S・バッハ
出演/グンナール・ビョルンストランド、マックス・フォン・シドー、イングリッド・チューリン、グンネル・リンドブロム、アラン・エドワール

概要とあらすじ
名だたる映画人から敬愛されるスウェーデンの巨匠イングマール・ベルイマンが、1963年に発表した作品。61年の「鏡の中にある如く」、62年の「沈黙」にとあわせ、「神の不在」をテーマに描いた3部作の1作とされる。スウェーデンの漁村で牧師をしているトマスは、最愛の妻に先立たれてから失意の底にいた。新しい恋人のマルタとの関係もうまくいかずに疲れ果て、牧師としての自信も失っている。そんなある日、深い悩みを抱えた夫を助けてほしいという信者の女性の相談を受けるが、ありきたりな言葉しかかけてやることができない。やがて女性の夫は自殺してしまい……。「ベルイマンの黄金期 ’50-‘60年代 6本の傑作」(2014年7月26日~8月8日)にてデジタルマスター版で上映。(映画.comより



神様はなにもしちゃくれない

イングマール・ベルイマン監督
「神の不在」をテーマに描いた3部作の1作とされているという、
『冬の光』
3部作のうちの『鏡の中にある如』『沈黙』
観ていないのでなんともいえませんが、
いまのところ僕が観ているベルイマン作品を観ていても
「神の不在」は一貫したテーマのように思えます。
なかでもこの『冬の光』は
とてもストレートにそれを表現しています。
ちなみに本作の字幕では「神の沈黙」と訳されていました。

どうやらベルイマン監督の父親が牧師で
監督は父親の厳格さに不満を持っていたそうで、
父親に対する不信がそのまま信仰に対する不信へと
繋がっていると思われます。

ましてや、
本作の主人公トマス(グンナール・ビョルンストランド)
最初っから信仰心が揺らいでいる牧師です。
トマスが風邪をひいているのは
彼が精神的にも肉体的にも万全ではなく、
衰弱していることの現れではないでしょうか。
ミサに集まった村人たちはまばらで
オルガン弾きは時間を気にしていたり、
あからさまにこの宗教的儀式が形骸化していることがわかります。
イエス・キリストの肉体だとされるパンと
イエス・キリストの血だとされるワインを口にしても
誰一人として特別有り難がるわけではなく、
そういうテイで儀式の演者として振る舞っているだけなのです。

トマスが牧師でありながら神に不信感を抱くようになったのは
妻の死をきっかけにしているようで
トマスは「神に見捨てられた」と感じて葛藤しつつも、
牧師という職業をこなしている自分に対しても欺瞞を感じ、
良心に苛まれているようにみえます。
そんなトマスに
女教師マルタ(イングリッド・チューリン)
無償の愛を捧げようとしますが
トマスは彼女のことを、ひと言で言うと「うざい」
あくまで拒否します。
身体に湿疹ができて苦しむマルタに祈ってくれと頼まれても
気持ち悪がって祈らないトマスは
うじうじ悩んでいるわりにはマルタにだけは高圧的で
牧師としてとか、信仰心がとか、いう以前に
人格的にどうかと思うような、ダメンズなのです。
マルタがトマスに宛てた長い手紙を
カメラ目線で独白するシーン
ソリッドな演出が今観ても新鮮です。

自分自身が信仰に対してふらついているトマスのもとに
生きることに絶望しているヨナス(マックス・フォン・シドー)
妻の薦めによって相談に現れます。
ヨナスは、中国が原爆を持っているというニュースに
抽象的な不安感を憶え、
生きることの意味を見失っています。
ヨナスの妻は4人目の子供を身籠もっている状態だし、
遠く離れた国の原爆を恐れるよりも
自分の家族を養い、守ることに
生きる意義を見出せないものかと思いますが
(個人的にはそれが一番立派な生き方だと思いますが)
ヨナスは、人生に白けてしまったようにみえます。

相談を受けたトマスがヨナスにいったこととは
「神を信じて、祈りなさい」なのです。
まったく無反応のヨナスを見て、
自分の心を見透かされたようにうつむくトマス。
「祈りなさい」など、気休めにもなりません。
祈りがなんの役にも立たないことを
トマスは自覚している
のです。
教会からの帰り道で、ヨナスは自殺してしまいます。

ヨナスを諭すはずだったトマスは
むしろ自分の神への不信を吐露してしまいます。
すると、窓の外から強い光が差し込みます。
やっと自分の本当の想いを吐き出したトマスは
すっきりしたはずですが
あの光を神がもたらしたものだとするなら
神は相当にいじわるです。

もう誰も教会に集まってくるものがいなくなったラストシーンで、
それでもトマスはミサを行おうとします。
トマスは形骸化した信仰の場で
牧師という職業を真っ当することしかできないのです。

86分と、短い上映時間だからこそ
濃厚なテーマがギュッと詰まった作品です。





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