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龍三と七人の子分たち

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(2015年/日本 111分)
監督・脚本/北野武 プロデューサー/森昌行、吉田多喜男 撮影/柳島克己 照明/高屋齋 美術/磯田典宏 録音/久連石由文 編集/北野武、太田義則 音楽/鈴木慶一 衣装/黒澤和子
出演/藤竜也、近藤正臣、中尾彬、品川徹、樋浦勉、伊藤幸純、吉澤健、小野寺昭、安田顕、矢島健一、下條アトム、勝村政信、萬田久子、ビートたけし

概要とあらすじ
北野武監督が、引退したヤクザの元組長とその子分たちの活躍をコメディタッチで描いた作品。北野組初参加となる藤竜也を主演に、近藤正臣、中尾彬、小野寺昭ら平均年齢72歳のベテラン俳優陣が主要キャストとして顔をそろえた。金も居場所もなくなり、毎日くすぶった生活を送っていた元ヤクザの元組長、龍三。ある日オレオレ詐欺にひっかかってしまった龍三は、詐欺で人々を騙す若者たちを成敗しようと、昔の仲間を呼び寄せて世直しに立ち上がる。(映画.comより



アキラいじめ、ここに極まれり!

北野武の新作が公開されたといわれれば
兎にも角にも観に行くキタノファンですが
『龍三と七人の子分たち』がコメディだと聞いたときには
正直に言って、一抹の不安がありました。

それは、ビートたけしではなく北野武の笑いが
『みんな〜やってるか!(1995)』
『監督・ばんざい!(2007)』のように
素直に笑えないものばかりだからです。
もちろん、どちらも好きなんだけど
爆笑というより、失笑を誘う北野武の笑いに
どこか居心地の悪さを感じていたのです。

で、本作はどうだっかというと……もう、最高でした!
北野武監督は「ベタな笑いに徹した」なんていっていますが
ベタだったら笑えるってもんでもないでしょう?
本作ではボケとツッコミというお笑いのテンポを
編集で表現した
ように思えるのです。

それはオープニングの
玄関先で木刀を素振りする龍三(藤竜也)
出かけようとする息子・龍平(勝村政信)家族とのやりとりを
無機質な切り返しでみせるシーンに
現れているのではないでしょうか。
(ああもう、たけしはかつての「北野映画」のような撮り方を
 しないんだなぁ…と、すでに確立された自分の作風から
 あえて逸脱するアンチな姿勢にあっぱれと思う反面、
 ちょっぴりさみしい気持ちも)
後半で、早撃ちのマック(品川徹)
「おひかえなすって」と仁義を切るシーンではさらに顕著です。
これ、カットで割らずに
ボケとツッコミのふたりが収まる画角で撮ったとしたら
どうなるんだろうと想像してみますが
その場合、俳優たちに演技だけでなく、
漫才師のような笑いの呼吸まで要求することになり、
するってえとあれだね、
間が早いだの遅いだのって話になって、難しいやね。
てことは、この編集の間こそが
たけしが考える漫才の間
なのではないでしょうか。

それはともかく、
いかにもたけしらしい小ネタ&風刺ネタが連発。
「あれだよ? 上野の西郷さんがさ、
 ぼうずか、ちょんまげかで揉めたことがあってさ。
 たしか、ちょんまげだったよなぁって思ってたんだけど
 頭の上に鳩が止まってちょんまげに見えてただけなんだよ!
 鳩飛んでったらぼうずになってやんの(高田文夫爆笑)」
「あとさ、ヤクザの親分がさ、
 5-5の大穴馬券を買えって子分に合図したらよ、
 指2本詰めてっから、そいつ間違えて5-3買ってきてやんの!
 どうしようもねえよ、まったく(高田文夫爆笑)」
っていうたけしの声が聞こえてきそうです。

居酒屋に集まったかつての仲間たちが組を起ち上げることになり、
組長を誰にするか、前科や服役年数をポイント制で決めるシーン
じじいたちの輪の中央に位置するカメラが
ぐるぐる回りながら追っていくのが面白かったのですが
このシーンで一番面白かったのは
仲間の輪からひとりはずれている早撃ちのマックの右手が
プルプルと震えている
ことでした。
いや、ポイントの計算役を任される居酒屋店長(芦川誠)か。
(たしか芦川誠さんは、北野映画に出るかたわら、
 本当に居酒屋でバイトしていたことがあるはず)

とまあ、いかにもたけしらしい笑いが
テンポよく続いていくのですが、大爆笑とまではいかない流れ。
萬田久子なんて、藤竜也を女装させるためだけに登場しているし、
いかんせんひとつひとつのネタが断片的で
このエピソード、いるか?と思うようなシーンもあり、
中だるみギリギリだったのですが、
はばかりのモキチ(中尾彬)の孫のキャバ嬢が
危険にさらされることになってから
映画はアクセル全開で加速します。

本作で唯一シリアスモードになるシーンなので
モキチが撲殺される〜死体が発見されるというくだりを
もう少し深刻&残酷にみせて欲しかったとは思いますが
龍三と子分たちがモキチの仇討ちに殴り込むと決めてから
怒濤の爆笑シーンが連続します。

鼻の穴に綿を詰めたモキチの死体を車イスに乗せて
敵対する京浜連合のビルへと乗り込むじじいたちは
モキチの死体を盾にして戦うのです。
(いつのまにモキチのお面を作ったんだよとか、あるけどスルー)
モキチの後頭部に銃を撃ち込む、早撃ちのマック!
モキチの後頭部に五寸釘をを撃ち込む、五寸釘のヒデ(伊藤幸純)!
金属バットでモキチの死体をボコボコにする京浜連合!

非道い! 非道すぎる! 大爆笑!!

『アキレスと亀』のときは妾と首吊るし、
『アウトレイジ・ビヨンド』のときはあっさり殺されちゃうし、
北野武の中尾彬の扱いはことごとく非道いのですが
とうとう死体にされたうえにボコボコにされるのです。
中尾彬に対する信頼の証しといえばそうなんでしょうが、
いやはや、これ以上のことはもうないでしょう。
このシーンだけ、何度でも観たいわ。

その後の、路線バスをジャックしてのカーチェイス
予算が潤沢ではないのはわかるものの、
日本映画では、なかなかお目にかかれない迫力が十分にあります。

初期北野映画ファンからすると
『アウトレイジ』以降、随分饒舌になったなと思いますが
それでも随所に初期北野映画らしい、
そっけない背景やカメラアングルもありました。
名前はわからないけど、予告編にも登場する
「じじいが俺らにケンカ売んのか?」という小柄な若者
人をナメきった表情も大好きです。
もう、映画館からの帰り道は
思い出し笑いでニヤニヤしっぱなし。
いまもニヤニヤしています。

撮影当時、龍三たちじじいが
「平均年齢72歳!」というのが惹句になっていますが
72歳でこれだけ動ける俳優陣は素晴らしいですよ。
自分もこうありたいなと、素直に思いました。
遅かれ早かれどうせ死ぬんだから、くよくよしてたって仕方ないやね。
とりあえず、動ける身体でいたいものです。

ラストの「とっくにみんな死んでるよ!」ってのは
「俺たち、まだ始まっちゃいねえよ(『キッズ・リターン』)」の
セルフパロディかな?
ビートたけしと北野武が
見事にオーバーラップした作品でした。







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