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白河夜船

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(2015年/日本 91分)
監督/若木信吾 原作/よしもとばなな 脚本/若木信吾、鈴本櫂 製作/重村博文、畠中鈴子 撮影/若木信吾 照明/山本浩資 美術/古積弘二 装飾/鈴村高正 録音/山本タカアキ 衣装/宮本まさ江 編集/菊井貴繁
出演/安藤サクラ、井浦新、谷村美月、高橋義明、紅甘、伊沢麿紀、竹厚綾

概要とあらすじ
よしもとばななの小説「白河夜船」を映画化し、深い眠りに落ちていくヒロインの姿を通して、生きて愛することの切なさや喜びを描いた。安藤サクラが主演を務め、「かぞくのくに」で安藤と兄妹役を演じた井浦新が恋人役で再共演。俳優や女優の写真を多数手がけるフォトグラファーで、2007年に「星空ワルツ」で映画監督デビューも果たした若木信吾がメガホンをとった。植物状態の妻を持つ恋人・岩永と不倫関係を続ける寺子。ある日、男たちに添い寝をしてあげる「添い寝屋」をしていた親友のしおりが死亡する。親友の死に深く落ち込み、不毛な不倫関係による不安とさびしさにも襲われる寺子は、日々、深い眠りに落ちていく。(映画.comより



映画自体が「白河夜船」?

安藤サクラ井浦新が主演とくれば
小ぶりな日本映画に、ある一定のクオリティーを期待させるだけの
効果があるのは間違いないでしょう。
井浦新は演技がうまいのかそうじゃないのか、
判断がつきづらいところもありますが
このところ一連の主演作で存在感を見せつける安藤サクラは
映画を作る側にとっても観る側にとっても
頼りがいのある保険になっているような気がします。
(意地の悪い言い方じゃこと)

不倫相手の岩永(井浦新)からの連絡を待つ間、
ただひたすら眠っている寺子を演じるのが、安藤サクラ。
起きているときは寝起きか、もしくは眠そうにしている寺子には
安藤サクラの腫れぼったくていつも眠そうな顔がぴったり。
(僕は大好きなんですけど。念のため)
まるで当て書きのようです。
かったるそうな、いわゆる「自然体」の演技も
安藤サクラの存在感に負うところが多く、
彼女なくしてはもはや成立すらしない作品ではないでしょうか。

不倫相手の岩永の妻は、事故によって植物状態になり、
寺子の親友しおり(谷村美月)「添い寝屋」をやっていて
本作に登場する女性たちはみんな眠っています。
「添い寝屋」は、
川端康成『眠れる美女』『スリーピング・ビューティー』
みたいなもんでしょうか。
添い寝をしているとき、相手の寝息に自分の呼吸を合わせると
相手の考えや悩みがわかるというしおりは
自殺してしまいます。
他人の悩みを受け止めすぎたということでしょうか。
とにかく、しおりの自殺が寺子の心に陰を落として
寺子は自信の存在意義に疑問を持ち、
岩永の妻のことを気にするようになります。

植物状態の妻のことを「いい人だった」と過去形で語る岩永
あくまでスマートに立ち振る舞う紳士ではありますが
寺子に疲労と心の傷を癒して欲しいという身勝手さも兼ね備えています。
まあ、男というのは往々にしてこのように身勝手なわけですが
植物状態の妻と離婚するわけにもいかないので
同情の余地はあります。(あるはず……)
寺子との付き合いに嫉妬も反論もできない妻に対する
後ろめたさは感じているようですが
このようなどっちつかずで宙ぶらりんな状態が
岩永にとってむしろ都合がいいのも事実でしょう。

気になったのは、仕事終わりに寺子とデートする岩永が
いつも手ぶら&ラフな服装だったのは意図した演出なんでしょうか。
岩永の職種がわからないのでなんともいえませんが
スーツ姿で現れて寺子と別世界の住人だということを
表現することがあってもよかったのではないでしょうかね。

寺子がつねに睡魔に襲われて眠ってしまうのは
あきらかに逃避行動でしょう。
しおりの死を契機に自分の生き方に疑問を感じ、
岩永の愛情にも懐疑的になりはするものの、
かといって問題解決に向けて行動するでもなく、
逃げるように眠りに落ちて岩永からの「指示」を待っているのです。

どんなに眠っていても
岩永からの電話がかかってきたときだけは眼を覚ましていた寺子
いつしか岩永からの電話でも目が覚めなくなります。
これはもう、生きることからの逃避です。
(いや、生きるために睡眠は必要不可欠なんだけれど
 ずっと眠っている=植物状態になるということは
 岩永が妻のことを過去形で語るように
 死んでいることと同義なのですな。)

そして、まさに「白河夜船」状態の寺子は
公園で若き日の岩永の妻に声をかけられ、
「すぐに駅前に行って求人雑誌を買いなさい。バイトしなさい」
「わたしのことで、わたしのようになってほしくないの」
(←大意)
といわれるがままにバイトを始め、
もらったばかりの給料を眺めて元気を取り戻したようにみえます。

吉本ばななの原作ではどうなっているのか知りませんが
これじゃあ、あまりにも陳腐で自己啓発的ではありませんか?
まさか、自立を促す物語じゃないよね?
このあと、寺子が岩永との別れを決意するのなら
まだわからないでもないのですが
アラサーと思しき寺子が、たかが3万円ちょっとのバイト代で
浮かれているのも鼻白みます。
いやそれよりもなによりも、
岩永の植物状態の妻を
わたしのことは気にしないでとばかりに、
夢の中で自分を気遣う存在として登場させる寺子は
やっぱりかなり身勝手ではないでしょうか。

写真家でもある若木信吾監督
「一眼レフデジタルカメラ「ライカM」1台と
 35ミリのレンズほぼ1本で撮影するという制限」

自らに課していたそうですが
寺子の部屋に差し込む外光や白いシーツなどなど、
被写体深度が浅めの映像は美しいようで薄っぺらく、
まるでインテリアのイメージ映像のようでもあります。

岩永と寺子のふたりが砂浜で戯れているシーンは
もっとも絵画的な美しさを感じられるはずが
世界にふたりしか存在しないような広がりを感じるほどでもなく、
ドタバタと慌てて被写体に駆け寄るようなカメラワーク
うっとりとすることはありません。
あと、渋谷のスクランブル交差点はもう使うのやめようよ。
手垢つきすぎでしょ。

ま、なにしろ夢のような物語ですからねぇ、
夢みたいでしょ? っていわれればなんでもありになっちゃいますが
まるで作品自体も「雰囲気」という夢の中に
逃避しているよう
に感じました。
(そんなに悪くないけどね、ピリッとしないのね)

はっ! この映画自体が「白河夜船」なのか??





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