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狩人

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(原題:I KYNIGHI 1977年/ギリシャ・ドイツ・フランス合作 172分)
監督・脚本/テオ・アンゲロプロス 撮影/ヨルゴス・アルバニティス
出演/ストラティス・パヒス、エバ・コタマニドゥ、バンゲリス・カザン、ベティ・バラッシ

概要とあらすじ
76年、雪山で狩人たちが死体を見つけた。まだ温かく、血がしたたっているその死体は、30年前の内戦兵士だった……。「旅芸人の記録」の1シーン・1カットの手法をアンゲロプロス監督がさらに推し進め、繰り返す愚かな歴史の姿を全編わずか47カットで描いた“現代史3部作”の第3作。完成当時はまだ「旅芸人の記録」1本しか紹介されていなかった日本では、あまりの斬新さに公開までに10年以上を要した作品。(映画.comより)



今日も曇りだった… 人々は棒立ちだった…

日本公開が1992年ということだから、もう20年前、
行きたかったのに見逃したままにしていて
当時のチラシだけは大事にとってある『狩人』
早稲田松竹でやっと観てきました。
一体、おれは20年間もなにをやっていたんだ!
(いろいろやってたよ、そりゃ)

DVDだって出てるんだから、観ようと思えばいつでも観られたんですが
いつでも観られると思うといつまでも観ないのが
人間の性というもんでしょ? サーガね。
でも、やっぱり映画館で観てよかった!

というのも、約3時間という長尺なうえ、
「子供が寝付かないで困るときはアンゲロプロスを見せろ」という
冗談があるくらいのアンゲロプロス作品なので
もし自宅でDVDを観ていたら、一時停止して
トイレに行ったり、お茶入れたり、
場合によっちゃ途中で止めて残りは今度…なんて
やってたかも知れません。
映画館というのは、わざわざ出かけていって閉じ込められて
画面への集中を強要されるわけですが
その不自由さがあるからこそ
作品の世界にどっぷりと漬かれるんですね。

さて。
真っ白い雪原を歩く銃を持った7人の男達が死体を発見します。
その死体は軍服を着た30年前の内線兵士で、
しかもその死体が流す血はまだ温かい…これは一体どういうことだ?

この映画、ギリシャという国がたどってきた歴史を知らないと
まったく訳がわかりません。
(ま、歴史を知っていたからと言ってわかりやすい映画じゃないけど)
当然、無学な僕は知る由もないのでググった結果をざっくりと説明すると

 ギリシャ内戦
 1942年から1949年の間にかけてギリシャにおいて争われた内戦。
 一方の当事者は中道右派政府と右派民兵で、
 イギリスおよびアメリカの支援を受けていた。
 もう一方はナチス・ドイツ占領下のギリシャにおける
 最大のレジスタンス組織であった共産主義ゲリラELASで
 ギリシャ共産党(KKE)の指導下にあった。(Wikipediaより)

 ギリシャ軍事政権
 1967年から1974年まで存在したギリシャにおける軍事独裁政権のことである。
 1967年4月21日、ギリシャ軍の将校が蜂起して政権を掌握した時に始まり、
 1974年7月24日、亡命していたコンスタンディノス・カラマンリスが帰国して
 新政権を樹立した時に終焉を迎えた。(Wikipediaより)

ということです。わかりましたね?(わかるか!)

要するに、内戦に端を発してギリシャは激動の時代を歩むことになったのです。
雪の中で発見した30年前(1947年頃)の内戦兵士の死体とは
ギリシャが抱えるこの激動の時代の象徴なのです。
男達は死体を発見したとき、驚きを示すと言うより、ウンザリしています。
いつのまにか忘れたことにしてしまっていた記憶が蘇ったのです。
だからこそ、死体の血はさっきまで生きていたかのように温かいのです。

ホテルに死体を運んだ後、死体発見者達の取り調べが始まりますが
取り調べは設定だけで、ここから一人ずつが
ギリシャの歴史と呼応した自分の過去を語り始めるのです。

1シーン1カットの長回しはアンゲロプロスの特徴ですが
この作品では全編でなんとたったの47カット!
(一般的な映画は1000カットくらいといわれています)
長回しを売りにする映画でも
登場人物たちがたらたらと日常会話をくり返すだけの
「自然な(!)」演出のものがありますが
アンゲロプロスの長回しは構図、タイミング、すべてが計算され尽くした
一枚の絵画を観ているようです。

時には360°、ゆっくりとパンするカメラの中にさまざまなモチーフが
フレーム・イン、フレーム・アウトしていく。
さらに、1カットの同じシーンの中で
現在から過去、過去から現在へと時間までも飛び越えていくのです。
目にしているものの論理的整合性だけを頼りに画面を見つめていても
あっというまに取り残されてしまいます。
観客は詩的跳躍とイマジネーションの波に身を任せるだけではなく
自ら想像力のオールを漕いで作品世界を航海しなければならないのです。

ぞっとするほどの画面の完成度の高さ。
中には20分にも及ぶシーンがあるというのに、なんと同時録音!
白鳥まで演技指導してるんじゃないかと思えるほどの完璧さです。

横一列に並んだ7〜8人の男達が道路を歩きながらフレーム・インし、
ミュージカルのようにくるっと一回転する。
そして、大通りに出て道幅いっぱいに並んて立つ男達だが、
左の途中だけが並んだ男達の距離が広く開いている。
その開いたところの向こう側が三叉路の通りとぴったりと重なって
その通りをデモ隊が少しずつ近づいてくる……
と、これを読んでもイメージがわかないでしょうが(笑)
腰を抜かすような素晴らしいシーンでした。

年越しパーティーで盛り上がる中、
死体発見者の妻のひとりが突然「陛下がいらした!」といって席を立ち、
その亡霊(?)とダンスを踊り始め、
ついには床に倒れてあえぎ悶えるエアセックス!!
このシーンがまた長い!
そしてホールでエアセックスを黙ってみつめていたパーティー客達の拍手喝采。
……説明、無理!(笑)
しかし、この床に寝た女の体の角度、画面のトリミング、
床のカーペットの柄までも、
アアア、カッコイイイイ! なんです。

最後に、内戦兵士の死体は元の場所へ戻され、埋められます。
果たして、登場人物たち(ギリシャ国民? または人間であるわれわれ全員?)は
性懲りもなく、まがまがしい過去を土に埋めることで忘れようとするのでしょうか。
そしてまたいつの日か、土に埋めたはずの過去が
温かい血を流しながら蘇り、われわれの頭を悩ますのでしょうか。

残念なことに、テオ・アンゲロプロス監督は
2012年1月24日、アテネ郊外のトンネルでオートバイにはねられて頭を強打し、
運ばれた先の病院で亡くなりました。享年76歳。
新作の撮影中だったそうですがねぇ…ホントに残念です。
ご冥福をお祈りいたします。





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